1998年9月30日発売
死が村を蹂躙し幾重にも悲劇をもたらすだろう-人口千三百余、三方を山に囲まれ樅を育てて生きてきた外場村。猛暑に見舞われたある夏、村人たちが謎の死をとげていく。増え続ける死者は、未知の疫病によるものなのか、それとも、ある一家が越してきたからなのか。
広大な邸宅に独居する老いたイギリス人公爵。彼は突然何かに駆り立てられて、敷地内の地下に巨大なトンネルを掘り巡らせた。老いに怯える公爵は、トンネルを徘徊し、幼い頃親に手を引かれ海辺で見た光景の謎に、やがて突き当たる…。十九世紀に実在した公爵をモデルに、精緻な調査力と奔放な想像力を駆使した衝撃のデビュー作。ブッカー賞最終候補の処女長編。
スペイン統治下の19世紀カリフォルニア。黒マスクのヒーロー、ゾロは、総督モンテロの圧政に苦しむ民衆を救ってきた。しかし独立前夜、モンテロは積年の怨みをはらすため、牧場主ディエゴ(=ゾロ)を投獄した!20年後、再びカリフォルニアに戻ってきたモンテロに復讐するため、ディエゴは脱獄し、ある若者に剣術を教えこむが…スピルバーグが、21世紀に語り継がれるべきヒーローを見事に甦らせた、話題の映画化作品。
ヴェトナム戦争直後のオレゴン州ポートランド。戦争の後遺症により街は荒みきっていた。凄惨な殺人、暴行、コカインの蔓延。元特殊部隊員のパトロール警官ハンソンは、相棒のベテラン警官とともに、次々と起こる犯罪と闘っていく。戦場の悪夢と孤独にさいなまれながらも、彼は暴力も辞さずに街を守る、一匹の盲目の老犬だけを心の友として…現代ハードボイルドの巨匠ジェイムズ・クラムリーが絶賛した話題の警察小説。
美貌の婦人警官に淡い恋心を抱きつつ、犯罪を取り締まるハンソンはある日、特殊部隊の戦友ドクと再会した。ドクは麻薬に取りつかれその売人となっていたが、彼は友情を保ちつづけていく。だが、ハンソンを目の敵にする刑事が彼の経歴を調べているうちに、ドクとの関係に気づいてしまった。さらにハンソンは、異常な憎悪を燃やす一人の男に命を狙われるようになるが…孤高の警察官の壮絶な姿を描く、魂を揺さぶる巨篇。
判事のデボラの前から姿を消していた男たちが突然帰郷したー彼女の過去に影を落とすアレンと、自分の土地に買収話が出たデボラの兄アダム。思いがけぬ再会にデボラは動揺する。そんなある日、地主であるアレンの叔父が殺害された。さらに数日後、第二の殺人が起き、デボラとその一族は事件の渦中に…意外性と滋味に満ちた、アガサ賞最優秀長篇賞受賞作。
1963年11月。イージー、43歳。美貌の女教師アイダベルから雑種の小犬を預ってくれと頼まれたイージー。愛犬が夫に殺されそうだとの懇願に引き取ってみたものの、いっこうになつかない。しかも勤め先の学校の農園で男の死体が見つかった。そのしゃれのめした格好の男の死体はアイダベルの義兄ローマンだという。そして、小犬を引き取りに来ないアイダベルを自宅に訪ねたイージーを待ち受けていたのは、アイダベルの夫ホランドの死体のみだった。誰が二人の男を殺害したのか?さらにアイダベルはいったいどこへ?J・F・ケネディ暗殺時の60年代のアメリカ黒人社会をリアルに描く、ハードボイルド小説の白眉。
パトリック・チャンスはロンドンの証券会社に勤める営業マン。新しい屋敷は手に入れたし、美しい妻とのあいだに生まれた娘は可愛くてたまらないし、人生は順風満帆…なのではあるが、ここにちょっぴり頭の痛いことがある。営業成績があと一歩で目標額に達しないのだ。この目標さえ達成すれば、10万ポンドという超破格の特別手当てが獲得できるというのに-そこでパトリックが強引に計画したのが、週末のテニス・パーティだった。屋敷に友人たちを招いて優雅にテニスを楽しみつつ、手練手管の限りをつくして金融ファンドを売りつけようというわけだ。かくして、社会階級も金銭感覚も人生の目的もまったく違う四組の男女が、ひとつ屋根の下に集まった。思わぬ危機に青ざめている資産家夫婦、貧窮生活に苦しむ学者とその妻、厚顔不遜な実業家とその娘。しかもそこに思わぬ闖入者まで加わって…いかにも英国的な棘のあるイジワルが炸裂する、ブラックな笑いに満ちた悲劇喜劇。
治承四年(1180)八月、伊豆で目代屋敷を襲い、平家への反撃の狼煙を上げた頼朝は、源氏ゆかりの者や坂東武者を束ね、鎌倉で京の清盛を伐つ準備を着々と整えていた。その頼朝の蜂起を鈍らせていたのは、弟・義経が身を寄せていた奥州の支配者・藤原秀衡の動向。秀衡は頼朝にとって、後方でじっと見つめている羆だった。その間隙をつくように、木曾で義仲が挙兵、入洛!決戦の火蓋が切られた!血で血を洗う源平の戦い!源氏の棟梁の座をめぐる骨肉の争いに、ついに奥州の眠れる羆・秀衡が動きだした…。
旅行先の島根県松江市のホテルで、画壇の巨匠・月原龍生が失踪した。同じころ、出雲大社内で男の肉体の一部が発見される。さらに島根県各地のスサノオを祭る神社から次々と同じ男のバラバラ死体が。鑑識によって死体は月原と判明。だが、ホテルは月原が外出できない特殊な状況に…。何故、ヤマタノオロチの如く月原は解体されたのか?そしてスサノオの意味は?月原の妻・芳乃の調査依頼を受けた探偵・大道寺綸子は、かつて月原をオロチと呼んだ男の存在を知り、真相を追うが…。
余命半年を宣告され、旅に出た石文高士。だが、偶然手に入れることとなった1枚のMOディスクが、何もなく終わるはずだった石文の人生を変えた。ディスクを求め次々に襲いかかる謎の組織“裏警察”。最後の命を闘いにかけた男の逃走劇が始まった!-平凡な人生を送ってきた男が巻き込まれた“非日常”の恐怖を描く表題作「牡牛の渓」。