著者 : 田辺屋敷
街にクリスマスソングが響く季節。ユミたちの問題を解決した俺は、また普通の日常に戻る、そう思っていた。なのになぜ、お前が俺の学校にいる?なぜ俺との記憶を喪っている?いや、それよりもなぜ、ハルカの本性が消失しているんだー?初の事態に俺は、解決の糸口を探す為、驚くほど優しいハルカへの接近を試み、一緒にテスト勉強や、クリスマスパーティーの準備をしたりと、暖かさと違和感を覚える毎日を過ごしていたが、クリスマス当日、今のハルカからありえない筈の言葉を投げかけられー「篠山くんが『篠山マサキ』だったんだね」こいつは…とびきり面倒な現象に巻き込まれたらしいな。
木々が紅く染まりゆく季節。俺、篠山マサキは風間ハルカと真の出会いを果たした。平穏な時間を取り戻したと思ったのも束の間で、ある日から俺の携帯に奇妙なメールが届き始める。「あの男、私にこんな恥ずかしい格好を…!」「マサキが風呂場のことを忘れますように」身に覚えのない文章が届いた後、確かに俺はハルカにエロい和服を着せて文化祭を盛り上げ、幼馴染みの入浴姿を目撃した。まるで、メールが未来を予知しているかのように…。ハガキの次はメールだってのか?更に、俺の昔の野球仲間で、今のハルカと同じ学校に通っているという少女が現れてー。キミとの時間を紡ぐ青春譚。
二学期初日。空虚な日々を送っていた俺、篠山マサキは混乱した。慣れた様子で教室へ突然現れたのは、俺の記憶にだけ存在しない少女。しかも、優等生と評判のお前ときたら、猫被ってるわ、仮面恋人を演じるハメになるわで、もう散々だった。だけどお前は、俺にお手製の弁当を作ってくれた。一緒に登下校をしてくれた。誰にも言えない妙な関係だけど、そんな毎日を何よりも楽しんでる俺がいた。でも、気づいたんだ。出会うはずのないお前との時間は、結局絵空事に過ぎない、と。だから俺はー風間ハルカを消すことにした。第29回ファンタジア大賞“金賞+審査員特別賞”受賞作。