著者 : 新八角
環太平洋沖に突如現れ、多くの人命を奪って世界中の海域を支配した謎の巨大生物レヴィヤタンー通称レヴ。通常兵器では到底歯が立たない怪物に対抗するべく、人類が生み出したのは、レヴの死骸からなる機体に子供を乗せて戦わせる人型兵器“ギデオン”だった。地方の民間ギデオン搭乗者として働いていた高校生・善波アシトと、その幼馴染の宮園エリン。ある日、二人のもとに、戦闘指導官として国連軍のエリート・風織ユアが現れる。境遇の違いから、初めは衝突し、すれ違っていた三人も、厳しい任務の中で、やがて確かな信頼関係を築いていく。そして、死と隣り合わせのレヴとの交戦の中で、アシトは覚醒の時を迎えー。海と喪失を巡るロボットジュブナイル。
夏も盛りの終末都市、東京。ある晩、空を覆った巨大なオーロラが電磁災害を引き起こし、街は暴動、紛争、大混乱。そんな時でも食のオアシス《伽藍堂》は明るく元気に営業中! ……と思いきや、自家農園で謎のゲル状生物が大量発生! リコが駆除に奮闘する一方で、ウカはなぜだかほろ酔い気分。二百年前の過去が蘇り、事態は思わぬ方向へ……? オーロラから始まるドタバタ騒ぎも、仲良し二人にかかれば、ご馳走に大変身。食材はスライムに脱法ミルクに潜水艦!隠し味は、大切なあの日の思い出とひとつまみの幻覚剤!? 遙か彼方の記憶たちと巡り逢う、夏の爽やかな逸品を、どうぞ召し上がれ。
荒廃した24世紀の東京は合成食糧や電子ドラッグが巷に溢れ、荒くれ者たちが鎬を削る…それでも、やっぱりお腹は減るんです。日々の戦いに疲れたら、奇蹟の食堂ー“伽藍堂”へ!厨房を受け持つのは「食の博物館」の異名を持ち、天使の微笑みをたたえる少女ウカ。狩人兼給仕を担うのは、無法者に睨みを利かせる、こわもて奔放娘リコ。二人は今日も未知なる食材求めて、てんやわんやの大騒ぎ。「おいしい!」の笑顔のためならば、人を喰らうドラゴンから、食べたら即死の毒キノコ、はたまた棄てられた戦車まで!?なんでもおいしく、そして仲良くいただきます!リコとウカの風味絶佳な日常を皆さんどうぞ召し上がれ。
ーそれは、永久の別れなのか。“天子”の襲来からスラガヤを護り抜いた末、“銀紋”の力を使い果たした二人。肉体は限界を迎え、“貪食の君”は深き眠りに就く。もう一度クロアを抱きしめたいという、淡く切なる願いと共に。独り取り残されたクロアは、朽ち滅びた地下街エルラムで、“銀紋”を持たない謎の集団に囚われていた。一方スラガヤでは、クロアを聖女の再来と謳うリリアン教が街の変革に動き出す。滅び行く世界の歩みは、もはや止める術もない。しかし二人に待ち受ける過酷な運命は、古き二つの記憶を呼び起こす。かつて一人の青年が手にした幸福と悔恨、一人の少女が残した想いと希望。その果てに、三百年の月日を超えた一つの奇蹟が蘇る。異形なる恋物語、その結末は。
幾多の滅びを乗り越えて栄える花の街スラガヤ。そこで人は等しく奴隷として生き、奇蹟の操り手“大獣”に仕えることが定められていた。街にあだなす鋼の虫ー“天子”との戦が続くある冬に、その恋物語は花開く。人間を貪り食うという伝承を持ち、人々に畏怖されながら郊外の廃墟に居を構える美しき大獣、“貪食の君”。全身に刻まれた“銀紋”によって幼い姿のまま成長が止まり、奴隷市場で売れ残った天真爛漫な少女、クロア。偶然と嘘から結ばれた二人の関係は、一つ屋根の下でぎこちなく、しかし確かな情愛をもって育まれていく。愛しき日々は、やがて戦場に奇蹟を起こし…。
女王メルトラと猫の長官ディナンの策略によって引き起こされた争いは、亡命者の運命を飲み込んでいく。偶然にも白三日月の国の要人警護を請け負ったユウファ達。赤燕の国の刺客が彼らを襲い、両国を巡る戦火の火ぶたは突如切って落とされた。積み上がる死体と仲間達の負傷。さらにはイルナが秘血と呼ばれる軍事機密に関わったことで、囚われの身となってしまう。イルナを救うため、戦争を止めるため、メルトラとの因縁に決着をつけるため。満身創痍となりながら手に赤き焔の刃を握り、ユウファは己の宿命と向かい合う。そして赤刀に眠るアルナが目覚める時、二人の切なる想いと共にすべての因果が巡りだすー。
王女と護舞官が失踪したー。そう記された歴史の影で、それでも二人の物語は続いていく。「翼」と呼ばれる古代遺産を探す猫耳娘のイルナに誘われ、ユウファたちはかつて翼人が繁栄を極めたとされる秘境ナサンゴラへ向かうことに。亡命で全てを失い、言血の記憶が呼び起こす終わりなき悪夢に苛まれながらも、ユウファは様々な出会いを通し、己の宿命を見つめ直す。しかし旅の果てに待ち受けていたのは、街全体が湖の底へ沈むという突然の凶報。一行の運命は「親子」を巡る長大な悲劇へと呑み込まれていく。そしてその時、ユウファとアルナ、二人を繋ぐ大いなる因果が静かに胎動を始めていたー。
“私は駄目な王女だからね。自分のために命を使いたいの”耀天祭の終わり、赤燕の国の第一王女が失踪したー。だが、それは嘘だと俺は知っている。太陽を祀る五日間、彼女は王族の在り方に抗い、その想いを尽くしただけ…。突如国を追われた王女アルナリス、刀を振るうしか能のない幼馴染みの護衛ユウファ、猫の血を秘めた放浪娘イルナに人語を解する燕のスゥと軍犬のベオル。森と獣に彩られた「赤燕の国」を、奇妙な顔ぶれで旅することになった一行。予期せぬ策謀と逃走の果て、国を揺るがす真実を目にした時、彼らが胸に宿した祈りとはー。これは歴史の影に消えた、儚き恋の亡命譚。第22回電撃小説大賞“銀賞”受賞作!