著者 : 綾里けいし
「二人が殺されたからと言って、ボクに困ることは何もない」繭墨あざかは柔らかく、だが断言する。彼女の言葉は理解できるが、怒りは募る。ヒルガオを失った嵯峨雄介は、唐繰舞姫と繭墨あさとを殺すと言い、失踪した。この復讐を止めなければ、今度こそ彼の心は崩壊するだろう。焦りと後悔に苛まれる僕に、繭墨が告げたのは、あさとが座敷牢から抜け出したという最悪な事態の訪れだったー残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第8弾。
「どうせ、退屈だ。暇潰しにはなるだろうさ」そう言い繭墨あざかは依頼を受けた。弟の死の真相を知りたいと依頼人は語った。さらには弟の恋人が、彼の髑髏をもって逃げたという。同じ日、僕は事務所内に隠れていた少女を発見する。みすぼらしい格好で繭墨のチョコレートを食い散らかした幼い少女は、僕に無邪気な笑顔をむけてきた。その腕に、乾いた髑髏を抱きしめながらー残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第7弾。
「なぜ眼球を抉るんだろうね?」平穏な日々を嘲笑うかのように繭墨あざかは問いかける。近隣を騒がす“目潰し魔”。そいつに眼球を狙われていると、チョコレートを囓りながら優美に語る。まるで危機感のない繭墨を急かし、事務所から避難させようとした矢先、傘を掲げたヤツが現われた。その紅く濡れた傘が僕の頬を掠めた瞬間、鋭い痛みが眼孔を貫きー僕の視界は血に染まり消失した。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第6弾。
「忌ま忌ましい」燃えさかる炎を前に繭墨あざかは囁いた。麗泉女学園生徒の自殺に端を発した、奇怪な紅い花にまつわる一連の事件。その裏に見えるのは、異界へ置いてきたはずの繭墨あさとの影だった。そして学園で出会った、猫の仮面に黒いマントを纒った少女、神宮ゆうり。少女は芝居じみた仕草と、あさととよく似た歪んだ笑みで僕たちに告げる。「-猫は狐の使者だ」と…。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー、第5弾。
繭墨あざかの元、腹に鬼を孕み、苦悶の日々を過ごす小田桐勤。彼の前に現われた、“天国”への誘いとはー『僕が「繭さん」と呼ぶ理由』。立花梓は知りたかった。通り魔から助けてくれた嵯峨雄介のことを。彼がいる、違う世界のことをー『私が先輩に恋した非日常』。繭墨あさと、14歳。“繭墨あざか”となる役目を降ろされた彼は、己を失ったまま生きていたー『狐の生まれた日』。「B.A.D.」が詰まった非日常的チョコレートデイズ・セレクション第1弾。
「それじゃあ、行こうかー小田桐君」いつものように紅い唐傘の陰で繭墨あざかは囁いた。白雪があさとに捕まった。無力な僕ができることは少なく、結局はこの異能の少女に助けを求めるしか術がない。だが、あさとへの手がかりを掴み、事務所に戻った僕が目にしたのは、引き千切られた繭墨あざかの姿だった。無惨な光景を前に、僕はようやく決意する。狐を殺そう、とー。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー。因縁と対峙する第4巻。
「まぁ、どちらにしろ、退屈な話だけれどね。ボク好みの要素なんて欠片もないよ」欠伸をしながら黒いゴシックロリータを纏った少女・繭墨あざかは言った。“動く落書き”の犯人を捕まえる。いつも通りの馬鹿げた事件は、僕と繭墨を異能の一族・水無瀬家の誇りと絶望と裏切りの渦中に巻き込んでいく。自らの矜持のため、人の命を踏みにじる彼らに僕は怒りを覚えるがー。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー、大反響の第2弾。