桃花源奇譚(4)
「これが-桃花源か」白戴星は息を呑んだ。人の背丈よりも少し高いぐらいの木が幾本も幾本も、見渡すかぎり植わっていた。「桃」。ただ、その木には花も葉もなく、枯れた枝がむなしく空に突き出ているばかり。土地は、乾ききってひびもはしっている…今上帝の世継ぎ白戴星をつけ狙う殷玉堂、東京の双剣舞の芸人・陶宝春、落第挙人の包希仁たちの運命と彼らを追跡する劉皇后と宦官雷允恭一派の謀略をのせて、伝説の理想郷を前に彼らが目にしたものは。第一作より三年の歳月を経て遂に大団円を迎える井上祐美子の決定版。
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桃花源奇譚桃花源奇譚
河上の花都・開封。春3月の空に客を引く大道芸一座の声が響いていた。「さあさ、都で今、評判の、舞剣の花娘の双剣だ。こんな見物は、めったに見られぬ。ご用とお急ぎでない方はとくとごろうじろ…」。緑の毛氈の中央に立つのは、ひとりの少女だった。風を切り、左右交差する真剣の刃。固唾をのんで見守る観衆のなかから紋身の酔漢が襲ってきた。そのとき、正体不明の白面郎と白載星と名乗る若者が、彼女を救った。数奇な運命の糸が回わりはじめる、これが第一歩であった。新星・井上祐美子が放つ新シリーズ巨篇。 1992/06/01 発売
桃花源奇譚(2)桃花源奇譚(2)
宋の都・開封で、包希仁は白載星と名のる少年とともに双剣舞の花形芸人の花娘こと陶宝春を暴漢から救った。が、その夜、彼女の祖父・陶老は「陶」ということばを残して遺体とともに忽然と消えた。さらに花娘の双剣の皮鞘に隠されていた紙片には、陶淵明の「桃花源記」が書かれていた。桃の花につつまれた仙境の物語である。白載星は実は今上帝の子で、劉皇后と宦官一派の陰謀で母の李妃は追放され、刺客の殷玉堂から命を狙われていた。桃花源の謎と母を捜す三人の旅がはじまったが…。華麗な筆が舞う武侠冒険の第二弾。 1993/06/30 発売