著者 : 丹地陽子
仕事に疲れたOL・舞原留里は、吉祥寺の公園で一匹の猫となった。突然のことに混乱するも、仕事をしなくていい!と喜ぶ留里。しかし、猫では家にも帰れない。路頭に迷っていると、偶然、高校の同級生・岸田頼朝に遭遇する。人間嫌いとして知られていた岸田が苦手な留里だったが、そういえば彼には“猫にだけ優しい”一面があったことを思い出す。寝床確保のため彼の家に転がり込むと、高校時代の不愛想さとは異なる、甘い笑顔を向けられて…!?猫になったOL×偏屈な元同級生の、ペット生活ラブストーリー。
おじいちゃんの石窯の向こうはブーランジェリー松尾のオーブンの中だった。鬼の操る暗闇の獣から逃れ、サトコは母、そしてマーロウと再会する。皆の安否が気になって仕方ないサトコを母はそっとたしなめる。だからといって、このままになんかできやしない。サトコが向かった先は竜巻山。そこにいたのは石窯ではぐれたコズサ姫と、大魔法使いハーロウだった。マーロウの実兄であり、姫を子どもに変えた“悪の魔法使い”だ。見守るサトコの前で『あの日あの夜』の出来事が語られる。ハーロウが姫に魔法をかけたその理由、それを解くための鍵。敵か味方か判然としない魔法使いに、コズサ姫は要求をつきつけるのだがー。
ファタルに到着したサトコたち。先代様の「狩りの城」での、新しい生活が始まった。厨房にでんと鎮座するのは、おじいちゃんの立派な石窯だ。生地を手で捏ね、薪を燃やして、サトコとコジマは石窯でのパン作りに挑戦する。一方、近衛士たちは旅で負った傷がまだ癒えない。とくにアルゴは重傷で昏睡洗態、コズサ姫は一睡もせずにつきっきり。様子を見に行ったサトコは、そこで姫の本音を聞いてしまう。「エードの姫に生まれたことが一番の不始末じゃ!」。やがて回復したアルゴが目覚めるも、つきそった姫を差し置いて開口一番コジマを呼ぶ始末。腹を立てたコズサ姫は魔法で姿を隠してしまうのだがー。
「私たちはね…異世界に、トリップしたんだよ」。実家のパン屋ごと異世界にトリップしたサトコ、18歳。「大きな地震のたびに先祖代々トリップしてる」と母に聞かされ、大混乱!戸惑うサトコをよそに、15年ぶりの営業にお店は満員御礼の大賑わいだった。ある日、配達先のお城でサトコは一人の美しい姫君・コズサ姫と出会う。“王の中の王”への輿入れをひかえたコズサ姫は、悪い魔法で子どもの姿に変えられてしまっていた。天下泰平のためのこの縁組、実現させないわけにいかない。相手は悪の大魔法使い、このままでは姫の身が危ないと遠方に避難することになるがー。「一緒に来てほしいのじゃサトコどの!旅先でもそなたの焼いたパンが食べたい!」
『急募、リノベーション料理の得意な方』-境川小春はとある寮を訪れていた。不思議な仕事内容だが、失業中の身、贅沢は言えない。それに料理であれば学生時代ずっとお弁当を作っていたので多少腕に覚えもあった。にこやかな料理長・リノさんに迎え入れられたキッチンには、すでに鮭フライと千切りキャベツ、筑前炊き、ぬか漬けなどがズラリ。そこで小春は秘密に包まれた料理に取りかかるが…!?小春の腕をふるった夜食が寮のみんなを笑顔にするー。心もお腹もホッとあったまる物語。書き下ろし。