出版社 : 幻冬舎
京都日野にある某寺の、長年、開かずの扉と言われた土蔵から古文書、伝鴨長明作「方丈平家物語」が発見された。繙いてみれば、どうやら鴨長明による自伝のようである。長明が、ツイていないが無常観一色でもない小さな彩りの日々、運命の残酷に翻弄される自らの人生と、平家一族の栄枯盛衰、源氏の台頭といった同時代を重ね合わせ、起こったこと、見たことをつぶさに記録している。まさに記録する男・鴨長明の面目躍如を果たしたこの書は、本物か、それとも偽書かー。「女囚さそり」「誘拐報道」「花いちもんめ」「プライド」「日本独立」など数々の名作を世に送り出した日本映画の鬼才による、精緻で濃密な書き下ろし傑作歴史小説。
カメラがフィルムに焼き付けるように、人生には時が止まって脳裏に刻まれる瞬間がある。生きていくなかでの不自由さと、生きているからこその素晴らしさ。愛あるがゆえの別れと、愛がもたらす美しさ。家族を持たない孤独なカメラマンの人生を紡ぐ物語。
44歳おじさんズ、夢の舞台に立つ。田中の急速な上達ぶりに刺激され、かつての闘志を取り戻した中井。超攻撃的テニスで全日本と世界を目指す2人の、熱き戦いが始まる!!凸凹ペアが繰り広げる長編テニス小説、ダブルス編。
月曜日、鈴木俊平は『酒肴・花里』に足が向く。浜松名物、モチモチとした食感がたまらないもちがつおの刺身、上品な鱚の天ぷら、浜名湖の鱧は湯引きして梅肉で、鰻は秘伝のタレを使ったかば焼きと白焼きのハーフ&ハーフでいただきます。花店経営者と『酒肴・花里』の仲間が繰り広げる美味しすぎるご当地グルメ小説。
十七歳を迎えた天堂尊は、母親から五歳の頃に“神隠し”に遭った双子の兄の存在を告げられる。夏休みの間、友人の陽太とともに伊勢にある伯母の家で過ごすことになった尊は、伊勢神宮の神々しさに触れるうちに、忘れていた兄の存在を感じ始めるー。
生まれつきの知的障がいを抱えながらも天才陶芸家と称され才能を発揮する19歳の兄・優が、美人女子大生の由利香に恋をした。家族や周囲の人の応援も得て、優は由利香のために世界で一つだけのマグカップを作ることになるが…。知的障がいを持つ兄のあまりに純粋な初恋を妹の目線から瑞々しい感性で描ききる珠玉の物語。
「私ら親子はここしか行くとこがあらへん」わけありのシニア3人が静かに暮らすシェアハウスに、ある日幼子を連れた若い母親が転がり込んできた。にわかに騒がしくなる日々のなかで、それぞれが心に抱える過去と少しずつ向き合っていくー。わけありシニアとわけあり母子、心温まるシェアハウス物語。
長年の夢だった弁護士事務所にかかってきた一本の不審な電話。丹前は、相手が奈良地検時代に起訴した殺人犯だと気づくも、彼は山中で恋人とともに遺体となって見つかった。他殺を疑い捜査に協力する丹前だが、調べが進むにつれ過去の事件の思わぬ真相が暴かれていきー。『真相ーヤメ検が暴く』ほか、『詐病ーさかな』『十指紋』『うそ発見器』の短編3作を収録。
夏の盛り、首都圏で不可解な遺体が次々と発見された。その遺体の共通点は、若者・歯がない・死因は心臓発作、というものだった。警視庁は捜査を進めるうち、被害者の部屋のくず入れに高頻度で、あるコンビニが販売しているデザートの包みが捨ててあることを突き止めたが…果たして、この事件は病気なのか、事故なのか。それとも殺人なのかー。
自称詩人のイサオは、放浪途中に訪れたポーランドの森の中である悩みを抱えた若い女性・エミリアと出会う。己とは何か、自分は何をするために今を生きているのか、これから何をすべきなのか…。宗教から社会・政治、心理学に至るまで、真正面から哲学的に語り合う二人の物語。新感覚の社会派“対談”小説。
とある国の政府転覆を命じられた機密工作員。潜入捜査の最中に、彼の過去にまつわる意外な事実が発覚する。ショックを隠し切れない彼は、このミッションを最後に工作員の引退を決意。過去を消し去り、永住地として南の島で暮らそうとしていた彼を待ち受けていたこととは…。運命に翻弄される一人のスパイの生き様と、彼を取り巻く人間愛、自然愛のすばらしさを鮮やかに描き出す。
キジル王に嫁ぐはずだった、青の王家の姫ぎみダリヤが殺されたー。村の踊り子ミランは、流浪の策士ユーシュンに拾われダリヤの身代わりとして西進の旅に出ることに。道中、持ち前の度胸とバイタリティで世直しを重ねるミラン。そんな彼女を飄々とあしらうユーシュンだが、実は密かな計略をめぐらせていて…。
大手電子機器メーカーの下請で基盤を製作する小松電子工業。「3年後の売上高2倍、営業利益5倍」という途方もない目標を言い渡された現場は、いかにして命題に立ち向かうのか。数多の生産性改善の現場に携わった著者が、すべての企業の未来へ捧ぐ物語。ブレークスルーVE、JITの可能性を探るビジネス・ドキュメント小説。
美貌の女性と大学時代の親友の不可解な結婚の謎に迫る、優雅で奇妙なミステリー。学生時代のマドンナが連れ立っていたのは、かつて彼女に、フィアンセ殺害の容疑をかけられた男だったー。表題作を含む6作品を収録した短編小説集。
魔王ラルス・ジーモンが支配する大国ランゴバルト。西方13ヵ国を残し、東方のすべての国々が魔王により征服され、由緒ある王族の血はことごとく途絶えた。残った諸国は結束、いつ訪れるともしれない侵略の恐怖を日常とし、抗戦に備える日々が続いていた。異国の王女との遭遇、正体の知れぬ敵の姿、決して明かされてはならないタブー…壮大な冒険物語の始まりを言祝ぐ、記念碑的なエピソード・ワン。