著者 : 斎藤真理子
帰郷した「僕」がタイムカプセルを掘り起こし…「近所」。老年の夫婦を描いた抒情的な「黄色い河に一そうの舟」。騒音の抗議に来た上階の男と迎える「最後までこれかよ?」。前世はマリリン・モンローだった「僕」と宇宙人の「“自伝小説”サッカーも得意です」。驚嘆の作品集。
老境を描いた詩情豊かな作品「昼寝」。息もつかせぬ「ルディ」。兵役を控えた若者たちを描いた「ビーチボーイズ」。奇天烈な宇宙SF「ディルドがわが家を守ってくれました」。暗示的な「膝」。全8篇どこから読んでも傑作!日本の読者へのメッセージも!
大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。李箱文学賞、マン・ブッカー国際賞受賞作家による珠玉の短篇集。
しなないで、しなないでおねがいーその言葉がお守りとなり、彼女の体に宿り、そのおかげで私ではなく彼女がここへやってくることを、考える。自分の生にも死にもよく似ているこの都市へ。うぶぎ、ゆき、つき、こめ、はくさい、ほね…白い光と体温のある方へーワルシャワと朝鮮半島をむすぶ、いのちの物語。アジア唯一の国際ブッカー賞作家、新たな代表作。最注目の作家が描く破壊の記憶と、再生への祈り。
ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!韓国で100万部突破!異例の大ベストセラー小説、ついに邦訳刊行。
「脱北者」の三人には、亡命の過程で家族を失うという共通点があった。ウォンギルはモンゴル砂漠で力尽きた妻を見捨てて娘を背って逃げてきた。トンベクは国境を越える直前に家族全員が目の前で公安警察に捕まるが、自分だけ助かった。ヨンナムは別ルートで脱出した家族が中国で行方不明、人身売買グループの手に渡ったらしい。やがてオリンピックの選手村建設予定地で、朝鮮戦争にさかのぼる大量の人骨が出土した…。経済至上主義のなかで、脱北者たちのささやかな倫理感が崩れ落ちていく。北朝鮮出身の両親をもつ作家が韓国社会を凝視し、衝撃を放った小説。
誰が知るだろう、この物語のすべてが一編の復讐劇でもあるということをー。一代にして財を成し、あまたの男の運命をくるわせた母クムボク。並外れた怪力の持ち主にして、人ならざるものと心を通わし、煉瓦づくりに命を賭した娘チュニ。巨大な鯨と煉瓦工場、華やかな劇場をめぐる壮絶な人生ドラマが幕を開ける。ストーリーテラーとして名高い著者が、破壊的なまでに激しく生々しい人間の欲望を壮大なスケールで描き出した一大叙事詩。
私はアリシア。女装ホームレスとして四つ角に立っている。ソウル郊外に建設される、大規模マンションを巡り加熱する人々の欲望ー凶暴な母と年老いた父、そして沢山の食用犬と暮らす少年アリシアのたったひとりの戦い。数々の賞を総なめにする最前線の女性作家が強烈なイメージで描く怒りと敗北、無垢な祈りの物語。暴力の心臓を描く傑作!
それが必要だった。すべてのものが消えてゆくこのときに。暗闇を水平線で分ける明かりのようなものがー喪失、暴力、孤独、格差、貧困…“今”をかろうじて生きる人々の切なく、まがまがしいまでの日常を、圧倒的な筆致で描いた8つの物語。いま最も期待される韓国文学の“新しい顔”ファン・ジョンウン、待望の初邦訳。
韓国プロ野球の創成期、圧倒的な最下位チームとして人々の記憶に残った三美スーパースターズ。このダメチームのファンクラブ会員だった二人の少年は大人になり、IMF危機と人生の危機を乗り切って、生きていくうえで最も大切なものは何なのかを知るー。韓国で20万部超のロングセラーとなっているパク・ミンギュの永遠のデビュー作!
ある日突然、言葉を話せなくなった女。すこしずつ視力を失っていく男。女は失われた言葉を取り戻すため古典ギリシャ語を習い始める。ギリシャ語講師の男は彼女の“沈黙”に関心をよせていく。ふたりの出会いと対話を通じて、人間が失った本質とは何かを問いかける。心ふるわす静かな衝撃。ブッカー国際賞受賞作家の長編小説。
原っぱのど真ん中に卓球台があった。どういうわけか、あった。僕は毎日、中学校でいじめられている。あだ名は「釘」。いじめっ子の「チス」に殴られている様子は、まるで釘を打っているみたいに見えるからだ。スプーン曲げができる「モアイ」もいっしょにいじめられている。モアイと僕はほとんど話したことがない。僕らは原っぱの卓球台で卓球をするようになる。空から、ハレー彗星ではなく、巨大なピンポン球が下降してきた。それが原っぱに着床すると激震し、地球が巨大な卓球界になってしまう。そして、スキナー・ボックスで育成された「ネズミ」と「鳥」との試合の勝利者に、人類をインストールしたままにしておくのか、アンインストールするのか、選択権があるという…。