著者 : 武藤健太
エルフの里を出てから半年後。山麓都市ツァイオンでアスラとミレディ、神級精霊のコーラスは魔大陸へ旅立つための資金を、エルフの里でヴィカとジュリアは旅に必要な情報を、それぞれ集めていた。五人の魔大陸への旅の計画もいよいよ大詰めというとき。時を同じくしてエアスリル王国の姫君であるネブリーナ=エアスリルは、アスラたちとは別に魔大陸へ騎士隊を進軍させる段取りをつけるため、ツァイオンを訪れていた。ネブリーナの目的は、騎士隊の進軍に伴い、アスラとミレディに同行の依頼をすることだったが、友人としてアスラたちとの再会も心待ちにしていた。しかし、ネブリーナと再会したアスラは、驚いたのだったー。
カヴェンディッシュの屋敷で解放軍の残党を倒したアスラとミレディ。しかし、アスラの病状は改善せず、二人は治療法を調べるために水都メーザを目指した。無事にメーザにアスラを連れて来たミレディは、ミカルドからレイヴンの残した薬と遺言書を受け取る。遺言書には『エルフの里』に行くよう記されていた。ミレディは山麓都市ツァイオンに立ち寄り、住民の力も借りるなどして、ロック山脈にあるエルフの里に辿り着く。エルフの里の族長ガルダの話によると、山頂にいる精霊に会えば、アスラの病を治してもらえると聞き、山頂に向かうミレディだったが、そこにいたのは、水属性の神級精霊コーラスだった。
ついに解放軍は壊滅した。その立役者である神級精霊ロップイヤーの正体はアスラ=トワイライトだった。一時的に眠っていたアスラが目を覚ますと、ミレディが本当にアスラ本人なのか確認する。次にネブリーナ、次に騎士隊、と疑いは晴れ、アスラの帰還と解放軍の壊滅を王城で祝うこととなった。しかしアスラの生存は王国に混乱をもたらす可能性があり、良からぬことを企む輩の耳に入るかもしれないため、アスラの存在は王族と騎士隊で秘匿することとなった。一方で、解放軍のトップがミレディの父親、ゼフツだったことが知られてしまう。そのことが原因で、ミレディは聖女の役職を辞退することとなるのだがー。
解放軍による二度目の王都への侵攻。しかし、それは王都の騎士隊やアスラたちの必死の奮闘で阻まれた。アスラはその命をもって、王都を守り抜いたと都民に語られ、その事件はいつしか第二のリベリアス・ナイト、「第二夜」と呼ばれるようになっていた。「第二夜」を契機にして、世界は変わり始めた。新大陸の発見、最も強大な力を持つと言われる精霊、「神級精霊」の発見、銃の開発ー各国が神級精霊に協力を求め国力増強を図る中、エアスリル王国にだけは神級精霊が現れずにいた。しかしー第二夜から一年後。王都の近郊に、とある精霊が生まれた。精霊は人懐っこく、ベルモンド領に住む農夫の家で世話になる。しかし、領主のベルモンド伯爵に農夫の孫娘が攫われ、それに精霊は憤り、力を発揮した。伯爵の私兵をあっと言う間に蹴散らし、城を瞬く間に制圧するに至ったのだ。その一年後、事件は王都の王族の耳に伝わった。精霊は「神級」とされ、国力増強に手を貸すようにと、騎士隊に説得されるが断り続けた。しかしそんな時、精霊は偶然にもミレディ=フォンタリウスと出会い、物語は大きく動き始めることとなる。
学園祭を無事に終えたアスラは、久しぶりに白いウサギの夢を見る。「このままだとあなたー死んでしまうわ」不吉な忠告だけ残して消えたウサギに戸惑いつつも、つかの間の平和な時間を過ごしていると、王都で開催される精霊祭の話を耳にする。精霊祭では怪盗ノームミストの犯行を警戒して警備することになり、アスラたちは警備隊員としてパトロールすることになる。さらに今年は、まだレオナルドたちと暮らしていた頃に参加した『魔剣武祭』も開催されるらしく、エアスリル魔法学園の生徒としてそれにも参加することになった。面倒くさがるアスラだったが、ゼミールから今年は『ウサギ』が参加するという話を聞かされー。
外部学習で解放軍の襲撃を受けてから数日。アスラたちを襲った精霊アルタイルは、学園長ゼミールのもとで保護されていた。任務に失敗した以上、今解放軍のもとに戻っても精霊の力を奪われてしまうだけだと言い、知っている情報を喋るので匿ってほしいと懇願する。さらに、自身の強力な力をアピールして、アスラと精霊契約をしたいとまで言い出す。契約すべきかどうか悩んでいると、今世間を騒がせているという怪盗の話を耳にする。その怪盗は魔法研究所から情報を盗み出し、解放軍に売っているのではないか、という疑惑が持たれている。つい先日予告状が届いたらしく、アスラたちは魔法研究所の警備に駆り出されるのだがー。
エアスリル魔法学園では、クラスの昇降を決めるクラスマッチの開催時期が迫っていた。無属性魔法の不遇な状況を打開したいと思っているロジェにとって、アスラが入学し、クラスマッチに参加できるようになった今は千載一遇のチャンス。しかし、レオナルドの足取りを追うために解放軍の情報を探ることが優先だと、アスラはクラスマッチへの参加を渋っていた。結局ロジェやミレディらも協力してくれることになり、解放軍の情報を図書館でしらみ潰しに探していたアスラだったが、ある日偶然、ロジェが隠していたある事実を知ってしまいー。
王級精霊クシャトリアとの契約を果たし、無事ダンジョンから脱出できたアスラ。探しているレオナルドの情報が集まるかもしれないという言葉を頼りに、アスラはエアスリル魔法学園入学を目指す。入学するには、三国間で行われる魔法学園対抗戦に出場し、トーナメントを勝ち進んで入賞する必要があった。クシャトリアとともに対抗戦の開催地であるエアスリルに向かうアスラ。道中、ダンジョンでの抑圧から解放されて、自由に、楽しそうに過ごすクシャトリア。しかし、彼女の秘められた過去、謎の数々にアスラは一抹の不安を抱いていたのだった。
王都で解放軍と戦ったアスラ。『コロナの秘宝』の道しるべを頼りにダンジョン「クシャトリア」に向かう。そこで黒装束の少女に出会ってしまうのだった。彼女の「強くしてやる」という言葉を頼りに、アスラはダンジョンを進む。すべては強くなってフォンタリウス家を見返すため、そしてレオナルドが解放軍に入った理由を探るため。目指すダンジョンの最下層に、アスラの求める力と秘宝はあるのだろうかー。
ついに開催された精霊祭。目玉の魔剣武祭は、各地から王都に集まった選手たちが魔法や剣の腕を競い合う。アスラはそこで強敵との戦いを重ねるたびに無属性魔法の弱点を思い知らされる。そして、三年前に決別したミレディも出場していた。ミレディとの再会を喜ぶこともなく、アスラは仮面で顔を隠し正体を明かさぬまま戦う。そこで、ミレディが三年間で磨いてきた魔法を見せつけられてしまう。そんな中、精霊祭の裏では反エアスリル王国のテロ組織、解放軍が暗躍していた。とある計画に気付いたアスラは、その企みを阻止しようと立ち上がる。