小説むすび | 著者 : 山本省

仏語訳『白鯨』の序文作品。誰もが知る大作『白鯨』。フランスではジオノたちの翻訳が広く愛読されている。

ジオノ最大の関心事といえる羊と羊飼いを扱った『蛇座』と、彼が生まれ育ち生涯を過ごしたマノスクについて書いた『高原の町マノスク』。書かれていることのすべてが「事実」とは限らない。想像力を奔放に発揮した作者が空想の「マノスク」を語る。ジオノ文学の「素材」がふんだんに撤種されている。

羊の大群と兵士の大群。無慈悲な戦場に送られた兵士たちと銃後を守る女や老人たちを対比して描写する画期的な構想の物語。戦場の「砲弾と砲火の大包丁の下」で右往左往する兵士たち、ヴァランソル高原で戦争の荒波に耐える住人たち。ヴェルダン近辺の熾烈な戦場にプロヴァンスから出兵した二人の青年が見たものは、そしてそこで受けた戦争の傷は？戦争を静かにそして鮮烈にプロヴァンスの視点から物語るジオノの最高傑作にして唯一の反戦小説。

事実と虚構を交えて語られる『木を植えた男』の作者ジオノの驚くべき少年時代。妄想的な少年ジャン、女性に対する過敏とまで表現できるような感受性、父親への揺るぎない信頼、音楽への本能的な共鳴、樹木や動物への限りない親愛の情。ジオノ文学を豊かに深遠にまた普遍的なものにしていく創造活動の揺籃期が雄弁に喚起されている。

男と女の再生、農業の復活、廃墟同然だった村の復興の物語。小川の流れとひとりの女の魔術と力強い犂がこの再生の物語を支えている。「牧神三部作」の第三作。

頑迷固陋な農民に幽閉されている女性を救うのは、アメデの献身的な友情と雄弁なハーモニカの音楽とアルバンの高邁な精神の力であった。初老の農夫と純真な青年の友情の物語。

『憐憫の孤独』は二十の中・短編で構成されている。物語もあればエッセイもある。初期「牧神三部作」（『丘』『ボミューニュの男』『二番草』）のあとに書かれた作品で、ジオノ文学の重要な要素が見事に凝縮された内容豊かな傑作である。これ以降に出版される多種多様な作品群を予告するような物語が多く含まれており、ジオノ文学の扇の要にたとえられるような作品だといえよう。

人々の心のなかに喜びの種をまく。自然とともに生きる限りなく深い意味とは…！『木を植えた男』の原点となった知られざる傑作。