著者 : ハセガワケイスケ
中学2年生の水玉シローは、ごく普通の男の子。 バイト代につられて由緒正しき超名門校の女子寮の “お手伝いさん” を始めるが、そこには魔法を “身にまとった” ようなきらめきを放つ、4人の美少女が住んでいて……。
真っ白な少女は、空にたゆたっていました。そこは、不思議なくじらが舞う世界。忘れものの森。電波塔の上。海が近い街のどこか……。傍らには真っ黒な猫の姿をした仕え魔がいました。少女は、死神でした。それは、ひとびとの命を運ぶ存在。真っ白な少女は、ひとびとと関わり、交わり、そして変えていくのです。これは、白い死神と黒猫の、哀しくてやさしい物語。
まるで、“光”と“影”のような二人の少女。その白と黒の死神に仕える黒猫たち。彼らの想いは、通じ合っているはずなのに、すれ違ったままでした。彼らの主人である少女たちも、外見はうり二つでしたが、心はすれ違い続けました。あるとき。灰色の街に住む白い花は、枯れ逝くまえに、ことばを届けます。“光”と“影”へ。けっして交わるはずのないふたりへ。そして、黒猫たちは……。 --これは、白い死神と黒猫の哀しくてやさしい物語。
何処かで鈴の音が聴こえて、ふわりと咲く風になりました。風は真っ白い花をたずさえて、空に浮かびます。真っ白な花だと思われていたそれは、真っ白な少女でした。少女で、そしてーー死神でした。そのまわりを、黒猫が、ぱたぱたとコウモリのような羽根で飛んでいました。少女はやさしく微笑み、黒猫をそっと抱えて、ラララ、と唄いはじめました。--空には、雨あがりの虹が架かっていました。これは、白い死神と黒猫の、哀しくてやさしい物語。
ーー来たれ、白き花よ。永久に枯れぬ花よ。それはまるで、真っ白い花のようーー。 白い少女が振り返ると其処は、灰色の街でした。迷い人の園。虚無と現実の果て。少女を呼ぶ声。白い花を呼ぶ音。--来たれ、白き花よ。永久に枯れぬ花よ。--見付けておくれ。--この、散りゆく花の音を。そして白い少女は扉を開き、枯れ逝く花の声を聴いたのです。これは、白い死神と黒猫の哀しくてやさしい物語。
うちのじーちゃんは、若い。ありえないくらい若すぎる。還暦を迎えて幾ばくかという年齢なのに、やけに目立つ赤い髪の毛をして、ギターをこよなく愛してて、ヴィンテージジーンズや革パンを穿いて、全身にはシルバーアクセサリーじゃらじゃらで…。ぜったいおかしい。おかしすぎる。ていうか、なんでこんなに若いの?だってだって、誰がどう見ても僕のじーちゃんてば、二十歳前後の“若造”だよ…!? ハセガワケイスケがお贈りする、かっこいいけど、ちょっとヘンなおじいちゃんの物語。
永久の花よ、来たれーー。 「----?」 名前を呼ばれた気がして、白い少女は振り返りました。しかし、そこに求める姿はありませんでした。そこにはただ空があり、何処からか風に飛ばされてやってきた淡い白い花びらが一枚、目の前を通り過ぎるだけでした。少女は大きな瞳でその花びらの行方を追います。風に舞って、ゆらりゆらり宙をたゆたう。風に乗って、ふわりふわり遠くまで。名前を呼ばれた気がしたのです。少女を、よく知る声がーー。これは、白い死神の哀しくてやさしい物語。
白い死神は尋ねます。キミは何処に行くの? キミは誰に逢いに行くの? キミは何処まで歩いて行くの? キミは何処まで、飛んでいけるの……? 人と死神の不思議なふれあい。それは、前ばかりじゃなく後ろを振り返る勇気と、あと一歩踏み出す心の強さを、ほんのすこしだけ与えてくれるのです。白い死神は尋ねます。--キミは何処に行くの? 聴こえますか? これは、白い死神からの哀しくてやさしい唄。
少女は届けます。人から人に、届けます。哀しい「気持ち」を。やさしい「想い」を。少しだけでもいい。前に向かって歩いていきますように。やわらかな想いで、世界が満ちますように。願いが、伝わりますように。そして、真っ白な雪のような姿の死神は舞うのです。人々の想いをのせてーー。これは、白い死神の哀しくてやさしい物語です。
ある日、ひとりの少女が目を覚ましました。その少女は、ふつうの人間ではありませんでした。手には、鈍色に光る大きな鎌を持っていました。傍らには、奇妙な黒猫を従わせていました。少女は、「死神」でした。そして、死を司る少女には、他の仲間(しにがみ)と違うところがありました。その姿が、冬の雪のように真っ白であること。その心が、春風のようにやさしいことーー。これは、白い死神の、哀しくてやさしい物語です。