2013年7月10日発売
ワーキングプアの日常を描いて愛された作家、その文学はどれほどの犠牲のもとに生み出されたのかー没後25年、崩壊と回復の生涯。決定版評伝。NYタイムズ紙「10 Best Books 2009」選出。
わたしの心臓のすぐそばには、一発の銃弾が眠っている。わたしが警官だった時代にローズという男に撃たれたものだ。あれから14年が過ぎた今、私立探偵となったわたしのもとにローズの署名のある手紙が届く。手紙は、最近わたしの身辺で起きた連続殺人はローズ自身の犯行だと告げていた。彼は逮捕され、刑務所で服役中なのだが…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞。『解錠師』の著者の、記念すべきデビュー作!
時は幕末、老中・水野越前守忠邦が“天保の改革”に乗り出し、戯作者、洋学者、不良御家人への締め付けが厳しくなってくる。衝撃的な災難に遭っていらい自堕落な生活を送っていた瓢六のもとに、昔の相棒・堅物同心の篠崎弥左衛門がたずねてくる。青春時代は過ぎ去り、老いに足をかけた男達の決死の闘いが始まったー。
はじめて白髪を見つけたのは、いくつの時だったろう。四十の坂を越え、老いを意識し始めた紙商・小野屋新兵衛は、漠然とした焦りから逃れるように身を粉にして働き、商いを広げていく。だが妻とは心通じず、跡取り息子は放蕩、家は闇のように冷えていた。やがて薄幸の人妻おこうに、果たせぬ想いを寄せていく。世話物の名品。
この人こそ、生涯の真の同伴者かも知れない。家にはびこる不和の空気、翳りを見せ始めた商売、店を狙い撃ちにするかのような悪意ー心労が重なる新兵衛は、おこうとの危険な逢瀬に、この世の仄かな光を見いだす。しかし闇は更に広く、そして深かった。新兵衛の心の翳りを軸に、人生の陰影を描いた傑作長篇。
作家になることは、人の顰蹙を買うことだ、とは気がついていなかったのである。気づいた時は、もう遅かった。読者は人の顰蹙を買うような文章を、自宅でこっそり読みたいのである…(「まさか」)。“私小説作家”と称される著者が、自尊心・虚栄心・劣等感に憑かれた人々を執拗に描き出す、異色の掌編小説集。
山河豊かな小舞藩、父代わりの兄を何者かに殺された林弥は友らに支えられ剣の稽古に励む日々を送るが、江戸から来た家老の息子・透馬との出会いから運命が動きだす。やがて藩の政争と陰謀が少年たちをも巻き込み…。身分や立場の差を超えてつながる少年剣士の成長に清々しい風が吹く、著者の新たな代表作。
深川不動裏手の長屋に住む信吉は、利発で落ち着いた物腰の少年。大人たちに「若」と呼ばれ可愛がられていたが、手習い所で信吉を教える佳乃には気懸りなことがあったー火事や地震から人々の命を守り、子供たちが幸せに育つ町を作るため、影の町人集団・百眼を差配し、奉行に進言する若き町年寄・三四郎シリーズ第10弾!書き下ろし時代小説。
肝炎で入院中の高校生・戎崎裕一はエロ本集めが趣味の多田さんや元ヤンキーの看護師・亜希子さんに翻弄される日々のなか、同い年の秋庭里香に出会う。人形のように美しく本を愛する文学少女、そして女王様のようにワガママである彼女は、難しい病気をかかえていた。ライトノベルの金字塔のリメイク版、イラストも新たに登場!!
