著者 : 赤坂桃子
失業、貧困、明日への不安…ナチズムへ繋がる道を用意した暗い時代に、お金はちょっぴり、心配と希望はたっぷり抱え、懸命に生きる若夫婦の姿を描いた長編。
顔面を吹き飛ばされた欧州議会議員の死体が発見された。ユーロポールの主任警部ヴェスターホイゼンは、アナリストのアヴァと協力して捜査に乗りだす。大小さまざまなドローンによってすべてがデータ化された監視社会。アメリカは没落し、ブラジル、アラブ、EUなどが太陽光や波動エネルギーをめぐって覇権を争う。シミュレーション空間「ミラースペース」を駆使して捜査は進むが、新EU憲法の採択に向けて、そこには巨大な謎が隠されていた。ユーロポール長官の老獪なフォーゲル、自由党の女性党首ヤナ・スヴェンソン、情報多国籍企業タルコンの総帥ジョン・タラン、政治スキャンダル専門の謎のジャーナリスト・ジョニー・ランダム、影の警察RR…。
冬の寒空の下、北ドイツの農場主レスマンは、薄い服を身にまとって逃げてきた若い女を匿い、追っ手の男たちを銃で追い払う。一方、チェルノブイリ原発の立入禁止区域“ゾーン”で暮らす女性ヴァレンティナは、行方不明の娘カテリーナのために自らの思い出をノートに綴りはじめる。そして、ウクライナ警察の警部レオニードは、姿を消した若い女たちを追ってはるばるドイツに旅立つ。1930年代の大祖国戦争から、社会主義大革命、第二次大戦中の忌まわしい出来事、チェルノブイリの輝かしい日々…。戦争と原発の暗い記憶を抱えて生きる人々を描く文芸ミステリ。
大農場の陽気な赤毛の娘アルヴィーネ、その思慮深き兄ヤーコプ、がっしりした実業家タイプのヴィルヘルム、大きな水色の目をしたきまじめなハンナ、文学を愛するレオナルト、活動的で美しく聡明なテレーゼ…。1939年夏、共に過ごした幸福な時間は終わり、戦争が始まろうとしていた。不可解な殺人事件を追うひとりの巡査、50年の時をこえてよみがえる戦時下の出来事。ドイツ・ミステリ大賞第一位。気鋭の女性作家による静かな傑作。