著者 : 京極夏彦
72歳の益子徳一は定年退職後、公団アパートで一人暮らし。誰かに優しく「オジいサン」と呼びかけられたことを思い出したり、大した用もないのに訪ねてくる田中電気の2代目と言い合いしたり、調子に乗って変な料理を作ったりー。1日1日をきちんと大事に、そしてあるがままに生きる徳一は、何気ない日常の中で、ささやかだけれど大切なことに気づいてゆく。ほっこり笑えてちょっぴり胸が温まる、連作短編集。
明治三十年代初頭。人気のない道を歩きながら考えを巡らせていた女学生の塔子は、道中、松岡と田山と名乗る二人の男と出会う。彼らは幻の書店を探していてー。迷える人々を導く書舗、書楼弔堂。田山花袋、平塚らいてう、乃木希典など、後の世に名を残す人々は、出会った本の中に何を見出すのか?移ろいゆく時代を生きる人々の姿、文化模様を浮かび上がらせる、シリーズ待望の第二弾!
昭和二十九年八月、是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合いー。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省みぬ者よ。憤怒と哀切が交錯するミステリ。
昭和29年、夏。複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るがー。山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相とは。百鬼夜行シリーズ待望の長編!
「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。百鬼夜行シリーズ最新作。
「死にたいんーです」「なら死ねよ」。娘を亡くし、妻だった人に去られ、十五年勤めた会社を解雇された。全てを失い彷徨していた尾田慎吾は、雨の夜、自殺を図る見知らぬ女にそう告げた。同日、旧友荻野と再会する。彼は、情、欲望、執着を持たぬ慎吾を見込んで、宗教を仕事にしないかと持ちかける。謎めいた荒れ寺に集いし破綻者たち。仏も神も人間ではない。超・宗教エンタテインメント。
シリアの砂漠に現れた謎の男。旧日本兵らしき軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、古今東西の呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲であった!妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れたアルバイトの榎木津平太郎は、水木しげるの叫びを聞いた。「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」と。だがその言葉とは逆に、妖怪が次々と姿を現し、日本は大混乱に陥ってゆく。驚異の実名小説、ここに開幕!
富士の樹海。魔人・加藤保憲の前に、ある政治家が跪いていた。太古の魔物が憑依したその政治家に、加藤は言い放った。この国を滅ぼす、と。妖怪が出現し騒動が頻発すると、政府は妖怪を諸悪の根源と決めつけ駆逐に乗り出す。世相は殺伐とし民衆は暴力的となり、相互監視が始まった。この異常事態の原因究明のため、『怪』関係者は居酒屋に集い、信州山中で入手した、呼ぶ子を出現させる謎の石の秘密を解き明かそうとするが…。
妖怪研究施設での大騒動を境に、妖怪は鳴りを潜めていた。政府は妖怪殱滅を宣言すると、不可解な政策を次々と発表。国民は猜疑心と攻撃性に包まれてゆく。妖怪関係者は迫害を逃れて富士山麓に避難するが、荒俣宏や榎木津平太郎は、政府の特殊部隊によって捕縛されてしまう。平太郎らは、妖怪出現の謎、そして日本を殺伐とさせる真の要因を突き止められるか?加藤保憲、妖怪、軍隊、妖怪関係者が入り乱れた“大戦争”が始まる!
「妖怪や目に見えないモノが、ニッポンから消えている!」水木しげるの叫びとは逆に、各地に妖怪が現れ始める。背後には、あらゆる魔術を極めた魔人・加藤保憲の影が…。妖怪撲滅に動き出す政府。“妖怪狩り”を始める民衆。虚構と現実が入り混じり、荒んだ空気が蔓延する中、榎木津平太郎、荒俣宏、京極夏彦らは原因究明に乗り出した。多数の小説家、研究者などが実名で登場し、物語は驚異の結末を迎える。京極版“妖怪大戦争”!
少女たちを襲った悍ましい事件から三箇月。来生律子の許を訪れた作倉雛子は、小壜に入った“毒”を托し姿を消した。相次ぐ殺傷事件、三十数年前の一家惨殺事件との奇妙な符号、彼女らを監視する何者かの影。少女たちは再び動き出す。巧緻に張り巡らされた伏線が思いもよらぬ収束を見せるシリーズ第二弾。
人と人との物理的接触が極めて希薄な高度情報化社会。清潔で完璧なはずの日常で起きた連続殺人事件が十四歳の少女達を覚醒させる。世界のすべてだと思っていた端末が“鎖”だと気づいたとき、牧野葉月は初めて友達と繋がる。真実を求める少女達を殺人鬼が狙う。“忌避すべき狼”の正体とは?シリーズ第一弾。
元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。「ナッちゃんはそういうの駄目な口やろ」と笑いながら、デザイン学校時代の年上の同輩、御木さんは奇妙な話を始めた。十三歳のときに山崩れで死んだ妹が、年老い、中学の制服を着て、仕事先と自宅に現れたというのだ。だが彼の話には、僕の記憶と食い違いがありー(「クラス」)。この現実と価値観を揺るがす、全9篇の連作集。