著者 : 江川晴
元眼科医の湯浅マキは七十九歳。物忘れは多少激しくなってきたものの、足腰丈夫、いたって元気な高齢者である。ある日息子夫婦に誘われてドライブに出かけるが、着いた先はなんと病院だった!しかも認知症の傾向が見られたため、そのまま検査名目で入院させられてしまう。同じ病棟のそれぞれ事情を抱えた入院患者たちに次第に興味を抱き始めるマキだったが…。「老い」は罪なのか、老人が誇りを持って生きられる場所はないのかー。コミカルなタッチで高齢者の自立・幸せを問う、ユーモア医療小説。
定年退職後、平凡な人生を楽しむ夫に肺癌の診断が下されたー。看護の現場に長く携わり、多くの病人やその死と向かい合ってきた妻は、突然の身内の発病にうろたえる。誰にもぶつけようもない後悔と悲しみ、不安、怒り…。そして、手術はしないと決断した夫とともに、夫婦二人の「生きる」闘いが始まった。医療小説の第一人者が自らの体験を基に描く問題作。看護とは、家族とは?さらに、医療従事者や終末医療のあり方をも問う。
理想的な医療を目指す院長や看護部長と個性豊かな患者たちが繰り広げるユーモアとペーソス溢れる物語ー。ときどき痴呆の出る元眼科医の湯浅マキ(76歳)が息子夫婦にドライブに誘われ、ウキウキ出かけてみたら、連れていかれたのは老人病院の痴呆病棟。何度も病院からの脱出を企てるが、看護師に見破られる。ときどきふつうの状態に戻るのを幸いに、看護師や入院患者たちの日々を観察し始めた彼女の目を通して痴呆病棟の内情が描かれる。
窃盗で捕まり、ノイローゼに悩む少年、無知のまま売春に走り妊娠した少女。家庭の愛を断たれ、犯罪をおかし、心も身体も傷ついた未成年者を収容する場所「医療少年院」。青少年による凶悪犯罪の多発で注目されるが、現在取材は許されないその施設を調査していた著者が、それをもとに描いた作品。院内で働き、少年たちの更生に尽くすひとりの看護婦の目を通して描く、職員と少年たちの愛のドラマ。
国立大学病院の外科東病棟に配属された新人看護婦高木亜沙子は、患者にとってのよりよい看護を心がけ情熱をもって患者に接するが、小脳腫瘍の10歳の少年の死、医師に不信を抱き一切の治療を拒否した41歳の加東仁の死などに直面し、自分と看護の無力さに絶望する…。やがて、自分を必要とする患者の姿や先輩ナースに励まされ、人間の尊い死にかかわる看護職の光栄を思い、仕事を続けようと決意する。終末看護をメインテーマに、新人看護婦が成長していく様子をドキュメントタッチで描く医療小説。