1995年6月25日発売
羊飼いに学校はいらない、すべては自然が教えてくれる-太古からの牧畜世界サルデーニャ島。厳格な主人でもある父との葛藤をへて少年は成長をとげる。ある自伝のこころみ。
昭和二十年、八月十五日。南の海で敵を待つ日本軍の潜水艦を、てっきりメスと勘違いしたモテない雄クジラ。しきりにつきまとううちに、アメリカ軍に包囲され、クジラは爆雷の攻撃から“恋人”を守ろうとするが…。表題作ほか二篇、戦争の中で、誰かを愛し、誰かに愛され、死んでいった人と動物たちの絵物語。
人妻やヌードモデルとの逢瀬を重ね、その情事をクールに観察し、小説を書きつづける流行作家・三田村倶治。そんな三田村を溺れさせるほどの人妻・坂崎彩子が突然、殺害された。彩子の死に様は、扇情的で怪異な姿であった。しかも殺害場所は、三田村と彩子の密会場所、面影坂ホテル…。ホテル従業員の証言から警察にマークされた三田村は、自らの疑惑を晴らすべく、事件解明に乗り出す。だが、彩子に潜む戦慄の過去と血脈が、三田村を追いつめる。男と女の狭間に蠢く欲望を大胆に活写。著者会心のロマンミステリー、書下ろしで登場。
美貌のOL純子は21歳のとき、20歳年上の日本画九鬼と出会い、初めて性の歓びを知った。やがて若い純子は九鬼と別れ、家庭をもち共稼ぎ主婦となるが、会社の周囲から信頼され、管理職として活躍する。しかし人生の充実感が感じられず、その不満から途絶えた九鬼との関係が復活する。そして以前にも増して深い性の充足を覚える。だが純子の好色はプロ野球選手、取引先のエリート社員などと交渉を持つが、いずれも満足できず、また九鬼のもとに帰って行く。純子の25年におよぶ半生の性と愛との真実の姿を描く。
夏の暑い日、女子大生の鈴木かおるは、アパートの隣室に無断で入り込んでいた女を殺してしまった。かおるは遺体を処分。完全犯罪を心に誓う。一方、同じく夏の暑い日、サイコ・セラピストの須山久美子は、「わたし、人を殺してしまったんです」という若い女性からの電話を受けた。後日、久美子を指名して、大学生のクライアント、小柳陶子がやって来た。陶子は、「兄を轢き殺した男への殺意が抑えきれない」と言う。久美子のまわりで、暑い夏は次第に複雑な様相を帯びていく。謎めいたクライアント、無言電話、女子大生の自殺、女性のバラバラ死体…。七本の糸が一本に結び合わされるとき、驚愕のドラマが始まる。