出版社 : 群像社
寒い寒いロシアの冬に人々の体を芯から温めてくれるのは作家たちが腕によりをかけて作ってくれたクリスマスの物語。幻想的な気配のなかにも人の心を映しだすものがあって、そしていつも幸せが訪れる、そんなクリスマス・シーズンの出来事を語っているとっておきの話を集めて、日本の寒い冬に贈ります。
日々回転しつづけるわたしたちのこの世界はフンコロガシに押されていく糞の玉だ。その中で他人の生き血を吸うことに明け暮れる蚊=ビジネスマンが飛び回り、闇の中で光の意味について蛾=若者が語り合い、いつか陽の目を見ようと単調な穴掘り仕事をつづける蝉の子=労働者が這いずっている。人生は虫の生活に似ているなどと思ってはいけない。宇宙に行き交うものすべてが変態を続ける虫の自我の現れなのだからーカフカの『変身』で始まった二十世紀の文化を締めくくる小さく深い虫物語。
バイカル湖から流れくるアンガラ河のほとり、マチョーラ村がダムに沈む。着々とすすむ故郷の焼却処分にあらがい、滅びゆく村と運命を分かち合う老婆たち。環境保護運動にも力をそそぐ作家がシベリヤの大地に生きる農民の姿に未来への希望を託した渾身の力作。
戦争と革命の世紀の口火をきったヨーロッパ大戦とロシア革命。ウクライナの古都キエフにはいずれの勝者になることもなく市街戦を闘った市民義勇軍がいた。20世紀文学に不朽の名をとどめるブルガーコフの世界を凝縮した処女長編。
彼女の名はオリガ、彼の名はセリョージャ。2人は知りあい、愛し合い、結婚した。2人の間には娘イリンカ。彼は42歳、心臓発作で死亡。彼女に残されたのは娘と姑と、彼の記憶。彼と彼女とふたりの人生。そして彼女に「もうひとつの人生」。
現代のキリストたる破門神学生アヴジイ・カリストラートフの麻薬採集秘密組織潜入、広大なカザフの原野に展開する狂気のような野獣狩り、追われる母狼アクバラの子を思う哀切な咆哮!いま辺境の文学が世界の読書界を席捲しつつある!停滞し腐蝕するソ連社会に挑む雄渾な文学!