2015年1月発売
退廃と背徳の都パラディス。この地において男女の別に、いかなる意味があろうか?詩人が手に入れたスカラベの指輪の秘密。両性具有の吸血譚「紅に染められ」。昼間は修道院で働き、夜は少年の姿で悪行のかぎりを尽くす娘。悪魔崇拝を描いた「黄の殺意」。謎の死をとげた美貌の役者が魅入られたこの世ならぬ存在とは。「青の帝国」。幻想の都パラディスを舞台にした中編3編収録。
「氷のザキ」と異名をとる警視庁捜査第三課の神崎は、相棒の水沢とともに大規模な美術品窃盗事件を捜査していた。その盗品を追う過程で榊田恵、学の姉弟が浮かび上がってくる。姉弟はさる老富豪の隠し子で、屋敷に同居して、老富豪を介護しているということだったが…。事件の臭いを感じた神崎はひそかに内偵を始めたー。
老舗酒造の杜氏である父親と衝突して、実家を飛び出した次男。七年後、父親の訃報にやむなく戻ると、「喪主はお前に」と不可解な遺言が残されていた。なぜ父親は、跡を継ぐ長男を差し置いて、次男に式を任せたのか?(「父の葬式」)葬儀を省く「直葬」が主流になった国で、死者をめぐる「謎」に戸惑う遺族たち。-女社長・紫苑が率いる北条葬儀社の面々は、式を滞りなく進められるのか。気鋭の放つ傑作連作ミステリー。
写真専門学校に通う奥野弘志はヌード撮影実習で興奮のあまり失神してしまう。気落ちして地元商店街に逃げ帰った弘志の目に見慣れぬ惣菜屋が飛び込んでくる。「いらっしゃいませ」。優しく微笑むエプロン女性は、実家の写真館に長らく飾られていた憧れの振袖美女・麻奈美だった。今は若後家の身だという彼女に童貞の弘志の心は一気に傾いていく。週刊実話で大人気を博した連載、ついに単行本化!
私の名は最上俊平。私立探偵だ。フィリップ・マーロウを敬愛する私は、ハードボイルドに生きると決めているが、持ちこまれるのはなぜかペットの捜索依頼ばかり。正直、役不足である。そろそろ私は変わろうと思う。しかるべき探偵、しかるべき男にー。手始めに、美人秘書を雇うことを決意したが、やってきたのはなんとも達者な女性で…。心優しき私立探偵とダイナマイト・ボディ(?)の秘書が巻きこまれた殺人事件。くすりと笑えてほろりと泣けるハードボイルドの傑作、待望の新装版。
いつものようにアルバイト先のコンビニに出かけようとしていると、日本で一番会いたくない男、警視庁の工藤が訪ねてきた。きれいな女子大生を連れていて、彼女を守ってくれと言う。聞けば、ストーカー被害に遭っているらしい。それなら放っておけないと、警護を引き受けた“おれ”。怪しい男を見つけ、追跡するが…。緊迫感とユーモアが溶け込んだ書き下ろし探偵ミステリー。不器用だけど静かに熱い探偵・川庄の活躍と、ひとりの男の成長に注目!
廻り髪結のおゆりは、かつての許嫁で御家人の島崎清之助に付き纏われ、怯える日々を送っていた。岡っ引の弥平次は、おゆりの窮状を知り船宿「笹舟」に匿うが、その最中、久方ぶりに元臨時廻りの同心が柳橋に姿を見せる。ろくでなしの島崎をおゆりから遠ざける策を思案していた弥平次は、一芝居打つことを思いつき…。人気の人情捕物シリーズ第六弾、待望の書き下ろし!
深手を負った、七人殺しの下手人・野うさぎの鉄二を匿い、施療をした師・幻宗に疑問を覚えた新吾だったが、幻宗は「医者の務めを果たしたまで」と言い切る。鉄二は順調に快復していったが、ある日、看護をしていた老夫婦が惨殺され、鉄二の姿は消えてしまった!新吾は鉄二を捜して奔走する。書き下ろし青春時代小説、シリーズ第二弾!!
