2017年9月5日発売
その日、藤原家に縁ある屋敷に生まれたのは、珠のような姫君。花房と名づけられ、都の陰陽師たちが「傾国の女性」と予言し、抹殺しようとした存在だった。両親は花房を守るために性別を偽り、男として育てることを決心する。一方、誕生したのが甥だと信じて疑わない藤原道長は、見目麗しく賢く成長した花房を溺愛し、我が子のように連れまわすが…。栄華と陰謀が入り乱れる、百花繚乱の平安絵巻!
大巫女の娘として生まれ、精霊に捧げる歌や踊りを叩きこまれてきたルベト。年に一度の地霊祭の夜、最愛の人・ニグレトを神の化身「瑞祥君」として大国・尚に攫われ、ルベトは彼を救うため、東へ旅立った。歌と踊りを活かし、王宮付の芸人となったルベトに、「瑞祥たるお方」の前で哀しき王子の愛を描く「白面郎哀歌」を披露する機会が訪れる。だがその役を狙うのは、ルベト一人ではなかった。WH新人賞受賞作!
セント・ラファエロ時代のユウリの友人、アルフレッド・ロウ。著名な占い師を祖母に持ち、本人もタロットが得意な彼は、祖母が相続した遺産の手続きをする際、ユウリに同行を求めてきた。遺産には「隠れた問題」があり「カップの従者」が必要になるというのだ。シモンに紹介してもらった弁護士と共に南仏に遺された家を訪ねた二人。ユウリはそこで不思議な形の指輪を手にし、パリにあるもう一つの遺産の存在を知る。
越してきた田舎の町で、中学校に馴染めずにいた少女は、ひょんなことからゆめみの駅にある遺失物係にたどり着く。そこは誰かが忘れた「おはなし」が世界中から届けられ、「遺失物語台帳」に収められている不思議な場所だった。係の人から一日一話ずつ物語を読み聞かせてもらいながら、自分が失くしてしまった物語を探すのだがー。痛みを抱える人にそっと寄りそってくれる、切なくもやさしい物語。
「死んでるみたいに生きるんだったら、意味がないと思ったんだ」というクマの子始め、動物たちの姿を通して「生きること」を考えさせる9つの物語。不器用で、けなげで、一生懸命生きている動物たちがそっと寄り添ってくれる、心にひとすじの風を通してくれるような作品集。文庫書き下ろしで「たいそう立派なリス」「聞いてくれますか」の2編を新たに収録。 もくじ たいそう立派なリス 5 べっぴんさん 19 ショートカット 37 アメンボリース 57 朝の花火 77 聞いてくれますか 101 そらの青は 121 光る地平線137 クマのあたりまえ 155
「どちらまで?」「じゃ、風町、まで」その町へ行くのに特別な切符や旅券はいらない。その町へは電車に乗っても行けるし、歩いても行ける。だけどその町は、いったいどこにあるのだろう。「風町」と呼ばれる架空の町でひっそりと紡がれる、ちょっと不思議で心地よい日々。「風町から」「風町まで」の二部構成で三十一の短編を収録。心がほぐれる束の間のファンタジー!
たいくつな雪の日、ひとりのお茶の時間。ねむれない夜にはおはなしをひとつ。「ペチカはぼうぼう猫はまんまる おなべの豆は、ぱちんとはじけた」こんなたのしいことばが聞こえてきたら、ふしぎな物語が始まります。「猫と犬と馬が泉をさがす旅に出た話」「青い羽のある鳥と古い鏡の話」「悪魔とわたりあった若者の話」など五篇を収録。読み終わると少し世界が違って見える、珠玉の短篇集。