1998年8月5日発売
男女はいかにして切り裂かれ、「雌雄同体の一個の生物の亡骸」となって密室に残されたのか?一本の「懐中電灯」が、完全犯罪を崩壊させる陥穽となったのはなぜか?選び抜かれた八つの作品が、本格ミステリの形式に鋭角の亀裂を走らせる!本格推理の嫡子、法月綸太郎の新世紀を予感させる、傑作第二短編集。
時は維新の騒擾未だ収まらぬ明詞七年、帝都東京で不可解なる事件が発生した。雪に囲まれた武家屋敷で、留学帰りの青年軍人が刺し殺されたのだ。その友人で公家の三男坊、九条惟親は行きがかり上、事件の解決を依頼された。調査を開始する九条のまえに、謎はより深淵なる様相を明らかにする。犯行は如何にしてなされたのか?そして、秘密裏に行われた奇妙なる宗教儀礼は何を意味するのか?困惑する九条は、変わり者の友人、朱芳慶尚に助言を求めるが…。
かつて「悪魔」と恐れられた、街金融の若き経営者・野田秋人のまわりで、関係者が惨殺されていく。「金」の世界は、人を死に追いやることすらある修羅場だ。怨みが渦巻き、一瞬の隙が己を破滅に導く。常軌を逸した猟奇殺人は、果たして野田への復讐なのか?街金融の現場を生きた著者が渾身の筆致で描く問題作。第7回メフィスト賞受賞作。
探偵小説の愛好家グループの中心人物・伍黄零無が奇妙な言葉を残し密室から消えた。メンバーの仁行寺馬美が書くモデル小説通り、仲間達もまた密室で殺される。死者を愚弄するような装飾と暗号。目眩く推理合戦。すべてを裏切って全宇宙を揺るがす真相。新本格の原点『匣の中の失楽』への、罠に満ちたオマージュ。
小心・真面目なサラリーマン古田は、近く退社するという部下の女子社員と一世一代の不倫を計画していた。だが、その当日、妻が会社に来る。娘が妻子ある男と同棲を始めようとしていたのだ。「遊びか、真剣か」とつめよる古田に男は「遊びだ」とうそぶく。不倫をテーマに、微妙な人間心理と家族のあり方を描く。