1999年7月31日発売
主人公は1933年生まれ。その容貌から「ウサギ」と呼ばれる彼、ハロルド・アングストロームは、男の本性に忠実な、典型的な中産階級のアメリカ人だった-。『走れウサギ』(1960)からスタートし、『帰ってきたウサギ』(1971)、『金持になったウサギ』(1981)、『さようならウサギ』(1990)と四つの作品で書き継がれた、欲望と悔悟に彩られた「ウサギ」の生涯。20世紀後半の激動の歴史を背景に、執筆期間30余年、5000枚に描かれた人生の真実。本書は、最初で最後の4部作一括刊行となる。井上謙治全訳。
極端な家母長制社会の惑星ストラトス。遺伝子工学の発達により、男性がほとんど排除され、女性のクローンが覇権を握る閉鎖的な惑星上では、短い夏の間、クローン技術によらずに生まれてくる子供たちがいた。そうした変異子の一人として、生まれ故郷から離れていくべく運命づけられた内向的な少女マイアは、快活な双子の妹ライアとともに冒険の旅にでる。だが、二人の行く手には想像を絶する苛酷な運命が待ち受けていた。
マイアとライアがそれぞれ乗りこんだ二隻の船が嵐に遭い、うちライアの船が消息を絶った。一人残されたマイアはさらなる孤独な旅を続けていく。鋳物工場での重労働、仲間の裏切り、そして監禁…。だが、マイアの身に襲いくる試練はそればかりではなかった。鬱々とした独房生活を送るうち、やがてマイアは、宇宙からの「訪問者」をめぐる陰謀の渦中へと巻きこまれていく!巨匠ブリンが雄渾の筆致で綴る感動のSF巨篇。
元俳優の警備員スコット・エリオットは、映画監督ドルリーから、撮影現場の警備の依頼を受けた。再起をかけて、自作のリメイクを撮影中だったドルリーだが、その現場で謎の事故が相次いでいるのだという。彼の才能に嫉妬したものの仕業なのだろうか?エリオットは、犯人探しに乗りだすのだが…1950年代の古き良き時代のアメリカを舞台にした、傑作ハードボイルド。アメリカ私立探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
ユーゴスラヴィア連邦は分裂し、ボスニアでは内戦が勃発した。かつて民族融和の象徴であった首都サラエボは、包囲するセルビア人勢力と、クロアチア人、ムスリム人が鉾を交える最前線と化す。街には砲弾が撃ち込まれ、高台からは狙撃手が無差別に市民を銃撃してくる。そのサラエボの一画にある高層アパートで、腐乱した女性の他殺死体が発見された。だが、現場は戦闘の激しい地区で、警察といえども近づくことが出来ない。戦闘の激化とともに弱体化したサラエボ市警は、すでにその組織の大半が崩壊し、機能を停止しかけていた。だが、刑事部長のロッソ警視はあきらめなかった。そんな状況でも、法と秩序は守られねばならない。部下は動けず、鑑識もなく、写真班もいない。電話もコンピューターも使えない。検死すらも困難だったが、彼は敢然と捜査に赴いた。だが、事件の裏には思いもかけぬ巨大な影がうごめいていた…。常識の通用しない戦場で展開される、捜査と闘いの四日間。かつて内戦下のサラエボに駐在した気鋭ジャーナリストが、その体験を活かして描く、異色の警察小説。
「朕に北顧の憂いなし」-太祖洪武帝にそう言わしめた朱棣(永楽帝)は父の武勇、才気を最も色濃く受け継ぎながら、四男ゆえに燕王として北平(北京)の地にあった。しかし溢れる野心は、彼をその地位に甘んじさせてはおかなかった。朝廷は建国の元勲が次々と粛清され弱体化していた。朱棣は遂に叛旗を翻す。靖難の変の始まりである…。
雪の一夜が二人の義兄弟の運命を変えた。一人はモンゴルの大草原で戦場の勇者に、もう一人は金国の王室で育てられるが…。宋末元初の激動期を描く大河ロマン!武侠小説の金字塔、ついに登場。
ロンドンの下町-カード・プレイの天才エディ、腕力で鳴らすベーコン、切れ者トム、潔癖症のソープの4人組。エディは、ポルノ界の帝王として知られるギャングのハチェット・ハリーとのカードの大勝負で、50万ポンドの借金を作ってしまう。借金返済の猶予は1週間。一攫千金を狙う4人は、麻薬の売人ドラッグ一味がマリファナ工場から奪ったドラッグと金を横取りしようとするが…。果たして、最後に笑うのは誰か?二転三転また逆転、UK発ジェットスクリュー・クライム・ストーリー。
美しいボアルネ城を相続したヨーラに祖母が縁談をもちだした。相手は、遠縁のモントルー侯爵で幼い頃、ボアルネ伯爵家に引きとられ父に次代の主と期待されていた。パリ社交界で浮き名を流す侯爵を快く思わず、愛ある結婚を願うヨーラは彼の真の姿を見極めようと思案する。そして、亡父の愛人だった女性の紹介で花柳界の女を装ってパリへ向かった。美貌と知性を備えたヨーラに出会った侯爵は、激しく惹かれてしまう。それでも、ボアルネ伯爵令嬢との結婚を考え、ヨーラを愛人にしようとする。二人は同一人物とも知らずに…。