2006年7月発売
桂助の患者だった廻船問屋橘屋のお八重の突然の死をきっかけに、橘屋は店を畳むことに。背後に、かつて桂助の家族とも関わりのあった岩田屋勘助の存在が浮かび上がる。自分の商売を広げるためには、どんな汚い手を使うことも厭わない岩田屋が…。そして、桂助の出生にまつわる真実が明らかになる。それは、将軍家のこれからをも左右する重大なことだった。ある事件に関わることになった桂助は、自ら望んで、秘密をかぎつけた岩田屋と相対することに!『南天うさぎ』『手鞠花おゆう』に続く、口中医桂助シリーズの第三作。
今こそ必読の日本人の戦後史がここにあるー。戦後、焦土と化した日本にあって自動車作りの夢を追い続けた男がいた。その名は多門大作。バラック小屋の整備工場でのオート三輪生産から、ついには乗用車生産の夢を実現、多門自動車を立ち上げる。-日本自動車産業の戦後史に挑む。
血風吹きやまぬ、戦国乱世。徳川家康の懐刀・石川数正が、突如、日の出の勢いの秀吉のもとに奔った!家康と苦楽をともにした知将の変節に、三河武士たちは憎しみの炎を燃やす。だが、漢は自らの天命を見据え、恐るべき計略を胸に動いたのであった。息子たちをも巻き込む数正の鬼謀が、天下人の座を狙う群雄の運命をかえてゆくー。謀将シリーズ、最高傑作をもって、堂々完結。
盂蘭盆が近づくと、毎年お江戸の富裕な商家を襲って店中の者を叩き斬る“意趣斬葵之介”が本所に現われた。情の厚さと顔の怖さで「鬼不動」と呼ばれる御用聞きの井蔵は、名岡っ引き「天眼通の才吉」の忘れ形見で、養女のお蔦と下手人の捕縛に挑む。そのほか、死んだはずの父親が不幸にした娘へ恩返しをする一話、怪談「置いてけ堀」をめぐる騒ぎを加えた全三篇を収録。シリーズ好評の第三弾。
江戸を捨て、佐倉で寺子屋の師匠として暮らす旗本の次男坊・結城拓馬は、新勝寺門前の大店・成田屋の一人娘はつと狂おしいほどのひとときを過ごし、成田で暮らすことを考えはじめる。そんな拓馬の様子から、別れの日が遠くないことを察した寄宿先の立花家の妻・鈴が忍んできて、激しく拓馬を求める。さらに、二人の痴態を盗み見ていた鈴の娘・綾も褥に引き込んで、ときのたつのも忘れた三つ巴の妖しい蜜戯が繰り広げられる…。好評「やわひだ」シリーズ第3弾。
林首相は、戦前から台湾自治を求めて、台湾議会設置請願運動を行ってきた活動家だ。ついには日本帝国議会でも請願の演説を行い、万雷の拍手を送られたこともある。だが、四五年。アメリカ政府から彼に渡された国は、琉球台湾連邦という、いびつなものだった。日本軍国主義を潰せばアジアでの問題は消滅する。広大な中国市場は、待ち焦がれていたアメリカと熱く抱き合うだろう、などと考えている連中。その夢見がちなニューディーラー達が支えるアメリカ民主党政権は、この地域の複雑性などまったく理解していない。彼らは、“ジェネラリッシモ”蒋介石が、沖縄を大琉球、台湾を小球琉と呼んでいた明代の故事を持ち出すと、あっさりとその島々の所有権を中国に認めた。そしていかにもアメリカらしく、沖縄と台湾をまず“民主的に統合”して、近代国家とし、中国にプレゼントすることにしたのだ。
国境を挟み、宋遼二国は一触即発の状態に。伝説の英雄・楊業と息子たちの前に、遼の名将・耶律休哥が立ちはだかる。白い毛をたなびかせて北の土漠を疾駆するこの男は、「白き狼」と恐れられていた。宋軍生え抜きの将軍たちも、楊一族に次々と難問を突きつける。決戦の秋!運命に導かれるようにして戦場に向かう男たち。滅びゆく者たちの叫びが戦場に谺する。北方『楊家将』、慟哭の終章。
昔、昔…。春のある午後、少年は森の中で、日にさらされて色褪せた雑誌が落ちているのを見つけた。何げなくページを開いた瞬間、若い女性の全裸写真が視界に飛び込んで来て、思わず息を飲んだ。少年はまだ7歳か8歳だったけれど、そんな少年でさえ、それが普通のものではないことくらい理解できた。幼い少年にとって、それは目が眩むほどの衝撃だった。そして思った。いつか僕もこんなふうに女の人を、とー。
「管鮑の交わり」で知られる春秋時代の宰相・管仲と鮑叔。二人は若き日に周の都で出会い、互いの異なる性格を認め、共に商いや各国遊学の旅をしつつ絆を深めていく。やがて鮑叔は生国の斉に戻り、不運が続き恋人とも裂かれた管仲を斉に招くー。理想の宰相として名高い管仲の無名時代と周囲の人々を生き生きと描く。
女神像が死者を甦らせる!?妖しい噂に挑むラビの過去を描いた「四十九番目の名前」編。千年伯爵の日常を追う「1000の悲劇」編、エクソシスト大集合、「黒の教団親睦パーティー」編の3編収録。待望の小説第2弾。
ミステリーのプロが選んだ2005年最高傑作14篇。日本推理作家協会賞短篇部門本年度受賞作、平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』収録。
年頃の綺麗な娘であるのに男嫌いで評判のお島は、裁縫や琴の稽古よりも戸外で花圃の世界をするほうが性に合っていた。幼い頃は里子に出され、七歳で裕福な養家に引きとられ十八歳になった今、入婿の話に抵抗し、婚礼の当日、新しい生活を夢みて出奔する。庶民の女の生き方を通して日本近代の暗さを追い求めた秋声の、すなわち日本自然主義文学を代表する一作。
元女子プロレスラー司書…殺人犯似の民宿主…ドイツ人の靴修理屋…ウクライナ人のバニーガール…お水販売のホテトル嬢…コンピューターの個人指導をする42歳独身・高山邦夫。人付き合いの不得手な彼が出会うバラエティゆたかな人々。ときに困って迷って悲しんで喜んで驚いて楽しんでネットワークは広がっていく…。