著者 : 樺山三英
ハムレット・シンドロームハムレット・シンドローム
雨雲が低く垂れ込める昼下がり、ぼくはハムレットの城にやってきた。演劇中の事故以来、自分をハムレットだと言い続ける男の住処に。彼が正気かたしかめるよう、依頼を受けて。『ハムレット』の宮殿を再現したようなその奇妙な場所で、ぼくはローゼンクランツを演じる。ハムレットの学友にして、目付け役。けれどハムレットは死んだ。短刀で背中を一突きにされ、明け方の居間にうずくまり冷たくなっていた。殺したのは…ぼく?ぼくまでがおかしくなったのか?-。
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