1995年11月30日発売
機械生命メカの執拗な攻撃を受け宇宙船アルゴに乗り組んだ人類は銀河系の真の中心ーイーターと呼ばれる巨大なブラックホールへと追いやられていた。だがまさにそのとき、星がひとつ、イーターにより引き裂かれた。その想像を絶するエネルギーは、開闢モメントを引き起こす。脱出への一縷の望みをたくし、宇宙船アルゴはブラックホールを包むエルゴ空間へ、荒れ狂う深淵へと突入していったが…待望のシリーズ最新作。
月の裏側で発見された謎の建造物の調査に赴いた一行が、現地でことごとく無残な死を遂げた。それは異星から来た無数の微小なロボットーナノマシンの仕業だった。あらゆる物質を原子レベルで解体してしまうこの機械が、もし地球に侵入したら。ただちに最高の頭脳を持つ科学者が月に召集され、厳重に隔離された研究所で必死の調査を開始するが…人類が直面した新たな脅威を迫真の筆致で描く、戦慄のSFサスペンス。
ドラゴンと騎士の住む異世界にジムが暮らして、はや1年。恋人アンジーと結婚し一城の主として落ち着いたのもつかのま、ある朝目覚めるとドラゴンに変身しているではないか。あわてたジムは、変身術をマスターしようと魔法使いキャロリナスに弟子入りした。そんなとき、フランスとの戦争でイングランドの王子が捕虜になったという知らせ。王子を救出するために、ジムはかつて冒険を共にした仲間とフランスに旅立った。
フランス王に入れ知恵してイングランド王子を捕らえた黒幕ーそれは、キャロリナスの旧友にして悪の道に走った魔法使い、マルヴィンだった。ドラゴンやら湖の精霊やらの妨害もなんのその、一路王子が捕らえられているマルヴィンの城に向かったジム一行。覚えたてのジムの魔法でなんとか王子を救出したものの、その先には、またしてもマルヴィンの恐るべき罠が…。巨匠が16年ぶりに放つ『ドラゴンになった青年』の続篇。
1939年、フランス東部のナンシーで、ジャンヌは軍人のルイと結婚した。だが幸せも束の間、わずか二カ月の新婚生活ののち夫は第二次大戦に出兵してしまう。やがて戦争が終り、帰還した夫とともに異全の地ベルリンで新たな生活に入り、三人の子供に恵まれる。だが平和な愛の暮らしも、またもや夫のインドシナ赴任によって壊され、ひとり取り残された彼女は、情熱的なドイツ人青年との官能的な恋に身を焦がすのだった…。
『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』をはじめ、多くの傑作を残した“ミステリの女王”アガサ・クリスティー。彼女は1890年、英国の海辺の避暑地トーキイで生まれた。空想好きで内気な娘だったアガサはどのように愛に目覚め、電撃的な結婚をしたのか。夫と共にでかけた世界一周貧乏旅行のてんまつ、不滅の名探偵ポアロはいかにして生まれたかー数々のエピソードを盛り込み、作家自ら語る知られざる実像。
『アクロイド殺し』の斬新なトリックは、ミステリ界に大論争を巻き起こした。だがその直後、アガサは突然失踪する。売名行為と非難されたこのスキャンダルの真相は。世界的ベストセラー作家があえて別名義で普通小説を書いた真意は。クリスティーが読者と家族のために仕組んだ最後の企みとは。いくつもの栄誉を受けながら、あくまでもひとりの女性として愛に生きた波乱の生涯を初めて明かした傑作自伝。
警備会社に勤めるジャック・デヴリンは、社長から重大な仕事を託された。友人の息子がハワイで不審な死を遂げたので、調べてほしいというのだ。死亡した男は、ヴェトナム戦争の英雄で、デヴリンは戦地で彼に助けてもらった恩があった。デヴリンは悪辣な敵が待ち受けるハワイに向かうが…ハワイの街と熱帯雨林に展開する壮絶な闘い。迫真のアクション巨篇。
本書はパリでも二カ月前に上梓されたばかりの、待望の長篇第四作。実に四年ぶりの書き下ろし小説となるが、『悪童日記』三部作とはまた違った独自のスタイルで、自らの亡命体験をもとにした「不可能な愛の物語」を描いている。
行政エリート職の司政官を描き惑星世界そのものを描くライフワーク最終巻。急速に進行する深刻なインフレ、原住種族プバオヌの自主権の承認、惑星上のあちこちで起こる争乱タトラデンの植民者たちは司政官キタの施策を時代錯誤と非難しはじめる。無能の司政官呼ばわり、結構だ、とキタは思う。愚直なまでに司政原則を遵守する司政官を演じつつタトラデンを相剋の世界に持ってきているのだから、そんなことははじめから覚悟の上だった。目的を達成するため、司政官は私情を殺して職務を遂行する。
アラビア半島の北部に広がる不毛の岩石砂漠地帯、シリア砂漠の一角。しんと静まり返った夜の中に、突如閃光が膨れあがった。一瞬にして、巨大な火球が現出する。熱波と衝撃波が地上を襲い、轟音と共に爆風が、建造物と砂礫とを舞い上げる-CNNが伝える画面に「我らの大統領は、必ず、イスラエルとアメリカに復讐するだろう」「聖戦」の巨大なシュプレヒコールが谺した。香港啓徳空港では、火性の聖獣朱雀が黄龍こと工藤秋生がイスラエル航空に搭乗したことを突きとめた。空前のスケールで贈る人気シリーズの完結篇。
X-ファイル完全PHOTO STORYシリーズ第1弾。現代科学では解明不可能な事件がこの世には確かに存在する。アメリカ連邦捜査局FBIに極秘に保管されている未解決事件のファイル…人はそれを『X-ファイル』と呼ぶ。
建築家である夫、巌と二人の息子、邑人と都夢と暮らす未央子は四十六歳。家族の危機に、未央子の年齢の危機が重なり、行き場を失くしつつある時、ホームステイの少年を迎えることになる。オーストラリアからやってきた十六歳の少年、エマニュエル・Kは、未央子にとって瞬時に魂の奥底まで理解しあえるような、不思議な心のつながりを感じる存在であった。南十字星から贈られたこの少年は、やがて静かな波紋となって、家族を予期せぬ方向へ導いていく…。
癌で余命いくばくもない往年のTVスター、フィンキー・リンキー。その彼の前に“死”そのものが現われ、死者を蘇らせる奇怪な力を授けてゆく…いっぽう世界的な女優だったアーレンは、ひょんなことから巡り会った一人の戦場カメラマンに真摯な恋心を抱くようになるのだが…ふたつの物語が交錯するとき、明らかにされる衝撃の真実とは。死という永遠のテーマに挑む鬼才、愛と死の錬金術師キャロルがおくる感動の最新傑作長編。
精緻きわまりない究極の「私小説」は、父の遺骨探しの旅から始まる。過去・現在・未来が相互嵌入式に複雑に重なり合いながら言語は歴史をはらみ、アカシアの葉がそよぐとき、小説が生まれる。本書は、作家としての自分の「起源」にさかのぼる、クロード・シモン版『感情教育』。