2001年5月発売
日本の天才科学者と彼が培養に成功した石油生成バクテリアをめぐって、掠奪・爆破・拉致・殺害の指令が乱れ飛ぶ!やがて戦慄すべきバクテリアの真の姿が明らかに…。科学者である前に人間としてどう生きるべきか-読む者の胸を熱くするヒューマン・エンターテインメント。「サントリーミステリー大賞・読者賞」ダブル受賞作家がおくる21世紀の知的冒険小説第1弾。
同じころ鎖国状態が解かれた日本と中国。アジア進出をねらうヨーロッパに対抗し、朝鮮をめぐる「日清戦争」は運命的な戦いであった。伊藤博文、陸奥宗光、井上馨、李鴻章、袁世凱…深謀巧詐が脈うつ傑作歴史長編小説。
合衆国大統領トルーマンの私信には、原爆投下の真相が!?偶然「手紙」を手に入れた元新聞記者・峰先は、かつての恋人とともに、諜報戦の渦中に…。サントリーミステリー大賞作家、渾身のサスペンス。
窃盗で捕まり、ノイローゼに悩む少年、無知のまま売春に走り妊娠した少女。家庭の愛を断たれ、犯罪をおかし、心も身体も傷ついた未成年者を収容する場所「医療少年院」。青少年による凶悪犯罪の多発で注目されるが、現在取材は許されないその施設を調査していた著者が、それをもとに描いた作品。院内で働き、少年たちの更生に尽くすひとりの看護婦の目を通して描く、職員と少年たちの愛のドラマ。
生まれ育った生家へ子どもの頃のままで帰りたいー戦時中、家の下に穴を掘り続けた退役軍人の父が、その後も無器用に居据っていたあの生家へ。世間になじめず、生きていることさえ恥ずかしく思う屈託した男が、生家に呪縛されながら居場所を求めて放浪した青春の日々を、シュールレアリスム的な夢のイメージを交えながら回想する連作11篇。
「蕭々館」で夜ごとくりひろげられる、最後の「高等遊民」たちの幸福なひととき。芥川龍之介、菊池寛、小島政二郎-「大正」という時代に、青春を共にした三人の作家を描きながら、立ち去ろうとする一つの時代への思いを綴る傑作長篇。
伝奇ホラー作家、朝松健を襲った奇怪な災厄。失踪した編集者、那須蔵人の手記が、忌まわしい世界への扉を開く。突然目の前に現われ、不可解な警告を発する黒衣の男たち。その正体は?その目的は?著者自らが封印した暗黒の書が、大幅な加筆と、牧野修の解説を得て、13年ぶりに闇底からよみがえる。
父を知らず、調教師の祖父に育てられ、新人騎手として修業を積む高志。馬の故障を次々と癒し、周囲を驚かせる正体不明の厩務員の過去に、彼は疑惑を抱くが…。競馬、競輪、競艇、オートレース。ファンの夢と期待を背に一瞬の勝負に挑むプロフェッショナルたち。彼らの潔くも厳しい世界を圧倒的な迫力で描く物語。
邦銀ニューヨーク支店の花形ディーラーが高層ホテルから身を投げた。その死の直前「N.U.H.」というメッセージを受け取った旧友、芹沢は、真相を探るうち、ウォール街で辣腕を振るうトップセールスウーマン、州波に出会う。「あんな銀行なんかつぶれればいい」。彼女は邦銀に深い恨みを抱いていた。日本金融界の闇を抉る問題作。
山一証券の自主廃業など相次ぐ金融破綻に、効果的な経済政策を打ち出せない政府、プライドだけの大蔵官僚、不良債権隠しに走る銀行。恋人の死の真相に迫るべく奔走する州波は、そのキャリアと私財の全てをなげうって、芹沢とともに驚くべき秘策を実行する。すべての金融マンに捧げる著者渾身のミステリー。
10歳の少女マルティーナをはじめとする4人の子どもたちは、年上の少年ミルコに誘われて、打ち捨てられた倉庫に集まった。そこで彼らが見たものは、数冊のポルノ雑誌とそれを見ながら股間に手を伸ばすミルコの姿。はっきりとはわからないながらも、マルティーナは太もものあいだに不思議なおののきを感じる。そして彼らの秘密の遊びがはじまった。少しこわくて、だけどすてきな遊び。おとなの目の届かないその場所で、お菓子を持ち寄り、裸で寝そべって、ときに雑誌の真似事をした。だが、その真似事は、歯止めのないまま次第にエスカレートし、ついには恐ろしい出来事が…。弱冠27歳の若手女性作家がみずみずしい感性で描きイタリア文学界を震撼させた、衝撃の問題作。
夢と野望を胸に渡った満洲の地。広大な原野に立ちすくみ、馬賊の襲撃に怯えつつも、森田勇太郎は着実に地盤を固め、森田酒造を満洲一の造り酒屋にまで成長させていく。だが、「同じ着物は二度着ない」とまで言われた栄華も長くはなかった。夫・勇太郎の留守中、ソ連軍の侵攻と満人の暴動に遭い森田酒造は崩壊。妻・波子は二人の子供を抱え、明日の命すら知れぬ逃亡生活を余儀なくされる。夫との再会を信じ、ひたすら故国を目指す波子。しかしこれは、波子を呑み込む過酷な運命の始まりに過ぎなかった。母、満洲、極限状態。直木賞受賞第一作。