桃花源奇譚(2)
宋の都・開封で、包希仁は白載星と名のる少年とともに双剣舞の花形芸人の花娘こと陶宝春を暴漢から救った。が、その夜、彼女の祖父・陶老は「陶」ということばを残して遺体とともに忽然と消えた。さらに花娘の双剣の皮鞘に隠されていた紙片には、陶淵明の「桃花源記」が書かれていた。桃の花につつまれた仙境の物語である。白載星は実は今上帝の子で、劉皇后と宦官一派の陰謀で母の李妃は追放され、刺客の殷玉堂から命を狙われていた。桃花源の謎と母を捜す三人の旅がはじまったが…。華麗な筆が舞う武侠冒険の第二弾。
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河上の花都・開封。春3月の空に客を引く大道芸一座の声が響いていた。「さあさ、都で今、評判の、舞剣の花娘の双剣だ。こんな見物は、めったに見られぬ。ご用とお急ぎでない方はとくとごろうじろ…」。緑の毛氈の中央に立つのは、ひとりの少女だった。風を切り、左右交差する真剣の刃。固唾をのんで見守る観衆のなかから紋身の酔漢が襲ってきた。そのとき、正体不明の白面郎と白載星と名乗る若者が、彼女を救った。数奇な運命の糸が回わりはじめる、これが第一歩であった。新星・井上祐美子が放つ新シリーズ巨篇。 1992/06/01 発売
桃花源にまつわる謎と今上帝の世継ぎにあたる白載星の命を狙う劉妃一派の包囲によって、六和塔の頂きの決闘の果てに銭塘江に落下した載星と刺客の殷玉堂は、蘇州の運河を漂っているところを范仲淹に救われた。彼は進士出身の官僚で、載星が捜し求める生母のことを知っていた。その母から向けられた目付役の落第挙人、包希仁や陶宝春という旅芸人と載星の周りには奇縁で結ばれた人物が多すぎる。敵である己が、この男と行を共にする不思議さを玉堂は思った。長江流域を舞台に波瀾万丈の大ロマン、いよいよ佳境に入る第三弾。 1995/03/31 発売