1995年3月発売
桃花源奇譚(3)桃花源奇譚(3)
桃花源にまつわる謎と今上帝の世継ぎにあたる白載星の命を狙う劉妃一派の包囲によって、六和塔の頂きの決闘の果てに銭塘江に落下した載星と刺客の殷玉堂は、蘇州の運河を漂っているところを范仲淹に救われた。彼は進士出身の官僚で、載星が捜し求める生母のことを知っていた。その母から向けられた目付役の落第挙人、包希仁や陶宝春という旅芸人と載星の周りには奇縁で結ばれた人物が多すぎる。敵である己が、この男と行を共にする不思議さを玉堂は思った。長江流域を舞台に波瀾万丈の大ロマン、いよいよ佳境に入る第三弾。
クジラの歌クジラの歌
ザトウクジラたちは、緑の光の記憶に包まれて生まれ、やがて「光のわだつみ」へと召されてゆく…。のちに群れの長となるザトウクジラのフルナが回想する若き日々。母親の巨体の陰に守られて育った赤ん坊のころ。幼なじみのローテと遊んだ記憶。畏怖に満ちた父親との対面。そして、長老から聞かされた神秘の物語…。やがてフルナにも、成年期の〈孤独な巡航〉に旅だつ日がやってきた。途途であう仲間たちは、イルカ、カモメ、アホウドリ、ラッコ。だが、人間だけは…。詩人としても有名な著者が、哀調を帯びた鳴き声で〈歌うクジラ〉として知られるザトウクジラを主人公に据えて、ファンタスティックにつづる、海の民たちと大自然への賛歌。
騎馬の公子騎馬の公子
たった一人の妖術師の騙し討ちにあい、一族を滅ぼされたアルドリック。生れ育った城も妖術師の手におち、執拗に命を狙われる。だが隠遁した大魔術師に救われて、彼は復讐を誓った。国家間の覇権争いの背後で蠢く企みとは。彼の行く手を阻むのは、五百年の時を越えて甦える今一人の妖術師、次々と繰り出される異形の化物、むくむくと身を起こす死人たち…剣術と魔術の大合戦。