生まれつき心臓がわるく、学校に行ったことがない里香に高校生活を味わわせてあげたい!裕一はお菓子づくりが趣味の巨漢・世古口司やスケベな悪友・山西保、幼馴染み・水谷みゆきの協力を仰ぎ、たった一日のスクールライフ実現に向けて突っ走る。恰好悪く、必死で全速力の十代を描きあげた青春小説のバイブル、待望の第二巻。
海辺の町、小学生の慎一と春也はヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。無邪気な儀式ごっこはいつしか切実な祈りに変わり、母のない少女・鳴海を加えた三人の関係も揺らいでゆく。「大人になるのって、ほんと難しいよね」-誰もが通る“子供時代の終わり”が鮮やかに胸に蘇る長篇。直木賞受賞作。
気品ある文体と、研ぎ澄まされた感覚。病魔とたたかいながら自己の内面を探究し、出ずる孤独と絶望とを中国古典に、あるいは南洋の風光に託した中島敦の作品世界は、永遠にその輝きを失わない。芥川賞候補に推され、文学的起点となった「光と風と夢」。名作の誉れ高い「李陵」「弟子」「山月記」など、必読の六篇を収める。
大阪で探偵事務所を開業する元警視庁捜査一課刑事の田辺淳に若い未亡人と寝台特急「あかつき3号」で佐世保まで行ってほしいという依頼が舞い込む。だが、田辺を待っていたのは黒い罠。佐賀、東京で起きた殺人事件の被疑者にされたのだ。巧妙なトリックでピンチに陥った元部下を十津川は救い出せるか!?
悪名高き盗賊王ミッキー・オコーナーの豪奢な屋敷を訪ねた、若く美しい未亡人サイレンス。彼女が慈しむ養女メアリーが、孤児院からミッキーによって誘拐されたのだ。養女を取り戻すため、勇気をふりしぼって盗賊王に直談判したところ、メアリーは彼の実の娘であること、そしてその娘の命が何者かに狙われていると打ち明けられた。メアリーが心配なあまり、サイレンスは彼の屋敷が付き添うことに。ミッキーの傲慢で不遜な態度に反発する毎日だったが、ある日、美しい声で娘に子守歌を聴かせる彼の姿があった。盗賊王の優しく繊細な心を知り、一人の男性として次第に惹かれていくサイレンス。彼もまた、悲しい自分の過去に耳を傾け、涙を流してくれる慈愛に満ちたサイレンスに激しい熱情を募らせていた。ある晩二人は華やかなオペラハウスへと出かける。二人きりの席で甘いひとときを過ごすも、屋敷へ帰ることそこには…。
容姿も家事も完璧。ガーデニングまで得意な未亡人メアリーが引っ越してきて、小さな村の住人たちは美しい新参者に夢中になった。とくに、アガサの隣人ジェームズは彼女にご執心の様子。恋敵の登場で闘争心に火がついたアガサは、ガーデニング・コンテストで入賞して村のみんなをあっと言わせようと、苦手なガーデニングに挑戦することに。ところが、いつもの変な意地を張ったせいで、またもや「ズル」をしなければならない状況に追いこまれてしまい…。おりしも村では、自慢の庭が次々と荒らされる奇妙な事件が発生。人気を取り戻したい一心でアガサは犯人捜しに乗りだすが、そのときはこれが悲劇の幕開けとは夢にも思わず…!?人気シリーズ第3弾!
裏で糸を引いているヤツがいる?ミクロコスモス・ギャラクシー・チーフスカウト堂神恭介。“怪物スカウト”と恐れられ、選手獲得のためなら手段を選ばず、裏社会との黒い噂も絶えない。その堂神が「人気球団G以外なら野球浪人します」と宣言した大学生を、強行一位指名した。Gに喧嘩を仕掛けたのだ!-「ドラフト一巡目 指名拒否」ほか、プロ野球スカウトたちのかけひき、思惑と欲望が交錯する連作短篇集。
裁判で執行猶予がついた判決が出たときに、被害者や遺族が望めば、加害者の反省具合をチェックし、刑務所に入れるかどうかを決定できる制度「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が始まって38年がたっていた。30年前、その制度の担当係官だった経験があり、今は大学の講師として教壇に立つ井川は、「チャラン」と呼ばれるいい加減な上司とともに、野球部の練習中に息子を亡くし、コーチを訴えた家族、夫の自殺の手助けをした男を憎む妻など、遺族たちと接していた当時のことを思い出していた。執行猶予付きの判決が出たとき、もし被害者や遺族が、加害者を刑務所に入れるかどうか決める権利を持ったら…。人を憎むこと、許すこととは何かを大胆な設定で描く、感動の長編小説。