制作・出演 : フジ子・ヘミング
追悼フジコ・ヘミング チャイコフスキーの代表的ピアノ協奏曲の未発表音源と5枚組CDBOXをリリース。 ●チャイコフスキー :ピアノ協奏曲 第一番 先日、惜しくもこの世を去ったフジコ・ヘミングのチャイコフスキーの代表的ピアノ協奏曲の未発表音源をリリース。 1 チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第一番 変ロ短調 Op.23 第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーゾ 2 チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第一番 変ロ短調 Op.23 第2楽章:アンダンティーノ・センブリーチェ 3 チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第一番 変ロ短調 Op.23 第3楽章:アレグロ・コン・フォーコ 4 ラ・カンパネラ(パガニーニによる大練習曲 S.141の3)「奇跡のカンパネラ」より 5 ラ・カンパネラ 「東京オペラシティ」より 6 ラ・カンパネラ 「哀愁のノクターン」より 7 ラ・カンパネラ 「カーネギー・ホール・ライヴ」より 8 ラ・カンパネラ(パガニーニによる大練習曲 S.141の3) ドイツ放送局SWR録音
デビュー盤『奇蹟のカンパネラ』をはじめ、テレビ放映で増幅されたイメージを払拭し、その実力のほどを見せつけたビクター時代の音源を厳選収録したベスト・アルバム。彼女の魅力がここに凝縮されている。
演奏家は作品の器たれ、という考えとは隔たりつつも、演奏のいまひとつの本質たる表現という意味で、どの瞬間も自分色に染め上げる存在の力は見事。このライヴでも正統と個性のはざまで、真摯のかぎりを尽くしている。爽快さには欠けるが、他に換えがたい音楽。
フジ子・ヘミングが73〜2004年に行なった4回のリサイタルのライヴ。73年と98年の「ラ・カンパネラ」を収録するが、前者の方が速くて推進力を有するものの、その音楽的志向や演奏スタイルは同一直線上にあることがわかる。彼女の変遷を辿れる貴重なCD。
クラシック音楽と彼女の生きざまの間にある“何か”を慈しむように紡がれる、音による独白。そんな彼女の特色が、協奏曲という形式によって、いっそう鮮明に浮き彫りにされた。詩人の魂を持つ人が夢見る孤高の世界。これを音楽的と言わずしてどうするのだ。★
確かにテクニック的には問題のあることは認めるし、音楽のフォームにも危ういところはあるけれど、この人の演奏には“魂”があることも否定できない。ショパンへの深い思い入れが、それはときに思い込みでもあるかもしれないが、確かに伝わってくるのだ。
ベスト盤が登場するのは、衰えぬ人気があるという証拠。といっても88年にドイツの放送局が録音した演奏も入っている、という興味深いもの。“へたうま(?)”な魅力を持つ彼女ならではの、伸びやかでロマンティックな演奏には、やはり人を引きつける力があるようだ。
制作・出演
クラウディオ・アバド / ジュゼッペ・ディ・ステファノ / ジョーン・サザーランド / フジ子・ヘミング / ヘルベルト・フォン・カラヤン / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 / モーツァルト / ルチアーノ・パヴァロッティ“魂のピアニスト”フジ子・ヘミングが強く影響を受けた名曲を、自ら選曲したコンピ盤。さらに彼女の描き下ろしによる絵や詩が織り込まれ、フジ子・ヘミングの音楽を知るうえで欠かせない1枚となった。
2004年正月に彼女の自伝的ドラマ(菅野美穂主演)が再放送されて、またまた人気も認知度も上がったことだろう。彼女の演奏はまさに“ヘタウマ”。フォームやスタイルが崩れ音さえこぼしても、聴く者の心をつかむ力がある。その世界はますます深みを増してきたようだ。
99年から2001年まで彼女の定番14曲のベスト・テイクを収録したディスク1と88年6月ドイツSWR放送局の録音による「ラ・カンパネラ」と「愛の夢第三番」の2曲を収録した2枚組。聴き比べも一興。生き様が鍵盤から凄みを帯びて語りかける。★