制作・出演 : アンドレーア・マルコン
全身全霊を注ぎ込んでの熱唱、されど決してヒステリックな響きになることはなくつねにチャームが漂う。“作品が語るものがすべて”とする歌唱は器楽的なフレキシブルさとダイナミズムにあふれる。イタリアの音楽家たちとの音のやり取りを心から楽しんでいるさまが迸るディスクだ。バロック!★
バロック・ヴァイオリニストとして頭角を現してきたイタリアの名手カルミニョーラの、ソニー・クラシカル移籍第一弾となったアルバムは、彼とアンドレーア・マルコン率いるヴェニス・バロック・オーケストラがもっとも得意とするヴィヴァルディ、そしてその中でももっとも有名な「四季」が選ばれたというところに、このコンビの自信のほどが伺えます。新しいエディションを使ったこの録音でのカルミニョーラの音楽は、まさにヴィヴァルディ演奏の新時代が到来したことを告げています。カップリングには、ヴィヴァルティと同じころ、18世紀初頭にイタリアで活躍したヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニスト、ロカテッリによるその名も「ヴァイオリンの技法」からの2つのヴァイオリン協奏曲を収録。妙技と抒情が交錯する得も言われぬ世界が展開されるこの曲の真髄を知るには、まさしく知情意を兼ね備えたカルミニョーラのようなヴァイオリニストの演奏こそふさわしいといえます。
汲めども尽きせぬ音楽の泉、ヴィヴァルディのコンチェルト。トリノの源泉(図書館)から今回マルコンたちが汲み上げた、ムローヴァ・フレーヴァーの“2台”集。ヴィヴァルディがソロのふたりを活性化させたかのように、生気漲る演奏が繰り広げられる。
ラトルとのモーツァルトでは少々良い子ぶりが過ぎたかな、コジェナー。今度は頚木をとかれたように全開の歌唱。マルコン率いるイタリア勢の積極的な伴奏を得て、レパートリーの同質性とアーティスティックな円熟がひとつのピークを築いた快演だ。★