2003年2月28日発売
停電の夜に停電の夜に
毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦ー「停電の夜に」。観光で訪れたインドで、なぜか夫への内緒事をタクシー運転手に打ち明ける妻ー「病気の通訳」。夫婦、家族など親しい関係の中に存在する亀裂を、みずみずしい感性と端麗な文章で表す9編。ピュリツァー賞など著名な文学賞を総なめにした、インド系新人作家の鮮烈なデビュー短編集。
古惑仔(チンピラ)古惑仔(チンピラ)
待っていた。足の震えを寒さのせいにしながら。小霏を殴った袁力という上海マフィアのマンションの前。拳銃は、懐に入っている。小霏は恵と名乗った。雑居ビルの中のクラブ“魔都”。他の女は日本語が下手だった。給料日の夜、小霏は上海の近くの自分の村の話をした。問われて、おれのろくでもない家族や、生い立ちの話をしていた。本名の小霏で呼んでよいといわれた。金。続かなかった。客と店から出てきた小霏を尾けた。金を払わず逃げた客と間違えられ殴られた。小霏も。恐怖。狂犬のような袁力。殺してやる。
PREV1NEXT