2010年5月発売
『将監闇日記』の謎が解けぬうち、今度は半九郎の妻・お柳が行方不明に。どうやら、蔵前の札差し・松前屋本蔵が関わっているらしい。本蔵はかつて「お役者小僧」の異名をとった、大盗賊であった。その本蔵の手引きを受けて、半九郎はお柳を救い出すべく悪の巣窟・幽冥庵に忍び込む。お柳を誘拐しておきながら、その幽閉先を教える本蔵の狙いは何なのか?そして『将監闇日記』とは、「竜宮」とは?浅野内匠頭、大石内蔵助らを名乗る悪党たちや、於兎姫一行までもが絡むなか、いよいよすべての謎が明らかに!半九郎シリーズ第二弾にして、戦後時代伝奇小説の傑作。
警視庁捜査一課勤務の刑事・黒田岳彦は、ある事件の捜査でI県警上野山署捜査課係長・小倉日菜子と出会う。過疎の村で働く日菜子は警官の夫を職務中に亡くしている未亡人で、東京に対して複雑な思いを抱いていた。捜査が進むなか岳彦と日菜子は少しずつ心を通わせてゆくが、あらたに起きるさまざまな事件が、ふたりの距離を微妙に変えていって…。異色の連作短編集。
プロテスタント系の私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子と森ちゃんは、通学の途中で見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から入学してきた奥沢朱里だった。父は有名カメラマン、海外で暮らしてきた彼女が希代子は気になって仕方がない。一緒にお弁当を食べる仲になり、「親友」になったと思っていた矢先…。第88回オール讀物新人賞受賞作「フャーゲットミー、ノットブルー」ほか全4編収録。
「したしたした。」雫のつたう暗闇で目覚める「死者」。「おれはまだ、お前を思い続けて居たぞ。」古代を舞台に、折口信夫が織り上げる比類ない言語世界は読む者の肌近く幻惑する。同題をもつ草稿二篇、少年の日の眼差しを瑞瑞しく描く小説第一作「口ぶえ」を併録。
底知れぬ悪の気配を漂わせる、両替商堺屋五右衛門。幕府の財政関係者など四人が無残に殺された事件の詮議中、一歩も引かない堺屋に、逸馬は背筋の凍る緊張感を抱いていた。だが、女公事師真琴は、堺屋が親を亡くした子を援助している善人だと譲らない。「悪人」の本質に迫るシリーズ新境地。
13歳の少女フェンベルク(通称フェン)は王女にして悪鬼達の師団をまとめあげる将軍。祖国・ストライフを敵国の侵略から守り、国民の幸せを願い、そして愛する兄を支えるため、彼女は自らを鼓舞するのであった。そんな折、運命を変える出来事が!?壮大なハイファンタジーのシリーズ第1巻、ついに旅立ち。
雪の桜田御門。彦根藩士だった兵六は、藩主井伊大老襲撃を目撃する。戻るべき藩はもはや遠く、兵六は遊女紅鶴に安らぎを求める。騒然とする世相にも、柿葺長屋では日々の営みと新たな恋がある。剣友一馬はお久と恋仲になり、士分を捨てる決意を固める。そこへ土佐から妹のお夏が訪ねてきた。
尾張が美濃に攻め寄せるという。軍勢が村へ入れば村人たちには生き死にの大問題だ。オトナ衆の次郎衛門は戦火から村を守るため、織田勢から自軍の乱妨と略奪を禁止する命令書をとりつけようとするが…。戦乱の中で奔走する村人たちの、たくましさとせつなさを描いた表題作を始め、全6本の粒ぞろい歴史短編集。
王女にして将軍だったフェン。しかし彼女の人生は大きく変わっていった。辿りついたのはソルド王国の荒くれ者が集う店。そこで出会った騎士団見習いの少年ロカとフェンは、ふとしたことで重大な計画を知ってしまう。命を狙われる二人は?そして王国にまつわる秘密とはいったい何!?大人気シリーズ第2巻。
