著者 : 妃川螢
フレンチシェフとして活躍した石嵜眞琴が始めた“お弁当代行屋”には、ワケアリの依頼がやってくる。今度のオーダーは事故で母を失って以来、どんなお弁当も食べられなくなってしまった5歳の透のお弁当。眞琴は血のつながらない甥の陽仁とともに、依頼人の思い出からレシピを探り、味付けから盛り付けまで、お母さんのお弁当を再現するのだが…。「お弁当を届けにいくんじゃない。想いを届けにいくの」幼い透が望んだ、本当のこととはー?心を温かく満たしてくれる、3編のお弁当の物語。
東京のオフィス街で静かに営業する蓮心茶房のオススメは、店主がお客に合わせてブレンドするお茶とお粥のセット。会社員の曄子が蓮心茶房を見つけたのは、信頼していた上司が突然退職した時。仕事を引き継いだプレッシャーで眠れないまま夜を明かしたある早朝だった。何も言わなくても店主の蓮には曄子の悩みはお見通しのよう。おそるおそるドアを開けた曄子をにこやかに迎え、お茶をブレンドすると…。1杯のお茶が、すべての疲れた社会人をおいしく温める。癒やしのグルメ・ミステリー。
念願叶って大手事務所で弁護士になったものの、理不尽な指示に反発してあえなくクビになったユカリ。路頭に迷いかけたところを救ってくれたのは、貧乏暇なしを地で行くお人好し弁護士の弱小事務所だった。貧乏所帯の生命線はある資産家の顧問契約のみ。この生命線を維持するためなら何でもやります!相続争いに不倫問題、引きこもり。ユカリは獅子奮迅の働きを…するはずが、猫の代理に犬の弁護?証言者はウサギ??何でもやるけど、でもこれって弁護士の仕事なの!?
3年前の春の宵、刑事の桜川が出会った仔狐と仔猫は、何の因果か人間の兄弟として生まれ変わりを果たした妖狐と猫又だった。動物姿は愛らしく、人型ではアイドル顔負けの容姿を持つあやかし兄弟。男性ながら世話焼きで女子力が高い桜川は、多忙な捜査の合間を縫って、せっせと彼らに得意の料理を振る舞うように。そんなある日、動物病院で殺人事件が発生した。目撃証言もなく、有力な容疑者も浮かばない。捜査に当たる桜川は、入院中の動物から話を聞くことができないかあやかし兄弟に頼み込む。するとー。