著者 : ペニー・ジョーダン
ジェニスがこの世でいちばん会いたくない男性、ルーク・ラスビー。8年前、外科医のルークはジェニスと婚約していながら、突然一方的に婚約を解消してほかの女性と結婚してしまったのだ。いま故郷に戻り、親友の結婚式に出席したジェニスは、目を疑うような光景に出合い、胸がつぶれそうになったー昔と変わらぬ、黒髪に深い緑色の美しい瞳をしたルーク。あのとき結婚した妻を失い、かわいらしい幼い娘を連れている…。ルークと別れて8年も経つのにジェニスにいまだ恋人がいないのは、じつは、いまもまだ彼を忘れられないから。愛しているから。その事実がつらくて、その場を逃げようとするジェニスだったが…。
教師のジェマは校長に退職を迫られ、落ち込んでいた。財政難ゆえのリストラで、実家が裕福な彼女に白羽の矢が立ったのだ。教師の仕事はジェマにとって生きがいだったし、古い価値観の両親とは折り合いが悪く、実家に頼りたくなかった。そんななか兄の結婚式で帰郷したジェマは、思わぬ人物と再会する。ルーク・オウローク。十代半ばで出逢い、心の友となった年上の男性。若気の至りで「キスのしかたを教えて」と彼にお願いし、些細なことから口論になって、疎遠になってしまったけれど…。あれから10年。美しく成長したジェマと、冷酷無比な大物実業家ルーク。痛いほど胸を高鳴らせるジェマに、ルークから思わぬ申し出がーこれから2カ月間、僕のアシスタントとして働かないか、と。
ルー・リヴシィ、25歳。花やハーブを育てながら、自分で修繕した古いコテージで、愛犬と穏やかに暮らしている。たとえ隠居した老婦人のような生活と思われてもかまわない。5年前、若すぎた結婚に大失敗して借金を背負わされたせいで、亡き父が遺した屋敷を手放さなければならなかったのだ。以来、ルーはもう決して男性に心を開くまいと決めていた。彼らが女性に言い寄る裏には、いつも何か別の理由があるのよ。隣に越してきたばかりの大富豪ニール・サクストンも同じ。「家政婦用に、きみのコテージが欲しい」いきなり強引に迫ってきて、ほかにも欲しいものがあるかのような目で、ルーをじっと見つめたのだ!
父が急逝し、ルーシーは長年住み慣れた領主館を離れようとしていた。館を維持する財力はなく、継母と弟妹の面倒も見なければならない。領主館は、アメリカ人のいとこ、ソールが相続することになっている。じつはルーシーは12年前に彼に会ったことがあったが、当時、子供ゆえの幼さで意地悪をしてしまい、それをずっと後悔してきた。再会したソールは今や、いくつもの企業を切り回す大富豪となっていた。ルーシーは美しい黒髪の彼に魅了され、大いに心を揺さぶられた。しかし、二人のあいだのしこりは消えてはいなかったーソールは彼女に領主館から一秒も早く出ていけと言わんばかりに、軽蔑のまなざしと辛辣な言葉以外、微笑み一つ向けてはくれなくて…。
5年前、アニーは交通事故で身心に大きな傷を負い、記憶も失った。それ以来、他人を避けて孤独に生きてきたが、ある日、“夢の恋人”とそっくりな男性とすれ違った。夜ごと夢に現れては彼女を抱きすくめる、たくましい体、長い手足…。直感のままに車を走らせると、どこか見覚えのある屋敷にたどり着いた。中から出てきたのはーあの“夢の恋人”だった。威圧的だけれど魅力をたたえる彼に、アニーは目を奪われ、陶然となる。しかし夢では美しいはずの“恋人”の顏は今、苦悶の形に歪み、アニーに軽蔑と怒りのまなざしを向けていた。「君は僕の妻だ。なぜ平然と戻ってきた?」
まさかセバスチャンが、重要な取引先の社長だったなんて…。デザイナーの卵のジェシカはセビリアにある会社を訪れ、服作りに最高の素材と出合うが、社長が誰かを知って愕然とした。豪壮な館に住むスペイン伯爵のセバスチャンとは、従妹の恋の不始末を巡って激しい言葉の応酬を繰り広げたばかりだった。彼は、話をするため伯爵邸を訪れたジェシカを従妹だと思い込み、金目当ての性悪女と、一方的に罵ったのだ。商談の席でも侮辱を続ける相手の頬を、ジェシカが思わず平手で打つと、セバスチャンは気高い顔に軽蔑と怒りの色を浮かべ、言い放った。「我が一族に手をあげた者は、必ず報いを受けるぞ!」
深く傷ついた初恋のせいで男性を信じられなくなったモデルのヘザー。24歳になった今も、彼女が恋愛未経験であることは誰も知らない。その証拠に、ヘザーには、美貌を武器に次々と恋人を作っては容赦なく捨てる女だという評判がいつもつきまとっていた。そんな彼女に、またも言い寄る男がひとりー女性との噂が絶えない、危険な魅力をたたえた会社重役のレイス。「僕はきみが欲しい。きみも僕を求めるようにさせてみせる」高らかに宣言する彼に恐れをなしたヘザーは、ロンドンを出てスコットランドにある知人の別荘へ逃れた。翌朝目覚めると、驚愕の光景が待っていた。なぜ…レイスがここに!
