制作・出演 : エヴァ・ポブウォツカ
ショパン生誕200年を機に行なわれたさまざまな企画や人気曲ランキングを総合して、30曲を選んだ集大成的なBOX。演奏者はいずれもショパン弾きとして定評のある人たちで、曲も丸ごと収録している。
いわゆる初期ロマン派から、その書法で書かれた20世紀前半までのピアノ曲を、時代順にCD4枚にまとめたBOX。シリアスな曲からサロン音楽、いわゆる“お稽古曲”まで、さまざまな表情を持った作品がずらりと並んでいる。
右手のウタのつながりを機軸に響きを整え、無理のないユレや起伏の中にたっぷりとロマンを湛えた真正実直なるシューマン。売り出し中の若手のような突出した仕掛けはない。なぜこの音楽を演奏するのか、聴いてある納得が残る。後半の小品が実にいい聴きごたえ。
ショパンとグリーグとブラームスという、ほとんど繋がりのない作曲家のバラードを集めたアルバムだ。共通点は、いずれも美しい点か。ポブウォツカはその美しさをこれでもかというほど引き出している。しかし、ショパンはどうしてこんなに美しい曲を書いちゃったのかね。
ポーランドの名ピアニスト、ポブウォッカの弾くブラームスの小品集は、ロマンティックで抒情的で美しい。彼女がブラームスの作品を慈しみながら弾いているのが伝わってくる。ポブウォッカの澄んだ音色と温かな音楽性に魅了される。
久しぶりに録音された全曲集ということで、注目されたアルバム。メンデルスゾーンの歌謡性と、清新なロマンティシズムに満ちていて、各曲ごとの性格分けも明確。豊かな表情をたたえた演奏を聴かせてくれる。
ショパンのノクターンに影響を与えたアイルランドの作曲家フィールドのノクターン全曲集。ショパンほど強く情感に訴える濃密さはないが、淡いロマンに彩られている。その特技をポブウォツカは見事に引き出している。
ショパンの独奏ピアノのための作品集。5枚に主要な7つの様式の作品を、最後の1枚に練習曲やポロネーズ、マズルカからの抜粋などを収録。ダン・タイ・ソンを中心とした演奏家陣も充実している。
グリーグが30年以上にわたって書き続けた抒情小曲集(全10集、全66曲)の全曲盤。ロマンティックな小品やノルウェーの民族的な曲が並ぶ。グリーグの作風の変化にも注目。ポブウォッカのクリスタルで涼しげな演奏は夏の暑い夜に聴くのにぴったりだ。
フジ子・ヘミングが弾くグリーグの協奏曲。ゆったりとしたテンポのなかできめの細かいピアノがブリリアントに奏でられるさまはまるで魔法のようだ。聴く者の心を惹きつける独特の音色で彩られた旋律も美しく、個性的な演奏は何度聴いても興味が尽きない。
“不滅の名曲”などという大それたシロモノではないけれど、リリカルでインティメイトな雰囲気が、“自分だけの名曲”的な安らいだ親しみやすさを感じさせる。グリーグのピアノ曲はその典型。飾り気のないポブウォッカの演奏が、その魅力を素直に伝える。
世界的にも評価の高いジョン・フィールドのノクターン全集では、その深い叙情性を聴かせてくれた彼女。このグリーグでも同様に詩情あふれる繊細な彼女の魅力が堪能できる。透明感がありながら色彩感豊かなタッチは絶品。ピアノ好きには好適のアルバムだ。
それぞれが短いものばかりとはいえ、グリーグが40年近くにわたって書き綴った全10集66曲にも及ぶ「抒情小曲集」の全曲録音企画の第1弾。ポブウォッカの正攻法なアプローチは、単調さにも演出過剰にも陥ることなく、作品に流れる感情の襞を描くことに成功している。