本所のボロ長屋で不遇をかこつ剣豪「鬼がらす」こと烏森堅四郎の隣に、花形役者の揚羽恋之介が越してきた。長屋の女たちを目で殺す恋之介に猛反発する堅四郎。だが、否応なく観に行かされた恋之介の芝居に大感激し、一転弟子入りを志願する。国惑する恋之介は無理難題をふっかけるがー!?前代未聞の凸凹師弟が、お江戸の難事件を鮮やかに解決!ドラマ『猫侍』で注目の黒木久勝が放つ痛快デビュー作。
時は幕末、陸奥国八戸藩と南部藩に挟まれた小さな国、外館藩西根通大平村が舞台。大平村には、60歳になると全ての役割を解かれ、御山参りをする習わしがあった。それは食い扶持を減らす為の姥捨ての旅とも囁かれていた。一方、代官所は、どんな飢饉の年でも、きちんと年貢米を納める大平村に不審を抱く。老人の口減らしだけで、重い年貢を納めることができるのか、もしや「隠田」を開墾しているのではないか…。隠田は死罪に当たる時代、真実を暴きたい代官所と村人との攻防戦が始まる。老人達の知恵と勇気が、役人達を翻弄、果たして大平村の運命やいかに…?痛快!幕末老人エンタテインメント。
どうして母は自殺したのか?娘である著者はその謎を追い求める。子ども時代、高級ファッションブランドのモデルとして国民的なスターだった母が、成人して狂気に襲われる。どうして母は精神に異常をきたしたのかという疑問、同じ病に自分も襲われるかもしれないという不安が、その錯乱を目の当たりにした作者につねにつきまとう。母の生きた軌跡をたどると、次々と闇の部分が明らかになっていく。母の生きた軌跡を描ききることで、著者の魂は救われるのだろうか。
1931年夏、日本人監督の近藤兵太郎率いる嘉義農林学校野球部員たちは、あこがれの甲子園の舞台に立っていた。守りの日本人、打撃の台湾人(漢人)、そして俊足揃いの台湾原住民ー三つの民族からなる混成チームは近藤から授かった“不屈の精神”を武器につぎつぎと勝ち上がっていく。そして、超満員の観衆が見守る中、決勝戦のサイレンが鳴ったー。
人気作家、リザ・スコットラインが選んだ、マイクル・コナリー、クラーク・ハワード、ジョイス・キャロル・オーツ…。世界最高レベルのミステリ20編を収録。
時は安永、徳川幕府第十代将軍・家治の御世。顔は不細工だが心は錦の腕利き同心・釜口右衛門は悪徳与力から無理難題を押しつけられる。多くの上つ方を集めて催される真剣試合の出場者として凄腕の人斬りを捜せー。暗黒街のつてを頼って、釜口は美貌の剣鬼・朽縄真蔵と出会う。蝦蟇と大蛇の邂逅が、華のお江戸に悪を滅する嵐を起こす!
江戸城大奥で火災が発生した後、旗本が行方不明となった。御台所の側に仕える大奥女中のお静は、高位の人物からの極秘の依頼で、行方不明の旗本の捜索を開始するが…。訳あって江戸城の大奥で働くお静が、権力に囚われし男女を凛として裁く!
二八歳の田中真紀子は、友人のイチローから誘われ、彼の家に間借りすることになった。その家は建て増しを重ねた奇妙な家で、コンクリート三階建ての本館、黄色い木造の二階建て、鉄骨ガレージの三棟が無理やり接合されていた。真紀子はガレージの上にある赤い小屋に住むことに。イチロー父は全裸で現れるし、女優の母、無職の姉、モテ系女子の妹も一癖ある人ばかり。そんなある日、イチローは、自分はおなじ一日が二回繰り返されることがあると真紀子に打ち明けるのだった。芥川賞作家が放つ、新感覚パノラマワールド!
新進IT企業「クレイズ・ドットコム」の採用プロジェクト・リーダーに抜擢された志帆子。「ブラック企業」の汚名を返上して学生を確保すべく、情報戦と心理戦を駆使して成果を上げていく彼女だったが…。「就活」の裏側を超リアルに描く注目作!
「男はつらいよ」シリーズの子役、秀吉だった「私」は寅次郎と一緒に行方不明になった母を探す旅に出た…27年の歳月を経て、そんな昔話を伊豆の温泉宿で「美保純」とともに懐かしむ「私」。「男はつらいよ」の世界に迷い込める、味わいたっぷりな“寅さん小説”、表題作の「愛と人生」の他、短編「かまち」とその続編「泥棒」の3作を収録。