モデルのクリスは滞在先のニューヨークで驚愕の手紙を受け取った。疎遠になっていた従姉妹が突然亡くなり、その一人娘の後見人にクリスが指名されているのだという。急いで帰郷したクリスを、亡き従姉妹の夫スレイターが迎えた。19歳のころ、クリスは恋人のスレイターに夢中だったが、彼と従姉妹との親密な場面を目撃し、故郷を飛び出したのだった。それから7年、懸命に彼を忘れようとしてきたのに…。懐かしい屋敷で再会したとたんスレイターは嘲りの笑みを浮かべ、冷ややかな声で言った。「きみはぼくに借りがある」借りですって?戸惑うクリスに、彼はいきなりキスを浴びせ…。
恋の仕返しを心に決めたプレイボーイが、“にせ妊婦”を相手に本領を発揮しー。まだ17歳の姪が年上の男性に弄ばれていると聞いたチェルシーは、姪をプレイボーイから救うため、一計を案じる。チェルシーが世慣れた妖婦を装って近づくことで、相手の大富豪スレードの気をそらし、姪を引き離すのだ。苦い初恋から男性を避けてきたわたしに、そんなことができるかしら?不安をよそに、チェルシーの演技が功を奏していい雰囲気になった直後、彼女はスレードの欲望の手をかわしてその場から姿を消した。ところが後日、思いもよらない場所で再会してしまった!しかも、スレードはチェルシーを悪女と思い込んだままで、“あのときの借りは返してもらう”とばかりに彼女に迫り…。
大学卒業後、天涯孤独のロージーは親戚夫妻の家に身を寄せていたが、夫を略奪しようとしていると周囲に疑われ、思わず家を飛び出す。見知らぬ土地で、働き口もない。ロージーはそんな不安から、偶然出会った目尻の笑い皺の魅力的なカラムにすべてを打ち明けた。すると彼はロージーに秘書の仕事を与えたうえに、驚くべき提案をする。「僕が恋人のふりをして、君にかけられた疑いを晴らそう」しかも、信憑性を持たせるため、彼の自宅で同棲をしてはどうか、と。カラムはどんな女性にも落とすことができないと言われている男性だ。その彼のそばに、昼は秘書として、夜は恋人として寄り添うなんて、男性恐怖症でキスの経験すらない私に、できるのかしら…?
亡き父の会社を引き継いだ一人娘のアンジェリカは、恋に奥手な28歳。仕事は順調に思えたが、そこには落とし穴があった。彼女が心を奪われ、愛してくれていると信じた相手が、じつは財産目当てで近づいてきたことがわかったのだ。傷ついた心を癒やそうとアンジェリカは海辺の町のコテージを訪れるが、とつぜん激しい胃の痛みに襲われ、意識を失って倒れてしまう。気づけば数日が過ぎていて…なんと、見知らぬ男性に看病されていた!彼の正体は、隣のコテージに滞在している会社社長のダニエル。男性経験のないアンジェリカは、無防備な状態で介抱され、体を見られたことがショックだった。と同時に、彼を強く意識し…。
母の死後、いつも妹の後始末をしてきたエマは頭を抱えた。敏腕実業家として知られるドレイクの車を、妹が壊したのだ。代償に、エマは扇情的な雑誌に出るよう求められ愕然とする。断れば訴訟を起こすと脅され、承諾するほかなかった。実際には、彼が要求したのは婚約者のふりをすることだった。共に過ごすドレイクの男性的魅力が息苦しいほどでも、エマは愛のない関係を結ぶ気はなかった。ある日、街へ出たエマは暴漢に襲われて頭を打ち、記憶を失う。退院したあと、情熱が導くまま“婚約者”と枕を交わすがー。
手術を受けた母の面倒を見るため帰郷したクリスティは、主治医がドミニク・サビッジと知り、動揺した。8年前の夏、クリスティはませた友人に教えられるがまま、幼い頃から憧れていたドミニクに純潔を捧げようとした。だが残酷なまでに拒絶され、逃げるように故郷を去ったのだった。いったいどんな顔をして彼に会えばいいの…?往診の日、いたたまれずドミニクを避けようと外に出た彼女は、ちょうど降り出した雪に足をすべらせて転んでしまう。そのとき、すっと手を差しだしたのはほかならぬ、ドミニクだったーかつて胸を躍らせ心惹かれた、あの呪縛するような雰囲気そのままの。
