2021年11月11日発売
父と祖父を殺されたヌルハチは、復仇のために立ち上がった。挙兵後、敵対勢力を次々と制圧し、全女真人の頂点に上り詰める。それは強大な明との対決を意味していた。圧倒的な大軍に対し、ヌルハチの策はー「いざ、撫順へ」。清の初代皇帝、英雄・ヌルハチの生涯。
小田原の私娼街「抹香町」の芸者とのつかず離れずの関係を描いた「捨猫」、著者のファンとして訪ねてきた人妻との淫靡な駆け引きを綴った「火遊び」など、著者が交情を重ねた相手とのエピソード8篇に、師と仰ぐ徳田秋声にまつわる女性の話「小説 徳田秋声」など全10篇を収録。私小説作家・川崎長太郎、愁眉の短篇集。
「晋!お前のお父つあんやぞ。お前のお父つあんが、美代に子産ませよつたんやぞ。」あまり家業に熱心ではない近江商人の主人・藤村治右衛門と、正反対な性格の弟・真吾、そして、治右衛門の義子・晋。真吾が密かに心を寄せ、晋の母親がわりを務めていた女子衆の一人・美代が、治右衛門の子を死産し精神を病んでしまう。やがて真吾に結婚話が持ち上がったとき、断固として首を縦に振らない裏には、美代の一件によるわだかまりがあったー。商家に生まれた著者が、その体験から描く「商店もの」三部作の第一作にして、第1回芥川賞の候補にもなった名作。
小説家を目指す春樹。ミュージシャンを夢見る雪。そして、二人を見守る人たち。それぞれの哀しみを背負いながら、高校三年間、寄り添うように生きていく。ところが突如、平穏な日々に悲劇が訪れた。隠蔽、苦悩、決断の果てに待つ衝撃の結末とは?すべての答えは卒業式当日。私は、あなたの「爆弾」になるーカリスマアーティストが贈る小説×音楽の物語世界。
亡き夫に対して後悔を抱く女性と、人生の選択に迷いが生じる会社員。(『後立山連峰』)。失踪した仲間と、ともに登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生。(『北アルプス表銀座』)。娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。(『立山・剱岳』)。コロナ禍、三〇年ぶりの登山をかつての山仲間と報告し合う女性たち。(『武奈ヶ岳・安達太良山』)。日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩、山を登る女たち。山頂から見える景色は、これから行くべき道を教えてくれる。
地下都市カヴェルナの人々は表情をもたない。彼らは“面”と呼ばれるつくられた表情を教わり大人になるのだ。そんなカヴェルナに住むチーズつくりの親方に拾われた幼子はネヴァフェルと名づけられ、一瞬たりともじっとしていられない好奇心のかたまりのような少女に育つ。どうしても外の世界を見たくて、ある日親方のもとを抜けだしたネヴァフェルは、カヴェルナ全体を揺るがす陰謀のただ中に放りこまれ…。
メルボルンの若手画家が描いた一枚の「絵画」。日本へ渡って三十数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく。一枚の「絵画」をめぐる、五つの「愛」の物語。彼らの想いが繋がる時、驚くべき真実が現れる!仕掛けに満ちた傑作連作短篇。
大阪で七十年続く和菓子屋「凍滝」の二人姉妹、小梅とつぐみ。姉の小梅は店を継ぐため、毎日和菓子づくりに励む働き者。大学生の妹・つぐみは自由奔放。家業を古臭いと嫌っている。ある日、四十三年前に亡くなった曾祖母の魂が何故かつぐみの身体に乗り移り、「ある手紙をお父ちゃんの浮気相手から取り戻してほしい」と告げてきたーある和菓子屋の家族が織りなす、明治と令和を繋ぐ物語。
旅と人生社の藤原冬美は関修次郎と組み東北地方への取材旅行に向かった。二人は東武鉄道の特急「リバティ会津111号」の車中で平川敏生と遭遇した。この日、上野駅に到着した東北新幹線「なすの270号」の車内でキャリア官僚の土屋健治郎の遺体が発見された。容疑者として平川が浮上するが、決定的証拠を見いだせなかった十津川だが…!?
巨人・小びと・水妖・悪魔・精霊・人狼などのあやかしが日常に闖入し、人びとの運命を揺り動かす、印象的な物語の数々。『グリム童話集』と平行して兄弟が蒐集に明け暮れ、後の作家たちの創作の尽きせぬ源泉ともなった名著を、グリム兄弟自身の手跡確かな初版本をもとに新たに全訳。本編584話+補遺26話を完全収録し、訳註などの付録資料も充実。