岩見重太郎(5)
天下に威容を誇った大坂城の天守閣は、絢爛たる火焔の衣裳をまとって灼熱の光輝を氾濫させている。「お城は最後が一番美しい。これぞ、滅びの美学というものでありましょう」茶々はうっとりと微笑んだ。-ぶすぶすと余燼のくすぶる広大な焼跡に、無数の鴉が群れ、焼けただれた死肉をついばんでいる光景は、不気味な静謐ともいうべき地獄絵だった。
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慶長5年、美濃大垣城、三層総塗りの壮麗な天守閣の奥座敷に、3人の武将が絵図面をひろげ談合していた。「決戦場は関ケ原になろうな」とけわしい面付きで低くつぶやいたのは石田三成であった。その関ケ原に日本六十余州の大名が持てる軍勢凡てを結集した天下わけ目の大決戦、豊臣・徳川の戦いが始まったのだ。絢爛豪華な水滸伝である。 1993/03/15 発売
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