著者 : kaya8
完全なる存在となったユヴィオールは城の玉座にあって、瑩国をその手に掴むべく動き始めた。幽閉されたアルトが恐怖に耐えながら助けを待つ中、すべてを喪ったフォグはキリエの介抱によって目覚める。反抗の術はない。それでもアルトだけは取り戻さなければならない。絶望的な状況にあって決死の覚悟で城へ突入しようとしたふたりに、ひと筋のか細い糸が垂らされる。カルブルックに誘われ、向かうのはレキュリィの屋敷。『ローレンの雛』たちはそこで己の運命を見、そしてー。毒気に彩られた薄闇の幻想物語、ここに終幕。
正統丁字教の総本山である法王庁の特務組織“奇跡認定局”が、ついに瑩国転覆のため動きだした。実行部隊“使徒”と人造人間キリエによって、議員や貴族たちを標的とした無差別暗殺計画が進められていく。瑩国は抗う術なく、徐々に国力を削られ始めた。更にはこの混乱に乗じ、ユヴィオールたちもまた違った思惑のもとに水面下で暗躍する。イオ=テリーヌの前に姿を現したアイリス=キャリエルの笑みは、同郷の輩に再会した喜びか、或いは“魔剣の母”としての狂気なのか。そして混乱していく状況の中、フォグとアルトはー。薄闇の幻想物語、緊迫の第四幕。
瑩国公式第一王女マーガレットの婚約者である悳国王子ディードが、外交のため来訪することとなった。悳国が製造した『グラフの数珠』とそれによって起きた事件の数々により、二国間は緊張状態にある。その関係改善を目論んでの来訪とはいえ、この機に乗じて何かを企てる輩が出てくることは必然だった。王子の暗殺計画すらもが囁かれる中、瑩国王家は『レキュリィの宴』に協力を仰いだ厳戒態勢で挑む。フォグとアルトは、王子を歓迎するため開催される夜会の警護役として任命されることになったが…。策謀と毒気が渦巻く都市・匍都で繰り広げられる薄闇の幻想物語、第三幕。
塔に囚われた煉獄の姫君ーアルトは、牢獄でかつての友と邂逅する。王宮に囲われた少年騎士ーフォグは、自らの出生と向き合い、まだ見ぬ妹の存在を知る。アルトの友でありフォグの妹でもあるその『彼女』は、鮮血と混乱、狂騒と悪意を引き連れ、再び瑩国へと降り立った。彼女の策略は“煉禁術”で造られた偽りの人間たちを闇へと誘い、未曾有の連続殺人事件を引き起こす。その渦中へ飛び込んでいくことを余儀なくされたアルトとフォグが、戦いの果てに見るものとはー?策謀と毒気が渦巻く都市“匍都”で繰り広げられる薄闇の幻想物語、第二幕。
現世のひとつ下の階層に位置する異世界“煉獄”。そこに満ちる大気は有害であり、一方で人の意志に干渉して森羅万象へと変化する性質を持っている。瑩国第一王女であるアルテミシアーアルトは、その煉獄へ繋がる扉を身の裡に孕む特異体質の持ち主だった。常に毒気を身に纏い近寄る者すべてを殺してしまうが故、普段は呪われた子として城の地下牢に幽閉されている。しかし彼女は時折、外の世界へ出る。従者である少年騎士フォグと共に、王家の密命を受けて。煉獄の毒気を練り超常を操る“煉術師”としてー。策謀と毒気が渦巻く都市“匍都”で繰り広げられる薄闇の幻想物語、開幕。