著者 : 坂井希久子
岸峰子、三〇歳。シングルマザー。幸田生命女子陸上競技部所属。自己ベストは、二〇一二年の名古屋で出した二時間二四分一二秒。ロンドン五輪女子マラソン代表選出という栄誉を手に入れた彼女は、人生のピークに立っていた。だが、あるアクシデントによって辞退を余儀なくされてしまい…。そして今、二年以上のブランクを経て、復活へのラストチャンスを掴むため、リオ五輪を目指し闘い続ける。このままじゃ、次に進めないからー。一人の女性の強く切なく美しい人生を描く、感動の人間ドラマ。
大阪・新世界のどん詰まりに店を構える「ラーメン味よし」。放蕩親父ゲンコの作るラーメンはえらく不味くて閑古鳥が鳴いている。しっかり者の一人娘センコは頭を抱える日々だ。最近、ぼんやりしているおばあやんも気にかかる。そんなある日、幼馴染の質屋の息子カメヤが東京から帰って来て…。下町商店街に息づく、鬱陶しいけどあったかい、とびっきりの浪速の人情物語。
猫の世話をするだけの簡単なお仕事ー喫茶虹猫。こんな求人募集を見て、獣医大学一年生の僕はある古ぼけた喫茶店を訪ねた。そこで待っていたのは、「猫バカ」で引きこもりの美しきオーナーと里親募集中の捨て猫たち。任された仕事は、厄介な婆さんが住む猫屋敷の掃除と店の猫に生涯愛してくれる飼い主を探してやることだったが、次々と面倒な事情を抱えた客人が現れて…。猫と暮らす美しい女の願いは叶うのか。寂しがり屋の人間たちと愛くるしい猫の日々を綴った長編小説。
空回りしがちな仕事と、望まない結婚を迫る恋人を置いて、介護福祉士の梓は、新宿駅から特急あずさに乗り込んだ。諏訪湖畔で出会った陶芸家の桂に連れられ、泊まるところのない梓は長野・高遠町の民宿へ。雄大な自然とのんびり暮らす人々に囲まれて過ごし、心は揺れ動くが…。高遠と東京を行き来しながら、新しい生き方を見つけていく女性の姿をいきいきと描く。
虫にしか興味のない大学教授に亡父の面影を重ねて身悶える女子大生「かげろう稲妻水の月」、ロハスなヌーディズムに目覚めた同僚がハタ迷惑にせまる「素っ裸の王様」、花粉症治療のためにマス寿司をどか食いする彼「虫のいどころ」-ちょっぴりフェティッシュな趣味や性癖に振りまわされる大人の恋の短編集。
『卒業したら、つきあってくれますか』答案用紙の片隅に書き込まれていた告白。あれから4年、翠はまだ薫の答えを待っていた。「イエスかノーの二択だから簡単でしょ」「今さら?」「再テストだよ」-祖父の遺体に残された謎を追う薫と、彼に好意をよせるかつての教え子・翠。二人の探索と恋のゆくえは?-。