著者 : なえなえ
「安心して。私は生き返る。全部忘れちゃうけど、次も絶対あなたを好きになる」 そう言って最初の彼女は死んだ。 【死体人形】--それは人間の死体を再利用して作られた、人格を持つ自動人形。 法的には【物】と扱われる彼らを巡り、世界を二分した戦争が続いていた。 祖国を滅ぼされた皇子にしてとある特殊な能力を得た少年・サクト。 彼はかつて死体人形の少女・ノアに助けられるが、落ち延びる途中で彼女は破壊されてしまう。 その後、初期化されて記憶を失ったノアと、死体人形を演じるサクトは同じ部隊に所属することとなり……? 輪廻し続ける少女。 この残酷な世界で一人の死体人形を愛する少年の危険性を、まだ、誰も知らない。
「はぁはぁ、優吾くぅん。ぐふふ、優吾くんの匂いってすご〜い」「どうしたんだ、天真?」「え!?ど、どうして優吾くんが…」「天真こそなんで俺の部屋にいるんだ?」「そ、それは…それより、アテナちゃんのおうちってとっても広いんだね!」「あ、ああ…そうだな。まさか俺より先回りして夏休みの予定で天真たちを家に招くとは。どんだけ俺の邪魔をしたいんだよ」「お風呂は広いし、トランプでアテナちゃん考案のゲームをしたり、とっても楽しいよね」「ああ。それに月宮姉妹の母・ディアナさんまで現れて…ほんと告白できるんだろうか。あのさ、それより天真、おまえ一体ここで何をして…」
「わたくしは星羅(せいら)ルナ。月宮(つきみや)アテナの友人でラブコメの神様ですわ。桐島(きりしま)さん、あなたはアテナが惚れた男性だとか」 「俺は天真(てんしん)って女の子が好きなんだ。でも、何度も告白しても月宮が無茶苦茶な方法で邪魔してくる。星羅、俺の告白の手伝いをしてくれないか? お前じゃないとダメなんだ!」 「っ! わ、わたくしでないと……わかりました。桐島さんの恋を叶えてみせますわ!」 「えーと、その、頼んでおいてなんだが、本当に良いの?」 「わたくしがアテナに告白の邪魔をさせないようにすれば良いのですね? お任せくださいですわ!」 「そ、そうか。じゃあよろしく頼むな。見とけよ月宮ーー今度こそ絶対に天真に俺の想いを伝えてやるからな!」
「優吾よ、そんなに天真陽毬が好きなのか?」「あぁ。俺は天真が好きだ」「ど、どうして我のことをす、好きになってくれないのだ。我はこんなにも美しくて胸も大きいというのに。我は優吾のことが好きだ!だからわ、我と付き合ってください!」「すまん月宮。俺はお前とは付き合えない」「そんな!?我じゃダメなのか?お前の想いは絶対に天真には届かないぞ。何故なら、我がラブコメの神様でこの力で優吾の告白を邪魔し続けるからだ!」「お前はそんなに俺の恋を邪魔したいのか?」「うん」「即答!?」「だ、だって…わ、我は、優吾のことが好きなんだもん!だ、だから、優吾は早くあの女を諦めて、わ、わわ、我を好きになってください!」第14回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作。