著者 : 倉橋燿子
暢子が智己にスキー場で告白されてからの幸せな日々。今年のクリスマスはふたりっきりでスキー場でむかえるはずだったのに、智己は事故で死んでしまった…。なかなか悲しみから立ち直れない暢子のもとに、ある日、ヘンな電話が…。
わたし、村上亜矢香。20歳。わたしは今、新幹線の中。目的地は神戸。わたしは、その地に自分の恋の結末を見届けるために向かうのだ。やっとのことで勇気を奮い起こし、重い腰をあげて…。わたしが想い続けてきた先生、青木純一さんに会いにいく。
はじめまして…。あたしは、村上沙也香といいます。どうか、よろしくお願いします。あたし、何事もいつもスルリと通り抜けて、涼しい顔でいい子ぶってる自分がキライ。世界じゅうでいちばんキライ。あたしは、生まれ変わりたいの。だから、これから書こうとしていることは、そんなあたしの飛翔への物語なのです。どうか、応援してくださいね。
あたし、村上明日香。高校2年生。パパの転勤で、沙也香と絵里香が松江に行って、あたしと亜矢香姉だけになってしまった我が家に、由紀さんがやってきてから、少しは活気がもどってきたみたいなんだ。学校では、このごろ、進路についての話が、もっぱらみんなの口をついて出るの。2学期も半分以上すぎて、そろそろ本格的に、進路について考えなければいけない時期だし…。あたしも、正直いって複雑な気分なの。
あたし、村上明日香。高校2年生。ママが、ちょっとそこまでといった明るさで、天国へと旅立ってから、いろいろなことがあった。パパは松江に転勤することになり、三女の沙也香と四女の絵里香が、いっしょに行くことになったの。今日が、その出発の日…。パパたちを見送ってから、あたしは、克巳くんの好意にあまえて、いっはょに、誰もいない家に帰ってきたんだ。家に着いた時、あたしはいったの。「帰っちゃ…、いやだ…」って。
あたし、村上明日香。あたしが、安田センセのところでバイト中に、亜矢香姉ちゃんから、電話が入ったの。「ママが…、ママが…、大変なの!!」病院に着くと、亜矢香姉ちゃんと沙也香と絵里香が、そわそわしながら病室の前に立ち尽くしている。しばらくして、パパも到着した。ママは、「それじゃあ、ちょっといってくるわね」と、買い物にでも出かけるような気軽さでいって、集中治療室へと入っていったの…。
しばらくデス。明日香でーす。あたしは無事、都立城南高校の2年生に進級しました。我が家は今、サイコー浮かれたっているの。何故なら、ママが退院してくることになったから。もう、姉妹たちは、大はしゃぎなの。でも……、あたしは、正直いってどうしても素直には喜べない。もしかしたら、病院側の最後の配慮かもしれないもの。ママの命のことを知っているのは、パパとあたしだけ。二人だけの秘密なんだ…。
改めて、初めまして、デス。えーっと…、末っ子の絵里香です。明日香姉に、ずいぶんいじわるしたことは、本当に反省しています。ごめんなさい!!最近、あたしが、心密かに気にかけてる人がいるの。それは、アキラのこと…。えっ!?アキラって誰のことかって!?それは、ちょっと待ってね。少し、話がさかのぼってしまうけど、これから、じっくり話していくから…。
あたし、村上明日香。高校1年生。あたしの出生の秘密があばかれた、あの夜から、すべてが、思わぬ方向へと動いていく。中でも、末っ子の絵里香のことは、あたしばかりでなく、家族みんなの悩みの種なんだ。この夏休みも、絵里香は、一度家を出ると、何日も帰ってこないし…。あたしたち4人姉妹は、今、それぞれの思いを胸に抱いて、この長い夏休みを過ごしている。
あたし、村上明日香。高校1年生。あたしが、みんなとは血がつながってない殺人犯の娘だったとわかり、一時はバラバラになった姉妹の仲も、あたしの自殺未遂騒動を契機として、少しは落ち着きを取り戻したの。しかし、四女の絵里香の、あたしに対する憎しみはますます激しくなり、家にいることも少なくなってしまった。絵里香の、幼く、必死の抵抗は、あたしの胸を痛ませるんだ…。
