著者 : 範乃秋晴
“本の表情”を創りだすお仕事『装幀家』。次なる仕事は“恩人探し”に“新人探し”--? 会社の合併によりコンビで仕事をすることになった本好きの装幀家・わらべと、売り上げ史上主義で本の内容は気にしない巻島。二人に任せられた次なる仕事には、ふたつの“探し物”が絡んでいた。 幼い日、演奏で自分を救ってくれた名も知れぬ恩人に直接お礼が言いたい盲目のヴァイオリニストからの依頼。 人気小説家の装画を描いてもらう、新人イラストレーターを探す装画コンペの審査員。 『装幀室』で巻き起こるドラマ、全二篇をお届けします。
この本にはどんな表紙が似合うだろう?紙の種類は、帯の有無は、中身の文字組みはどうしよう?こうして試行錯誤を繰り返して、時には編集や作家と熾烈に火花を散らせながらも、その本だけのぴったりなデザイン“本の表情”を生み出すのが『装幀家』の役割だ。それを信条に出版社の装幀室で働く本河わらべは、その男の言葉が信じられなかった。「本の内容には目を通さない主義だ。中身を読もうが読むまいが、売り上げが変わるとでも思っているのか?」
人気テーマパークの夢と現実の差に憤り、スタッフを辞した有栖。皆は言うー仕事は我慢するもの。本当にそうだろうか?彼女の疑問に答えてくれたのは、とある寂れたテーマパークだった。美しい王子様の青年に、カボチャ頭の少年、しゃべる猫。変わったキャストだと思いきや、本物のおばけ?そう、そこはおばけたちが始めたテーマパークだったのだ。人間のことは知らない。でも、人を喜ばせたいという彼らに心打たれる有栖。かくして彼女の再建計画が始まるのだが?
やる気だけは人一倍だが、いつも空回りしてしまう少女、一花。最近やっと、仕込みから舞妓になれたばかり。そんなどんくさい一花を、ひいきにする青年がいる。石川総司は祇園の大旦那と呼ばれる花街の顔役。芸舞妓の憧れの総司が、なぜ一花に目をかけるのか。これぞ祇園の七不思議。最近、京のちまたが騒がしい。怪盗夜行ー権力者の不正をただす義賊だという。実は夜行と面識がある一花。そのせいか、一花の行くところ面倒事あり。今日も大旦那と新米舞妓が事件に挑む!?
福井の田舎から祇園へ出てきた一花。どこかどんくさい少女で、やっと仕込みから舞妓になれたばかり。お座敷は失敗の連続。落ち込む一花が夜道で出くわしたのが、なんと怪盗だった。人の好い一花は、追われている怪盗を逃がす手助けをする。その日から、一花の運勢は上向いていく。なぜか一花をひいきにする青年現れたのだ。石川総司は若くして祇園の大旦那と呼ばれる実業家。だが時を同じくして、一花は驚くような事件に巻き込まれていくのだった。
宝石箱の奥にそっとしまいこまれたような美しい想い。衣麻お嬢様のかの少年への思い出は、その心を永遠に縛り付けるものでした。そして今、信じられぬことが起こります。突如現れた思い出の君との再会。それによりお嬢様の心は乱れます。待ちに待った運命の相手なのに、と。その傍らには、手の焼ける見習い執事がいました。運命を信じるのか、今ある現実に一歩を踏み出すのか。どうやら、執事とお嬢様の恋の狂想曲にも終止符が打たれる時がきたようです。
貴船の七夕飾りに、祇園の山鉾ー夏の京都を彩る風物詩にも劣らずあでやかなのは、かの貴族邸宅における執事たちの恋模様です。その中でも派手に華々しい恋が、太陽の伯爵こと海宮晴のそれです。ですが、今回ばかりは勝手が違うよう。彼がこれほど手を焼き、逆に振り回されることなど前代未聞。そんなお嬢様がおいでになりました。新米執事の拳正とお嬢様の衣麻も興味津々のようでして。二人でこっそり様子を見ることもあるとか。果たして、夏のアバンチュールの結末は?
糺の森や鞍馬山、美しき緑は数あれど京都で一番はかの貴族邸宅の庭園です。それに勝ると噂されるのが四人の華麗なる執事。最近、その四人に弟子入りした新米執事がいるそうです。恋の手練手管を学ぶため、四人とお嬢様のアバンチュールを間近に体験しているとか。彼は彼で最近気になるお嬢様がいるようで。うまくいっているのかはわかりませんが、屋敷は大変賑やかなようです。
京の風情あふれる鴨川ぞいをそぞろ歩き。するとその貴族邸宅が見えてくるでしょう。あなたは優雅な四人の執事たちに迎え入れられるはずです。優しさにじむ笑みの遠矢、鋭利で奔放な晴、穏やかで優美な瑪瑙、静謐にして清冽な真。彼らはあなたとともに笑い、そして悲しんでくれます。ですが彼らにはお気を付けください。抑圧されたあなたを解き放ち、京の町へと誘うからです。まるで恋人のように。え?何に気を付けるのかですって?それは彼らが隠している大きな秘密に、です。