著者 : 三日月かける
ー死ね。死ね。天井から聞こえる微かな物音。少年の意識には、その音が狂おしく囁いているように思えた。そして…。社で始まる「虫おくり」祭りの準備中、街では蜂の被害が広がっていた。その被害は特に、七谷地区よりも深い山奥にある棄谷という集落で酷くなっている。棄谷には信乃歩の読書クラブの友人と自殺したという少年が住んでいた。少年の家族は引っ越してきて以降ずっと、この集落に馴染めなかったらしい。そして少年を虐めていた人間がまた一人、蜂の犠牲になっていく。果たして呪いと虫おくりの関係とはー。甲田学人が放つ呪いの物語、第3幕!
「また自分の知らない風習か…」同級生・日高護の祖母の葬式に出席した真木現人は、そこで騒ぎに巻き込まれる。部外者であるはずの少女が発したことーそれは日高が過去に祖母から聞いていた『神様の入った箱』を差し出せというものだった。一方で現人の双子の兄・夢人は、その箱と同時に日高の家系にも興味を持ち始める。それは七谷という土地で脈々と引き継がれている『憑き物筋』で、呪いの本尊をその箱に収めているという。兄の話に怒りを覚える現人だが、呪いはすでに浸蝕を始めていた。現人が通う高校に巻き起こる怪異、そしてー。甲田学人が放つ呪いの物語、第2幕。
双子の弟・真木現人は兄の夢人のことが嫌いだった。主人公の虐めと呪いをテーマにした小説 『呪験』 で十五歳にして作家になり、上京した夢人。そして、その内容に影響された殺人事件により帰郷するのだが、彼は七屋敷薫という婚約者を連れていた。 ── 七屋敷は呪われている。七屋敷の花婿は、呪いによって、二年と経たず早死にするのだ。 そんな 『呪い』 が噂される婚約だが、夢人は暗い嘲り笑いを浮かべるだけだった。 そして、夢人を尊敬し慕う妹の信乃歩に、彼らを蝕む呪いの物語が、静かに始まりを告げていた──。
主が帰ってくることのない神狩屋。活動停止を命じられた雪乃は、そこのみが拠り所かのように待機することしかできない。さらに蒼衣も、神狩屋の書斎で膨大な資料から手がかりを探すしかなかった。何度もそんな作業を繰り返した時、蒼衣の目に入ってきた一つのスクラップブック。そこに記されていたのは、葉耶にまつわる過去の真相。そして──。
“-彼女の髪に、触ってみたい…”少女が歩道橋を登り、階段の一番上に、ぺた、と差し掛かった時。突然、ぐん、と後ろ髪を鷲掴みにされた感触と同時に、髪の毛が思い切り後ろに引っ張られた。そして、恐怖とともに堕ちていきー。いまだ葉耶の悪夢に苦しむ蒼衣は、葬儀屋の件でさらに自責の念に駆られていく。葬儀屋の蘇りにより自我を保っていた保持者が多く、蒼衣は方々から恨まれていた。周囲は蒼衣を休ませようと気を遣うのだが、“泡禍”解決の依頼は増えていくばかりで…。そして舞い込んできた蘇りの娘が関わる“泡禍”事件に、蒼衣も責任を取るかのように、雪乃と二人で解決に向かうのだがー。悪夢の幻想新奇譚、第十四幕。
病院で首を吊って死んでいた少女が残した手紙。そこには自分達がいじめていた浅井安奈からの復讐が匂わされていた。いまだ解明できていない謎の死を遂げた安奈と、生き返りの彼女を連れて逃亡を続ける多代亮介。二人を追ってクラスメイトたちに接触を図る蒼衣と雪乃だが──。
蒼衣が深い傷を抱えた一週間後。処分しそこなった〈泡禍〉被害者を探すため、瀧修司と可南子の工房を訪れた蒼衣たち。だが、可南子に対して雪乃は恐怖を感じずにはいられない。雪乃は“生き返り”という概念に疑問が隠せず、そして──。
