著者 : 高森美由紀
22歳の美也子は津軽塗職人の父と、デイトレーダーをしている風変わりな弟との三人暮らし。母は、貧乏暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして出て行った。美也子はスーパーのレジ係の傍ら、家業である津軽塗を手伝っていたが、元来の内向的な性格と極度の人見知りに加え、クレーマーに苛まれてとうとうスーパーを辞める。しばらくの間、充実した無職ライフを謳歌していたが、やがて、津軽塗の世界に本格的に入ることを決めた。五十回ほども塗りと研ぎを繰り返す津軽塗。一人でこつこつと行う手仕事は美也子の性に合っていて、その毎日に張りを与え始める。父のもとで下積みをしながら、美也子は少しずつ腕を上げていき、弟の勧めで、オランダで開催される工芸品展に打って出ることに。青森の津軽塗を通して紡ぐ、父娘の絆と家族の物語。
趣味もなく学校でも進路に迷っていた綾。でも「ひし形屋」で、より子先生に南部菱刺しを教わって、世界が一変した!?-「魔女の菱刺し工房」。母が認知症となり、接し方に悩む香織。より子先生と一緒に無心で刺している中、あるアイディアを思いつく。-「ひょうたん」。長らく引き籠もっていたより子の孫・亮平。より子は静かに亮平を見守っていたが…。-「真麻の聴色」。青森の南部菱刺しをテーマに描く、手芸×再生の四篇。
手芸店・八戸クラフトに勤めて10年の紬は、いろんなことに倦んでいた。仕事、恋愛、人間関係…気にし始めたらキリがないから、すべてに慣れることにした。すべてにフタをしながら生きていけばいいのだ。でも、羊毛フェルト用作業机に残された、タバコの焦げ跡を見つけたとき…30歳、紬の「私を取り戻す」物語。
都会で修業した登磨に片思いする美玖は、アピールポイントが元柔道部の足腰の強さだけというおっちょこちょい(失敗ばかりで解雇の危機も)。さらに、登山口にあるレストランに集う少々変わったお客たちにも翻弄されてー。イケメンシェフ、お手伝いの美少年、そしてへっぽこ従業員・美玖がお届けする極旨&やみつき確実の、心もとろける感動小説。
「ペットシッターちいさなあしあと」は岩手県盛岡市にある、ペットの看取りを行なう会社だ。社長の陽太(25歳)はにおいで生き物の死期が分かる。社員には動物の言葉が分かる薫(26歳)、動物に深い愛情と敬意を抱く柚子川(31歳)がいる。ある秋の日。海外から帰国した父親と久しぶりに対面した陽太は、彼から漂うそのにおいに気付いた…。「死」を通じて明らかになる、それぞれの人生。粗末にしてかまわない「生」などひとつもないことが静かに語られる、切なくも温かい命の物語。
生きものの言葉がわかる薫(25歳)の再就職先はペットシッター「ちいさなあしあと」。主な仕事はペットの看取りだ。イヌ、ネコ、ウサギ…彼らの最期に立ち合い、見送り、その想いを飼い主に伝える。逝くものと残されるものとの心ふるえる物語。
盛岡市北上川沿いにある小さなアパート花木荘。そこに住む人々は少し不器用な人間ばかり。心の隙間を買い物で埋めるOL、時計修理に没頭し、うまく人間関係を築けない青年、高いプライドが邪魔をして、客と喧嘩する美容師。そんな彼らが管理人のトミと触れ合う中で少しずつ心が開いていく…。ちょっと泣けて、ちょっと癒やされるハートウォーミングストーリー。2017年ノベル大賞大賞受賞作!
みさと町立図書館分館に勤める遥は、33歳独身の実家暮らし。遥が持参する父お手製の弁当に、岡部主査はいつも手を伸ばし、くすねていく。人事異動でやってきた彼は、図書整理もできないネットサーファー(死語)で砂糖中毒だ。本の貸借トラブル&クレーム対処をはじめ、家庭内の愚痴聞きや遺失物捜索など色々ある“図書館業務”は、ままならないことが多い。でも小さな町の図書館分館では、訪れる人たちの生活が感じられる。理解もできる。だから、ここではちょっと優しくなれるのだ。いなかの図書館を舞台に描かれる、小さな町のハートフル・ストーリー。
小学2年生の眞子の夢は、一緒に住んでいるひいばあちゃんと、手紙交換をすることだった。毎日、手紙を書く眞子。けれど何日経っても返事はこなくて…。子どもの頃のキラキラした日々や優しさや強さ。忘れかけていた大事なことを、思い出させてくれる傑作感動長編。
22歳の美也子は津軽塗職人の父と、デイトレーダーをしているオネエの弟との三人暮らし。母は、貧乏暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして出て行った。美也子はスーパーのレジ係の傍ら、家業の津軽塗を手伝っていたが、元来の内向的な性格と極度の人見知りに加え、クレーマーに苛まれてとうとうスーパーを辞める。しばらくの間、充実した無職ライフを謳歌していたが、やがて津軽塗の世界に本格的に入ることを決めた。50回ほども塗りと研ぎを繰り返す津軽塗。一人でこつこつと行う手仕事は美也子の性に合っていて、その毎日に張りを与え始める。父のもとで下積みをしながら、美也子は少しずつ腕を上げていき、弟の勧めで、オランダで開催される工芸品展に打って出ることに。第1回暮らしの小説大賞受賞作!