あたし、村上明日香。漫画家志望の、明るくボーイッシュな、高校1年生。パパは、仕事が忙しくて家にいないことが多いし、ママは入院中。でも、姉妹4人で、仲よくやっていたの。あの日までは…。そう。あたしが、殺人犯の娘で、みんなと血がつながってないことがわるまでは…。あたしの出生の秘密がわかってからというもの、姉妹の仲はバラバラになるし、あたし、これから、どうしたらいいんだろう…。
あたし、堀江野々香。中学3年生。ママが亡くなって、今は、ママの旧友だった森野さんの家に、お世話になってるの。ここでの暮らしは、あたしに安らぎを与えてくれる。それに、俊也さんもいるし…。でも、パパの帰国の日のことを考えると、心が千々に乱れてしまうのも事実なんだ。だって、どんな事情があったにしても、1度は、あたしとママを捨てた人なんだもの…。
あたし、村上明日香。漫画家志望の、明るくボーイッシュな高校1年生。うちは、美人でしっかり者の亜矢香姉ちゃん、おとなしくてやさしい沙也香、ドライで口が達者な絵里香、そして、二女のあたしという、なんと、今どき珍しい四姉妹なんだ。そして、仕事で忙しいパパ、入院中のママという、ほとんど両親不在の家庭だけど、みんなで力を合わせて、なんとかやっていたの。そう、あの事件が、起こるまでは…。
あたし、堀江野々香。中学3年生。団地でママと二人暮らし。パパは、あたしが生まれる前に亡くなったから、顔もしらない。夏休み前のある日、体育の時間の時、「お母さんが、急に悪くなったらしい。すぐ病院へいきなさい」と、先生にいわれたの…。単なる疲労で入院したと思われたママは、治療のかいもなく、あっけなくこの世を去った。ひとりぽっちになって、あたし、これからどうすればいいのだろう…。
あたしの名前は、桂木あず。大学一年生。大元カオルは、高二の時に出会った一歳年上のカレ。商船大学に通ってるんだけど、バイトにクラブ活動にと忙しく、なかなか会えない。そんなあたしに、大学で友人ができた。広島から上京してきた、一歳年上の田島絵里子。あたしたち、なんとなく似たもの同士なの。ある日、家でのパーティーで、カオルを一目見た絵里子の顔がこわばっていったんだ…。もしかして、二人は知り合いだったの?
あたし、白鳥麻央。18歳。パパとママを飛行機事故で亡くし、北海道の叔母さん夫婦のところに引きとられて、もう4年になります。あたしにとっては、じつに波乱に満ちた年月。でも、それも、今では懐しい思い出なの。一度はあきらめかけた健太郎との仲も、元にもどり、そして、なによりも嬉しいのは、早苗ちゃんの足の手術が成功したことです。今は、秋の乗馬大会に向けて、ポーラスターといっしょに、猛練習中なんだけど…。
あたし、白鳥麻央。パパとママを飛行機事故で亡くしてから、はや4年の月日が流れた。高校生活最後の年を迎え、もうすぐ、仲よしになった友人たちとも、別々の道を歩むことになるのかと思うと、ちょっと複雑な心境なの。健太郎とも、相変わらず気まずいままだし…。その健太郎が、早苗ちゃんの2度目の手術のため、ロンドンへと旅立つ前にいったんだ。「帰ってきたら、俺、変わるよ…」健太郎!あたし、信じていいの…!
あたし、永島菜穂子。今年から、花の女子大生。でも、相変わらず、“彼”はいない。夏休みに入っても、高校時代の親友、ヤマとおマキに、相談があると呼び出されるぐらい。相談とは、夏休みの間、バイトに精を出して、三人でグアム島に行こうということだった。そして、それが、あたしには運のつき始め。というのは、レストランでバイトを始めたあたしは、小口俊さんに会ったの。小口さんは、礼儀正しい二歳年上の大学生なんだ。
あたし、白鳥麻央。飛行機事故でパパとママを亡くしてから、はや3年。春には、いよいよ高校3年生。大学のこと、将来のこと、考えなくてはならないことがいっぱいあるんだけど、あたしの気持ちは宙ぶらりんなの。おまけに、片瀬ゆかりには、あの健太郎といちゃついていることろを見せつけられるし、おかしくなっちゃいそうなんだ。そんなとき、幼なじみの比呂志から、ビッグニュースが届いたの…。