「君の奥底に眠る『願望』は、何だね?」小学校の校庭に立つ、大きな桜の木。この桜は子供を攫う。咲がまだ子供の頃、目の前で親友が桜の花びらに沈み、消えた。風が薙ぎ、桜色のさざなみが立つ時、咲は悪寒とともに明確な危険を感じる。-桜の花びらは危険だ。そして、親友のことを想い続け、魔女と出会った彼女は、密かに願う。これは、『Missing』シリーズの夜色の外套を身に纏った魔人・神野陰之と、魔女・十叶詠子が紡ぐ物語。そして二人の出会いとはー。甲田学人が放つ渾身の幻想奇譚短編連作集、メディアワークス文庫『-怪ー』と連動し、待望の文庫化。
始まりは『生まれ変わりの子供』の話を真喜多莉緒が母親に話したことだった。異形化した母親と荒んでいく家族関係、そして閉ざされた真喜多邸。雪乃たちを助けにきたはずの蒼衣も隔離され、惨劇は予想以上に拡がっていく。抗える者が減っていく中、雪乃の身体に異変が──。
夏休みが始まり、雪乃とできるだけ長く一緒にいようと目論む蒼衣。だが、泡禍解決に赴いた雪乃と颯姫が戻ってこない。雪乃たちは、死なない〈異端〉を相手に真喜多家に閉じ込められているらしい。邸は異常現象により完全に外界と隔絶されていた。雪乃のためにも単身で邸内へと救出に向かう蒼衣だったが──。
人魚姫の<泡禍>事件から二ヶ月。一人残された海部野千恵を見舞いに、蒼衣は雪乃と離れ、再び海辺の町を訪れる。そこで起きていたのは自殺した琴里に絡む惨劇。琴里の死を悼み臣が持ち帰った白いユリは、ただ静かに風に揺れていた──。
時槻雪乃のクラスメイトの古我翔花は、継母との確執により、いつも雪乃の家で泣いていた。死んだ母親の居場所を、形見の指輪を守りたいが、翔花は悔しさと悲しみに明け暮れて泣いていた。そんな時、ゴシックロリータに彩られた人形的な美しさを持つ風乃に出会い──。
自分を敵視する騎士の攻撃により、意識不明の重体に陥った雪乃。彼女の重荷をなくすため、蒼衣は単身、未だに手がかりの見えぬ<泡禍>の謎へと立ち向かう。そして、失踪事件を発端とした悪夢の結末に待っているものとは──!?
田上颯姫の妹が住む街で起きた女子中学生の失踪事件。<泡禍>解決要請を受けた雪乃と蒼衣の二人を待ち受けていたのは、敵意剥き出しの非公認騎士の少年だった。彼は、失踪した少女と共にいた愛の幼馴染みでもあり──。
神狩屋の婚約者の七回忌前夜、人魚姫の物語をなぞる惨劇は、蒼衣たちが訪れた海辺の町全体に広がっていく。そして、死の連鎖を誘う人魚姫の真相が明かされる時──。鬼才が贈る悪夢の幻想新奇譚、第四幕!
泡禍解決の要請を受け、蒼衣たちは海辺の町を訪れた。到着とともに感じたのは過去に例を見ないほど町中に漏れ出す泡禍の匂い。さらに神狩屋の婚約者の七回忌という異様な事実。そして、悪夢は静かに浮かび上がる──。
市立第一高校の一年生で時槻雪乃のクラスメイトの媛沢遥火は、停まっている自動車が怖かった。いつもと同じように急いで通学路途中の駐車場を通り過ぎようとすると、背後で小さな重い音が聞こえる。そして、振り返った遥火の眼に映ったのは、べったりと車の窓に浮かぶ、二つの赤ん坊の白い手形で──。
人間の恐怖や狂気と混ざり合った悪夢の泡。それは時に負の『元型』の塊である『童話』の形をとり始め、新たな物語を紡ぎ出す。そして、悪夢の中で出会った蒼衣と雪乃の二人が辿る物語とは──。鬼才が贈る幻想奇譚、登場!