1999年3月31日発売
川崎涼介は、廃墟となったビルの屋上から転落し、意識を失った。見知らぬ家で目覚めた涼介は自宅へと向かう。だがそこで目にしたのは、自分の葬式だったー。浦和涼介は、帰宅途中に見知らぬ若者の転落事故に遭遇する。惨事に直面し、気を失う涼介。不可解な記憶喪失の、それが始まりであったー。川崎亜季は、まるで亡き兄のように振る舞う見知らぬ少年に困惑していた。だが彼女は知る事になる、自分に迫る危機と、自分を護ろうとする“心”をー。
ジェネヴィーヴは、老人ホーム「ミドルトン・ホール」のケア・アシスタント。彼女の受けもちのひとり、ステラは癌で余命いくばくもない老女である。ある日、ステラ宛てに彼女名義の家の権利書が届く。ステラはその家の存在を子供にまでひた隠しにしていたのだが、その理由を話すため、ジェネヴィーヴだけに自分の過去をうち明けるようになる。結婚に満足できなかったこと、不倫をしていたことなどなど。そしてその話は必ず秘密の家に収斂していく。その家でいったい何があったのか?ジェネヴィーヴは、やがて恐ろしい疑念に捕らわれていく…。
遙か深宇宙で進化した生命体グレックスーエンギという名の幼仔が冒険を求めて行方をくらました時、群れは大騒ぎとなった。ただちに2体の斥候が選ばれ、その跡を追った。だが怖るべき捕食生物「大食らい」もまた、その仔を狙っていたのだ。やがて未熟なエンギは、とある恒星の磁力流に捕えられ、地球という名の惑星に…感動の表題作ほか、ネビュラ賞受賞作「ラセンウジバエ解決法」など、全10篇を収録した傑作短篇集。
久しぶりに再会した昔の恋人ロビンの話を聞き、医学生のジェレミーは愕然とした。最近死亡した国防長官は実は彼女の父親で、死因に不審な点があるので検屍記録を調べてほしいというのだ。調査の結果、伝説の科学者が開設した最先端の遺伝子研究所が浮かび上がる。やがてジェレミーとロビンは何者かの襲撃を受けた。真相を究明すべく彼は研究所に潜入するが、そこでは驚くべき陰謀が…壮大なスケールの遺伝子サスペンス。
1699年、エジプト。カイロの街に住む風来坊の薬剤師ポンセは、路上で美しい女性と出会う。彼女はフランス領事の一人娘アリックス。互いに魅かれあう二人だが、あまりにも身分違いの恋だった…当時の北アフリカは、強大なオスマン・トルコ帝国の率いるイスラム教徒の支配下にあった。太陽王の異名をとるフランス国王ルイ14世は、そんな状況を打破すべく、途方もない計画を企てる。北アフリカ唯一のキリスト教国で、長らくの鎖国のため未知の国となっているアビシニアと同盟を結び、彼の地に楔を打ち込むのだ。だが、アビシニアへの道は遠く険しい。そのうえ強大なトルコや周囲のイスラム教国を刺激するような公式使節は送れない。太陽王の命を受けた領事は名案をひねりだした。カイロに住む民間人を密使として送ればよい。アビシニア皇帝は病に悩んでいると聞く。ならば医学知識を持つ者を送り込もう。かくして、白羽の矢はポンセに立った。アビシニアへの旅を首尾よく終えれば、報償として、アリックスにふさわしい身分を得られるのだ。前途に待ち受けるのは、危険な道中、未知の文化、野心と裏切りのはびこる権謀の都…愛する人への思いを胸に、大いなる旅が、今始まった。二つの大陸をまたいで展開される、波瀾万丈、絢瀾豪華の一大歴史冒険絵巻。ゴンクール賞最優秀処女長篇賞受賞。
言語を速習できる特殊な学習法の普及は、独自の言語を設計する言語デザイナーという職業を生みだすほどの人工言語ブームをまきおこしていた。言語デザイナーの主人公は、奇妙な偶然から、これまでのものとはまったく構造の異なる言語に遭遇する。欠陥品なのか、それとも…?言語理解と人間の認識能力、そしてその未来を描いて第17回「ハヤカワ・SFコンテスト」に入選した表題作「夢の樹が接げたなら」をはじめとして、緻密な世界観に裏づけられた、名品8篇を収録する作品集。
花咲村の惨劇を彷彿とさせる桜吹雪に彩られた殺人劇が、またも朝比奈耕作を襲った。月光に照らされた雪景色の中で眺める満開の夜桜-雪・月・花の三要素が揃ったとき、吉野の山の蔵王堂に惨劇が起こる。不気味な殺人予告状で標的にされたのが、地元の名士・井筒屋義信が誇りとする美しい三人の娘、雪絵・月絵・花絵。闇に響く法螺貝の音とともに、異様な美意識に彩られた連続殺人の幕が切って落とされた。朝比奈耕作、待望の新シリーズ『四季の殺人』第一弾。
大地震と、人の生き血を吸う妖怪たち。十万人を越える死者が出た京都大災害の1年半後には、琵琶湖の湖底からホタルに似た巨大昆虫が人々を襲い、テニアン島が空を飛んで、京都上空に浮かんでいる。いまや町は危機管理委員会の支配下にあった。黒き神々の手先はあらゆる機関に入り込んでいる。未曾有の災厄に立ち向かい、いったん死んだものの、貴船神社の龍神から、命を授かった地質調査技師の木梨香流は恋人の真行寺君之とともに、時空の裂け目にある闇の牢獄に部屋ごと封じ込められていた。大異変が始まった…。
ぐおぉーんと、寂寥たる闇を震わせて、不気味な鐘の響きが山中を貫いた。絶対、鳴らないといわれ、もし鳴るようなことがあれば『この世が終わる』と伝えられた不鳴鐘が突然、大音声で鳴り響いたのだ。鐘堂に駆けつけた天主家の人々の前に、また新たなる悲劇の幕が上がった。着物を着た人間の膝から下の部分が釣り鐘の中からぶら下がっている。庭師の秀夫だった。突然吉原より呼び出された朱雀十五、因縁の地、神岡山の聖地、天主家の館に再度、乗り込むことに…。いよいよ、事件は因習と血塗れの大迷宮に。全ての謎は解かれるのか。『黄泉津比良坂、血祭りの館』完結篇。
中央アフリカのマリ。神秘的な宗教を持つドゴン族の遺跡から,奇妙な化石骨と未知の合金が発掘された。それは、ヒトと似てはいるが、まったく異種の生命体であり、地球外のものである可能性があった。異端の古人類学者ジャック・オースティンは、化石の素性を調べるため、さらに南米ボリビアの地下遺跡へと飛ぶ。彼はそこで現生人類の飛躍的進化の秘密にかかわる壮大な事実を知るが-。