著者 : 斉城昌美
ビサンツの鷲(3)ビサンツの鷲(3)
スルターニアはイル・ハーン朝の時代に夏の宮廷が置かれた北ペルシャの美しい都である。二人の従者を連れた男は、スークの一遇にある奴隷商人からトルコ系の美少年を買い求めた。それより前、男はエルブルズ山脈の鋭い稜線に落日がかかる二基の小塔に影を落していた。塔は白茶けた髑髏で覆われて暗い眼窩に鬼火が点っていた。ナービルと呼ばれた男は尊師の命を受けて、奴隷を買い付けにやって来たのだ。彼の眼にはティムールへの激しい憎悪が燃えていた。その頃、ビザンツの鷲アレクシオスの一行も都に旅装を解いていた。
ビザンツの鷲(2)ビザンツの鷲(2)
コンスタンティノープルの宮廷を舞台に二人の皇帝を巡る貴族達の陰謀劇に巻き込まれたギリシャの貴族アレクシオスは、親友のジェノア人ステファーノを喪った。外国勢力の排除を目論む有力貴族シドネスによって毒殺されたのだ。その仇敵を討つと、弟レオンと自称用心棒のジャンニ・ゲンティル等と陽に染まる金角湾を出帆してトレビゾンドに脱出した。麗しの都は二度と彼等を迎えることはないのか。皇帝の側近の貴族を剣で葬った逆賊の烙印を押され、これから向かうトレビゾンドはビザンツ帝国とは縁が深い…。雄渾作。
ビザンツの鷲ビザンツの鷲
第4次十字軍による大略奪を受けたビザンツ帝国の都・コンスタンティノープルがギリシア人の掌に戻ったのは1261年。だが、黒海交易の覇者ヴェネチアとジェノアの敵対に宮廷内の権力闘争を加え、外にはトルコ帝国の脅威に晒されて帝国千年の都は朽ちゆく巨大な老木の運命を辿っていた…。ギリシアの貴族アレクシオスは背後に尾行者の影を感じながらも、帝国復興の野望に燃えるゲオルギウスから皇帝の補佐と政略結婚の密談をもちかけられた。戦乱と黒い謀略が渦巻く荒廃の帝国に巣喰う魔手が。
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