祝言を間近にひかえながら暴漢に襲われ、命を絶った愛娘。「仏」の名を捨てて復讐に奔走する父として定町廻り同心・森口慶次郎が初登場する表題作や、妻に逃げられた男と子供を授からなかった女の交情を描いた「うさぎ」等、ままならぬ運命と向き合う江戸庶民の姿を鮮やかにすくいとった傑作短篇集。
帝政ロシア崩壊直後の、ウクライナ地方、ミハイロフカ。成り上がり地主の小倅、ヴァシリ・ペトローヴィチは、人を殺して故郷を蹴り出て、同じような流れ者たちと悪の限りを尽くしながら狂奔する。発表されるやいなや嵐のような賞賛を巻き起こしたピカレスクロマンの傑作。第29回吉川英治文学新人賞受賞。
知的で颯爽とした二十七歳の美人OL、松永夕香。「お願い、課長。お部屋まで…」酔った彼女をマンションまで送ったメタボ中年・与野今日介に衝撃の一夜が訪れようとしていた。だが、それは女房以外の女に触れたこともなかった彼に巡ってきた女運の序章に過ぎなかった。官能の名匠が贈る快作。
外科医が、愛するぬいぐるみたちと興じる、秘密の「ごっこ遊び」。怖ろしい罠が待ち受ける「ボード・ゲーム」。引き篭もりたちが、社会復帰のためにと熱中する「隠れ鬼」。自分の家族がそっくりそのまま登場する「RPGゲーム」。四つの奇妙な「遊び」をモチーフにした超絶技巧の、ミステリ・ホラー短編集。
閑職ゆえに厠同心とも呼ばれる定中役に籍を置くのは、よろず医者も兼ねる龍之介と新人の光太郎二人だけ。恐ろしい形相で不審死した京極屋主人の事件を探るものの、その真相は判然としない。さらに別の大店、満美屋にも惨劇が…。複雑に絡む謎を龍之介はどう絵解きするのか。シリーズ第二作。
死んだ女のことを教えてくれないかー。無礼な男が突然現われ、私に尋ねる。私は一体、彼女の何を知っていたというのだろう。問いかけられた言葉に、暴かれる嘘、晒け出される業、浮かび上がる剥き出しの真実…。人は何のために生きるのか。この世に不思議なことなど何もない。ただ一つあるとすれば、それはー。
ビジネス界の一匹狼たちが情報を武器に、ある者は不審な死を遂げた友の復讐を果たし、ある者は巨大企業の策謀を暴く。リーマン・ショック後、日本経済の隠された実情を描く筆致は衝撃的でわかりやすい。本作は著者のデビュー作『デフォルト 債務不履行』の続篇であると同時に、ビジネス界を舞台にした、これまでにない武侠小説の短篇集である。
書評家の林雅賀が店長の蒼林堂古書店は、ミステリファンのパラダイス。バツイチの大村龍雄、高校生の柴田五葉、小学校教師の茅原しのぶーいつもの面々が日曜になるとこの店にやってきて、ささやかな謎解きを楽しんでいく。かたわらには珈琲と猫、至福の十四か月が過ぎたとき…。乾くるみがかつてなく優しい筆致で描くピュアハート・ミステリ。
「芋侍のにいちゃん、可愛いねえちゃん半刻ほど貸せよ」武州槻山藩主から休みをもらって江戸に出た小坂亀治郎は、道を尋ねてごろつきに囲まれた。怪しい侍から助けてやったお鶴ちゃんが、なぜか旅の道連れになってしまい、吉原遊びを断念したばかりだった。武州訛りで風采の上がらぬ亀治郎とお鶴ちゃんの、心がほっこり爆笑珍道中の始まり始まり。
新宿、仙台、福岡など日本各地で、見知らぬ通行人の女性をバットで殴って、死傷させるという事件が連続発生。犯人は、殺害後、逃走せずに、現場で茫然としているという共通点があった。いずれも犯人はその場で逮捕。犯人同士に、接点はまったくない。新宿署の刑事・城島は元FBI心理捜査官エミコ・クルーニルと共に、恐るべき事件の真相に迫る。