明るい姉の陰に隠れて育った不器量で世間知らずのリサは、15歳のときから姉の夫の兄ジョエルに軽蔑されてきた。それは年頃のちょっとした出来心が原因だったが、リサは彼にふしだらというレッテルを貼られ、心に傷を負った。以来、聡ずかしさと悔しさから彼とは会わないようにしてきたのに…。8年後、姉夫婦が亡くなり、ジョエルとリサの2人が遺された子たちの後見人に指名されたことで、再会を余儀なくされる。またあの軽蔑のまなざしを向けられるなんて耐えられない!怯えるリサに、冷たい瞳のジョエルは驚くべきことを言い放った。「子どもたちとともにいたければ、ぼくと結婚するしかない」
教師のセアラは悩みや問題のある生徒を見捨てておけないたちで、思い入れが強いあまり疲れ果て、休養することにした。ある日、森の中で、家出して道に迷った幼い少年と出会う。父親に厄介者扱いされたと感じている彼に同情しつつも、この少年を家に帰らせなくては、とセアラは思った。そこへ、行方を捜しに来た父親グレイが現れ、いきなり怒鳴った。「息子と何を話しているんだ。誘拐でもするつもりか!」セアラは傲慢な彼に反感を覚えたが、惹かれてもいる自分に気づいて驚く。後日、突然学校を首になり、企業を経営しているグレイからの、子守りをしてほしいという申し出を受けざるをえなくなるとも知らず。
ペトラは疎遠の祖父が勝手に縁談を進めていることを知った。相手はシーク・ラシードという見も知らぬ男性だという。祖父はわたしをビジネスの道具として利用するつもりなんだわ…。結婚するなら愛し愛されたいと願うペトラはある計画を思いつく。プレイボーイと噂のブレイズに、誘惑するふりをしてほしいと頼み、あえて自分の評判を落として、意に染まぬ縁談を壊すのだ。ブレイズに話を持ちかけると、理由を話すのが条件だと言われ、ペトラはすべてを洗いざらい話した。「交渉成立だ」彼はそう告げると、いきなり彼女の唇を奪った!ペトラは夢にも思わずにいたー彼こそがじつはシーク・ラシードとは。
児童養護施設に暮らすフェイスは、同じ施設の少女にいじめられてつらい思いをしていたが、病母に心配をかけまいと我慢していた。そんななか、近くの豪奢な屋敷ハットンハウスで夏を過ごすことになり、トパーズのような瞳を持つ青年ナッシュと出逢って、恋におちた。7歳年上の彼と一緒にいると世界のすべてが薔薇色に見え、フェイスは純粋な想いを打ち明けたが、彼の反応は冷たかった。きみには自分の言っている言葉の意味がわかっていない、と。さらに、件のいじめっ子に謀られ、とんだ濡れ衣を着せられて以来、ナッシュにも誤解されて疎遠になり、彼女の初恋は終わったのだった。あれから10年。思い出のハットンハウスで、二人は再会を果たすが…。生まれる前に亡くなった父の背中を追うように建築士の資格を取り、仕事でハットンハウスと再び関わることになったフェイス。貧しい彼女が大学を卒業できたのは、匿名の支援者のおかげだったが、それが今や大実業家となった初恋の人ナッシュとは知る由もなく…。
ポピーの初恋相手は、いとこのクリスだった。幼いころは、彼の兄ジェームズが大好きだったが、思春期になり、優しいクリスに淡い恋心を抱くようになると、それに気づいたジェームズは、ひどく冷たく、意地悪になった。大人になり、ポピーの初恋はクリスの結婚で無残に散った。ほどなくして上司でもあるジェームズの出張に同行したポピーは、あるささいなきっかけで、彼の腕に抱かれてしまう。思いがけず、クリスには感じたことのない情熱をかきたてられ、ポピーはみずからジェームズを求め、純潔を捧げた。その一夜で身ごもってしまうとは、思いもせずにー。
嘘よ…サフランは信じられない思いでニコを見つめた。ニコはサフランが生まれて初めて心惹かれた男性。その彼があろうことか犯罪グループの一味で、サフランを誘拐して人質にとったのだ。誘拐犯の一味は凶暴だったが、ニコだけはなぜか優しかった。死の恐怖に怯えるなか、サフランのニコへの想いは愛に変わる。一味の一人に乱暴されそうになったとき、サフランは誓った。このまま死ぬのはいや。愛する人にすべてを捧げたい…。だがニコと結ばれた直後、彼はサフランを狙った銃弾に倒れー。