著者 : 貴嶋啓
女皇陛下の居城・迎仙宮に仕える詠月は、筋金入りの壺オタク。養い親の道士から教わった「壺中術」という不思議な方術で、気に入った壺の水面に見たい風景を映し、こっそり「のぞき」をするのが趣味だ。ところがある日、詠月は水に映る景色の中へと落ちてしまう。そこにいたのは臨〓(し)郡王・李隆基。老いた女皇の孫で、れっきとした皇族だった。ひょんなことから隆基と行動を共にする羽目に陥った詠月は…?
お仕えするお嬢様・黎禾の「冥婚」が決まった。花嫁道中に同行した橙莉 は、不幸な結婚から黎禾を救うため、身代わりになることを決意するが……。 小間使いの橙莉は、主の黎禾がこの世の誰より大切だ。ところが黎禾は弟の作った借金返済のため、「冥 婚」--死者との結婚を決めてしまった。相手は悪名高い藩王・成州王の息子で、名を玄磊という。最悪の 場合は一緒に埋葬、そうでなくとも二度と生きた相手との結婚が叶わなくなってしまう、そんな不幸な婚姻 を阻止すべく、橙莉は黎禾を欺いて自ら身代わりの花嫁となった。が、この玄磊、実は生きていて……!?
しっかり者の汪黎禾は商家の娘。弟が作った二千両の借金を返すため、悪名高い藩王・成州王の息子のもとへ嫁ぐことになった。が、花婿はすでに故人。この縁組はいわゆる死者との結婚ーー「冥婚」だった。覚悟の上で輿入れを決めた黎禾だったが、花嫁道中で意に反して小間使いの橙莉と入れ替わったり、野盗に襲われた先で皇太子・隆翔に助けられたりするうち、永く行方不明だった帝国の姫君と間違われてしまい!?
横暴な義父に虐げられながらも母のために窮屈な生活に耐えてきたラティファは、国王の甥に嫁ぐよう命じられる。夢見た自由への道を閉ざされた彼女は、豪奢な衣裳を身にまとい、贅を尽くした献上品と共に望まぬ婚礼に向かう。だが、花嫁行列は突如襲撃を受け、彼女の前に鷹を操る謎の男が立ちはだかる。どこか気高さを感じさせる鋭い眼差しの男、アーディドは、戸惑うラティファを強引に掠っていくー!
元宮廷医師の娘として育ったハディージェは、皇位継承に敗れて命を失った皇兄の血を引くという禁忌の出自。公になれば幽閉か死罪になる運命なのだ。親同士が決めた婚約者である法官アスラーンに惹かれながらも、彼を自分の運命に巻き込んではいけないと頑なに心を閉ざすハディージェ。一方のアスラーンは、かつての過ちを償おうと懸命に気持ちを伝えるが…。互いを思うあまりに、もつれ合う二人の関係は!?
裕福な貿易商の家に育ったメラルは、父が横領罪で投獄されてからは法官の侍女として働いていた。突然、主から高貴な方の屋敷に移るよう命じられたメラル。けれど屋敷にいたルトフィーという男は、容姿こそ秀麗だが簡素な身なりの変わり者。部屋のあちこちに本が山積みで掃除もろくにされていない有り様だ。それでも健気に働くメラルに、ルトフィーは次第に好意を抱くように。すれ違いながらも距離を縮めていく二人は!?
かつて大国として栄華を極めたラスカリス帝国の皇女イレーネは、先帝と踊り子との間に生まれ、蔑ろにされて育った。新興国ファルーク王国の侵攻から免れるために、人質として嫁ぐことを皇帝から命じられるが、逃亡を図ったために従弟を皇帝に殺されてしまう。故国への憎しみを抱えてファルーク国王ジャファルのもとへ送られたイレーネはその夜、国王ジャファルに斬りかかるのだが……! かつて大国として栄華を極めたラスカリス帝国の皇女イレーネは、先帝と踊り子との間に生まれた望まれぬ子として、蔑ろにされて育った。新興国家ファルーク王国の侵攻から免れるために、和睦の証として人質として嫁ぐことを皇帝から命じられるイレーネ。だが逃亡を図ったために従弟を皇帝に殺されてしまう。故国への憎しみを抱えてファルーク王国に送られたイレーネの前に現れた王ジャファルは、漆黒の髪と琥珀の瞳を持つ美貌の主。その夜イレーネはジャファルに斬りかかり……! 一方、イレーネの真意がわからないジャファルは彼女に興味を抱くようになり、ふたりは次第に距離を縮めていく。 流離の花嫁 あとがき
女性であるため王位継承者になれない王女レティシア。謎めいた美貌の首席国務卿セルジュと取り引きし、王位に就けるよう尽力してもらう代わりに、即位後は彼の政策に協力すると密約を交わす。その一手として、国内最大の領地を持つ侯爵家との政略結婚を進めるが、婚約者となった長男次男が相次いで姿を消し…。そこに突如現れたのは三男アルベール。いきなりキスを迫られ、セルジュへの想いを自覚したレティシアは!?
ベネディック共和国の名門貴族だったルイーザは幼い頃に父を処刑され、国を追われた。母も亡くなり、父の死の真相を知るため母国に戻るが、形見のメダルについて探るうちに殺人を目撃し、仮面の男たちに追われるはめに。逃げ込んだ賭博場で大商人カルロに助けられ、なかば強引に屋敷に連れ込まれるが、カルロの自由な生き方に触れ、互いに惹かれ合っていく。そして思いもよらぬメダルの真実が明らかになるー。
貧しい家に生まれたエミーネは、エルトゥールル帝国の皇太后に仕える女官。宴の席で、侍女たちの憧れの的であるラレンデ君侯の後継ぎバヤジットに突然声をかけられ、間者にならないかと誘われる。一生後宮から出られないと絶望していた彼女は、主への裏切りと知りつつ承諾してしまう。バヤジットによって初めて外の世界を知っていくエミーネ。禁忌を犯す危険をともにするなかで、互いへの想いが膨らんでいくー。
エルトゥールル帝国の第二皇女イェシルは、屋敷に潜んでいた黒髪の男と遭遇し、言い争いの末に唇を奪われる。驚きと怒りで男を追いかけたイェシルが辿り着いたのは海賊船。男ーハイレッティンは海賊の頭領だった。イェシルは捕らえられてしまうが、男の不器用なやさしさに気づき、初めて恋心を知る。皇女であるイェシルに思いを寄せられ戸惑うハイレッティンだったが、純真な彼女にしだいに惹かれていくー。
エルトゥールル帝国の田舎町に暮らす少女ハディージェは医師見習い。亡き父の施療院を叔父に奪われそうになり、助けを求めて帝都の名門カラハリル家を訪れるが、そこで若き法官アスラーンに出会う。互いに第一印象は最悪だったが、親同士が二人の結婚の契約を交わしていたことが発覚!婚約解消を条件に法官としての務めを果たすべく故郷に向かった二人は、思わぬ事件に巻き込まれながらも心を通わせていく。切なく甘いアラビアン・ラブ。