著者 : 梅野歩
南風月下旬。夏休みも終わりに近づいていたが、神社で助勤をしていた半妖の南条翔はヒトの世界に帰してもらえないまま、妖の世界に身を置いていた。天之町内では『百鬼夜行』が頻発しており、ヒトや妖が無差別に襲われる事件が起きていた。赤狐の比良利たちは百鬼夜行が発生した大元の原因を作ったのは『妖祓』ではないかと睨んでいたが、妖祓側は夏休み中行方不明になっている『南条翔』が騒動の鍵を握っているのではないかと考えて動き出していた。妖とヒトの関係に亀裂が入る中、ついに妖祓が妖の縄張りを奪う策を講ずる。里山に『あやし威し』の罠を張り、妖の捕縛や調伏を始めたのだが…。
半妖となった高校生の翔は、夏休みの間の働き口を探していた。しかし、小さな田舎町には高校生のアルバイト先などなく、仕事探しは難航する。それを聞きつけた北の神主・比良利は、翔に神社で働かないかと持ち掛けた。あっという間に言いくるめられてしまった翔は、二足立ちの狐の妖たちに混じって、『出仕前』という神職の手伝いをすることになった。人語を理解できる化け狐の茶丸に面倒をみられることになり、自由で気ままな狐たちに翻弄されながら、慌ただしくも楽しい日々を送る。一方、『夏越の大祓』で翔が南の神主候補であることが知られ、妖たちは新たな神主候補を指導する『指南番』になって甘い汁を吸おうと、水面下で動き始める。翔に対抗心を抱いている貂の千早は、『指南番』になるために翔に直接勝負を仕掛けようと画策するのだがー。
半妖になった高校生の南条翔は、聴覚や嗅覚が過敏になり、さまざまな騒音や臭いで体調を崩し、夜は不眠に悩まされることになる。幼馴染の和泉朔夜と楢崎飛鳥はそんな翔を心配してくれるのだが、二人は妖を調伏する「妖祓」であった。翔は自分が化け狐だとバレないようにはぐらかすのだが、誤魔化し続けるのは至難の業。妖怪の知り合いである猫又のおばばに相談していると、ちょうど家を訪ねてきた「北の神主」の比良利に『夏越の大祓』の神事を手伝ってもらいたいと言われる。狐の五感を抑える相談に乗ってもらう代わりに、比良利を手伝うことになるのだがー。
十歳で両親を亡くして以来、幼馴染達に支えられてきた南条翔は、この春から高校生になった。ある日、頻繁に約束を破る幼馴染達を翔は怪しみ、後をつける。すると山中のあばら家で見たこともない、おぞましい化け物を退治する、幼馴染達を目の当たりにした。彼らのことは家族同然と思っていたが、翔の知らない姿がそこにはあった。彼らの秘密を知った同じ日。翔は、この世のものとは思えない、美しい銀色の狐と出逢う。あばら家に侵入してきた迷い狐は、くくり罠に捕まり、怪我を負っていた。それを救った翔は狐から懐かれ、その夜を一緒に過ごすこととなったのだがー。