著者 : 陳舜臣
権力の内訌、大同を崩す。大蒙古の興隆、草原の光と風。チンギス・ハーン亡きあとも拡大するモンゴル帝国。孫のフビライは南宋を破り元朝を築き、標的を日本に向けた。しかし後継者の内乱は醜く続く。西側からの視点を混えた帝国興隆史の傑作。中国冒険譚「小説マルコ・ポーロ」併録。
アジアを制し世界制覇をめざした帝国の興隆史。1189年、蒼き狼テムジンはハーンに推戴され、チンギス・ハーンに。彼はモンゴルを束ね、金国、中央アジアと制覇していくが、病に斃れた。チンギスを想うナイマン王女・マリアたちの見守る中、オゴディら一族の機略の爆走に亀裂が。牧民統一の険路長程-。
エホバの命を受け万民を救う夢に燃えた光芒。アヘン戦争から9年後、エホバより世直しの命を受けたという洪秀全は「太平天国」を樹立。理想郷を目指し清朝と対立。太平軍はついに南京を陥し、国都天京と改めた。14年間、世界の注目を集めた新生国家の真実をえぐる超大作。アジア千年王国(ミレニアム)の戦い。
清朝末、中国は英国商人の持ちこむ莫大な量の阿片に蝕まれ、人心は荒廃、生活は破綻に瀕していた。国を憂い民族を守るため立ちあがった敏腕官吏、林則徐と豪商、連維材。近代中国黎明期の危機とうねりを初めて小説化した名作。
耶律楚材を得てチンギスは帝国をいっそう強大なものにしていった。しかし巨星チンギスが墜ちると後継者問題が浮上する。息子たちはその座を狙っての権謀術数を巡らす。母や妃、そしてマリアを始めとする女性たちの期待と不安の中、チンギスの三男オゴディが二代ハーンの座に。三代グユク、四代モンケと後継者たちは西へと勢力を伸ばし世界帝国へと膨張を続けるが、分裂の影が忍び寄っていた。金を滅ぼし宋を追うモンゴル、膨張する帝国の行方。
百花繚乱の唐。貞観の治と謳われ、武則天の君臨を経て、玄宗と楊貴妃の華麗なストーリーが展開するが、時は動き、中原は五代十国に分裂。趙匡胤の宋も遼・金と対立。突如、勃興するチンギス汗のモンゴル。宋との激突いかに。白熱の王朝史完結篇。
名君武帝の黄金期をすぎ衰退した前漢は王莽の簒奪を許す。新を倒した光武帝は後漢を復興するが、国は乱れて曹操、劉備、孫権の三国時代へ。そして魏から晋へと移り、大分裂のあと隋を経て「花咲く長安」の唐王朝が誕生する。覇権の交代、熱源を産む。分裂と統一を繰りかえし最も波乱に満ちた時代を活写。
大陸中原は神々が君臨した神話時代から堯、〓の伝説時代へ。夏・殷と歴史は重なり、暴君紂王を周が倒すが東西に分裂し、春秋戦国の大動乱へ。始皇帝が統一した秦もあえなく滅び、項羽を破った劉邦が漢を創建。波乱万丈の中国史・開巻。
一対の壺と皿を発端に、やがて発見されていく一連の青い波濤模様のやきもの。清朝末、そして日中戦争時に、激しく生きた男女の物語を綾おりにして、現代に脈うつ人間の運命を描く感動の恋愛小説。他に短篇五作収録。
杭州は南宋時代の首都である。蘇州とともに名園の多いところで、神戸の華僑・銭延真の故郷でもあった。みごとな菊づくりで知られる銭は、杭州で庭園づくりに励み、その熱意と抜群の感覚に師匠から庭園づくりの一切を託された。心魂を傾け思う存分腕を振るう銭であったが、依頼主が初恋の人を奪った政商・李巨元と判ったとき、ある怨念が胸に宿る。そして名園「菊花園」は完成した…。表題作ほか六篇を収録。
国姓爺鄭成功、幼名福松は、東アジアの海の実力者を父として、日本人田川氏の娘を母として、平戸に生まれた。七歳のとき福建泉州へと渡り、父のもとで成長、やがて南京の太学に学ぶ。折りしも李自成軍に首都北京を占領された明朝は滅亡、山海関を越えた満洲鉄騎軍は中国大陸制圧に向けて怒涛の南進を開始した。唐王隆武帝を奉じ、父とともに反清勢力を率いることになった若き英雄の運命は。
「清平(平和時)の姦賊、乱世の英雄」と評された機略縦横の若者は、大動乱前夜の首都洛陽で官途に就いた-。透徹した史眼、雄渾な筆致が浮彫りにする、新しい曹操像と壮大な三国志の世界。
生き残る王子はたった一人。流血が王位継承の伝統であったムガル帝国に東インド会社を尖兵としたイギリスの魔手が迫る。アヘン戦争、明治維新へと続く歴史の前哨戦として、三百年を越えるムガル王朝滅亡のひき金をひいたのは誰か。インドは「我が青春の一部」と語る著者が熱き思いをこめて描く長編歴史小説。
楚材とは「外国で用いられる人材」を意味する。自国を滅ぼした他民族に仕えた父が、わが子に与えた名だった。長じて儒仏の教えと天文を修め、北の草原から押し寄せる圧倒的な力から、人命と文明を守る志を得る。チンギス・ハンに召された時、楚材28歳。遙かサマルカンドへ至る西征に従い、「焼き、殺し、奪い、去る」モンゴル軍の破壊の様を目の当たりにするのだった。独自の歴史観による大ロマン。
日中の溝が拡がる1930年代。美貌の娘・碧雲は神戸の日本人家庭に育てられた。突然舞い込む紙片に記されたメッセージー中国人であることを忘れるな!目に見えぬレールが彼女を故国へと導く。抗日運動の地下組織に身を投じる人々の、激烈な生を描く。
加速する日本軍の大陸侵略、次々と陥落してゆく都市。亡国の危機にさらされた中国を救おうと泥沼の戦場へ向かう同志たち。自分だけにしか出来ない仕事ー碧雲は地下組織からの使命に奔走する。乱世に生きる人間の宿命と愛。壮大なサスペンス・ロマン。
十七世紀、明朝末の中国。すでに朝は政事に節なく、異民族・満撻子の侵入はほしいまま。野には土匪あふれて、うちつづく凶作に貧窮した民心は、朱家明朝を離れた。反官蜂起した義軍十三家。なかに軍律厳しく、民衆救済を至高の軍紀とした魁雄一人、名を李自成・闖王。だが朝廷軍の各個撃破策に、闖王、孤塁を守るも、ついに潼関南原に壊滅的敗北を喫した。三国志に並ぶ壮大なスケールで描く中国歴史巨篇完訳。