芸人ディスティネーション(4)
お笑い芸人をやっている理由、それはーー
僕ーー鳴雲俊史は芸歴十年のお笑い芸人だ。
芸人の仕事だけでご飯にありつけている状態が続いていたけど、ついに大舞台に立てることが決まった。
ピン芸人No.1を決める大会「ピン1グランプリ」の決勝戦まで勝ち残ることができたのだ。
だけど、僕の心が歓喜で埋め尽くされることはなかった。妙な縁で同居生活をしている後輩・雫の言葉がどうしても頭から離れないからだ。
ーー「鳴雲さんって何のためにお笑いやっているんですか?」
その何気ない問いかけに答えられなかった自分に不甲斐なさを感じる。どうして答えられないのか自分でもわからない・・・・・・。自分自身が100%納得いく答えを導き出せない限り、僕に栄光が舞い込むはずがないのに。
「お笑い芸人」という職業の本気がここに! テレビなどでも活躍中のお笑いコンビ『天津』の向が綴るリアル芸人物語の第4巻!
関連ラノベ
お笑い芸人のリアルがここに!? 僕……鳴雲俊史は芸人をやっている。芸歴十年の元漫才師。俗に言う、お笑い芸人だ。ずっとコンビで漫才をやっていたのだが、まあいろいろあって解散。今はピン芸人。営業でのMCなどをメインに仕事をして、なんとかこのお笑いの世界で十年飯を食べている。 最近いろいろ言われるんだ。「もう十年やって売れてないんだぜ?」とかね。僕からすれば『たった』十年しかやってないお笑いの収入だけで生活出来ている芸人』だけど、世間からすれば『もう』十年やっているテレビに出 ていない芸人=売れていない芸人なのである。 「三十年やったとてまだまだ前座です」なんて、どこぞの師匠が言っていたのだが、それはやっぱりその師匠の求道者な部分が大きい訳で、実際は 十年もやると、新人の中の古参組になってしまう。そして十年やって自分はまだ売れてないと、ある事実を残酷なまでに見せつけられてしまうのだ。 ああ、僕は芸人として売れないんだ、と。 この世界は僕を十年求めなかったんだ、ということをーー。 よしもと所属のお笑いコンビ『天津』の向が綴る、芸歴10年の売れないお笑い芸人と芸人養成所1年生の美少女が巻き起こす、リアルなお笑い物 語が開演! 2014/05/20 発売
芸人の世界に必要なのものって何だと思う? 僕ーー鳴雲俊史は悩んでいた。 投げかけられた質問には、いったいどう答えるのが正解なのだろうか。 「あのーー」 「なんだい? 何も思いつきませんでしたという敗北宣言を高らかに発してくれるのかい? それならそれでこちらは違う形とはいえ大爆笑するよ。だって君はこんな質問に関してまで逃げ出すということになるわけだからね。桂小五郎は逃げの小五郎なんて言われていたけど、それは喧嘩をする場面じゃないと判断した時逃げるということだよ。君のそれとは全く趣旨が違うって事を判断してて欲しいんだけどね」 この先輩、なんでこんな一瞬で悪口が頭に思い浮かぶんだろう…… 間違いなくこれも才能だ。やはり頭の回転がとんでもなく早い。 これが売れている芸人の思考か。 「もう一度聞くよ。君はこの世界に必要な唯一のものって何だと思う?」 先輩は無邪気な子供のような笑顔を見せた。今日の会話の中でとびきり純粋な。しかし僕にとってはそれは無慈悲で残酷な表情。 「それがわからないなら、芸人を辞めてもらうよ」 売れている芸人と売れていない芸人の違いはなんなのかーー。 テレビなどでも活躍中のお笑いコンビ『天津』の向が綴るリアル芸人物語の第二巻。 2015/03/18 発売
ピン芸人No.1を決める大会に挑む! 僕ーー鳴雲俊史はお笑い芸人をやっている。 人を笑わせることでお金をもらう職業であり、テレビやネットの露出が増えれば大スターになれるお仕事。しかしそれはほんの一握りであり、実際は売れずに食べていけないために芸人を辞める人が後を絶たない。食べていくだけで大変な仕事である。 そして僕はというと、売れてはいないが、食えているのは食えているという層である。なんて中途半端だ! と思うけど、それが十年芸人をやってきた僕が今いる場所だ。 だが、それを変えなければならない。いや変えてみせる。 尊敬する先輩のアドバイス、袂を分かつ形になった元相方、そしてうちに転がり込んでいる芸人の卵、彼らにそう気づかせてもらえた。だから僕はピン芸人でNo.1を目指す! ・・・・と思った矢先、大人気芸人が僕の前に立ちはだかるのであったーー。 テレビなどでも活躍中のお笑いコンビ『天津』の向が綴るリアル芸人物語の第3巻。 2015/08/18 発売