著者 : 陳舜臣
晩唐の長安、塩商・崔朝宏の邸内にある特異な建築「方壺園」で詩人として文名高い高佐庭が殺された。不可解な密室殺人に役人は匙を投げるが、その翌年、殺人現場で書生の呉炎が自殺したことから、驚天動地の犯行方法と虚栄と嫉妬が起こした事件の真相が明らかになる(表題作)。雄大な中国の歴史と豊かな詩情で彩られた本格推理。至高のミステリ作家・陳舜臣をたっぷり味わえる最強の傑作選。
突然の兇行、横たわる死体、立ちはだかる大きな謎。もはや解決不能と思える難事件を、明晰な頭脳で解き明かしていく。曾我佳城、巨勢博士、神津恭介、陶展文、仁木兄妹、金田一耕助といった名探偵たちの鮮やかな推理を、とくとご堪能あれー。歴史ある日本推理作家協会賞を受賞し、ミステリー界が誇る作家六名による、珠玉作短編集シリーズ第六弾。
中国・明からの使節を迎え沸き立つ17世紀初頭の沖縄・琉球王国。だが、この国の平和は幕府を後ろ盾にした薩摩によって侵されつつあった。侵攻に膝を屈するか?独立をかけて抵抗するか?そして宗主国・明は助けてくれるのか?生き残りへ向けて琉球の闘いが始まる。沖縄、激動の時代を描く大河歴史小説。
怒涛の勢いで侵攻してきた薩摩軍に琉球軍はわずかひと月で降伏。奄美諸島は薩摩に割譲され、尚寧王は日本本土へと連れ去られる。属国へと堕ちながらも、明に対しては独立国の体面を見せねばならない王国の苦悩。しかし琉球の誇りを胸に秘め、「南海王国」建設へ人々の胎動が始まる。大河歴史小説、完結編。
広州の防備を固め英国海軍を迎え撃つ林則徐だったが、敵は守備の薄い定海まで北上、難なく占領する。北京では政敵の軍機大臣・穆彰阿が林の排除を道光帝に献策、これにより林は欽差大臣を罷免される。その後停戦が成立するが、香港割譲を含む諸要求を突きつけられ、皇帝は激怒、再び兵を起こす。
道光帝の命により、戦闘が再開されるが、腐敗した清国軍は各地で連戦連敗。怒れる民衆たちも「平英団」を組織して英国軍に立ち向かうものの、上陸した英兵により国土は阿鼻叫喚の地獄と化す。林則徐は敗戦に慟哭の思いを噛み締めるが、新時代への変化に希望も感じつつ新たな任地・新疆へと旅立つ。
清朝末期。大英帝国の新興資本は、市場を求め中国進出を企てていた。彼らが流入させた阿片の暴利を貪る特権商人、官僚達の中に、国を憂う清廉潔白な実力官吏・林則徐と豪商・連維材がいた。明治維新を始めとした近代アジア史に強烈な衝撃を与えた事件を活写する陳文学の最高峰。新装版登場!
憂国の士・林則徐が推す阿片厳禁論は動揺する道光帝の心を掴み、彼は地方官吏から欽差大臣に抜擢される。広東に赴いた林は断固たる態度で阿片を取り締まるが、中国進出を諦めない大英帝国は執拗な挑発を繰り返す。そして全英国人の広東追放と全ての阿片の没収が引き金となり、戦争が勃発する。
中原制覇を目論む諸侯のなかで、一歩先んじたのは、後漢の天子・献帝を本拠地・許都に迎えた曹操だった。これに対抗する袁術は皇帝を僭称。さらに実力者の袁紹や劉備・呂布らの諸将が加わり、権謀術数をめぐらす。群雄割拠の時代の帰趨はいかに。
春秋から三国時代を経て隋唐、南宋。中原に覇を競った人びとを活写し、今なお多くの読者を魅了する『小説十八史略』。のちの始皇帝、秦王暗殺を命じられた荊軻。金の都で蒙古から史書を守る宿命を負った宋人王勉をはじめ、孟嘗君、楊貴妃など「十八史略」の時代に生きた人物に光をあてる歴史小説コレクション。
一八九五年、下関における日清講和条約の調印。清朝打倒を決意した孫文は、同志とともに広州で最初の武装蜂起を企てる…。「大同社会」の実現を目指して、世界を翔る若き革命家の軌跡。膨大な資料から真実を読み取り、最後まであきらめなかった姿勢と無私の精神にあふれた孫文の実像が甦る歴史小説の神髄。『青山一髪』を改題、待望の文庫化。
度重なる蜂起の失敗。しかし宮崎滔天ら多くの日本人と中国人留学生に支えられ、王朝の終焉に向けて孫文は革命運動の炎を燃やし続ける…。孫文と同志たちの革命と青春を描く歴史長編。膨大な資料から真実を読み取り、孫文の実像に迫る歴史小説の神髄。『青山一髪』を改題、待望の文庫化。
自由で平和な理想郷を築く気宇壮大ロマン!カラ・キタイ(西遼)を建てた耶律大石の驚愕の秘史と、暗殺教団の長老ハサン・サッバーフにウマル・ハイヤームの謎。主人公・陶羽が体験するマニ教の奥義「桃源郷」発見の旅。新世紀を飾る名作と三国志から始まる「曹操-魏の曹一族」を併録。国家を超越、世界主義を択る。
失踪した男の捜索を依頼された上海生れの浦上隆志。男の行方を追ううち、浦上は日中戦争の裏面を探る運命に迷いこむ。激動の歴史に隠された出自の謎を識る感動の長編快作。多感な青春を描く著者自伝的作品「青雲の軸」を併録。
日本で書かれた中国人の“日中戦争”。1937年7月、盧溝橋事件勃発。日本と中国は全面戦争に突入した。上海の財閥の孫娘・程碧雲は両親を失い、神戸の日本人家庭で育つが、あることから抗日救国の組織へ。波瀾の大陸で自覚する日中の深い苦悩と未来への夢を描く感動の長編小説。短編2編も併載。
同じころ鎖国状態が解かれた日本と中国。アジア進出をねらうヨーロッパに対抗し、朝鮮をめぐる「日清戦争」は運命的な戦いであった。伊藤博文、陸奥宗光、井上馨、李鴻章、袁世凱…深謀巧詐が脈うつ傑作歴史長編小説。